個別労働関係紛争解決手続代理業務
1.労使関係紛争の変遷
1. 労働三権と労働組合法
当事者の合意により契約が成立または変更されることは、契約の一般原則ですが、労働者と使用者間の労働契約は、契約の優位性の違いから潜在的に不平等が生じます。
そのため、日本国憲法により保障されている労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権)の労働三権を実現するために、昭和20年に「労働組合法」が制定されました。労働組合法は労使の労働条件の交渉の場において、対等の立場に立って交渉できるようにすることを法的に保障しました。
2. 労働争議の予防と解決
労働組合法の制定により労働運動の解放と助成が図られた結果、法制定後は多くの組合が組織され、昭和23、24年は組合員数も全雇用者数の50%超と高い組織率でした。しかし、同時に戦後の経済状況を反映して、多くの労働争議(ストライキ等)が発生しました。
多発した労働争議を調整するため、昭和21年に労働関係調整法が制定され、労働組合法と相まって労使の自主的解決を原則としつつ、労働争議の予防と解決策としての斡旋、調停、仲裁などの法的対策が取られました。
3. 推定組織率(労働組合員数/全雇用者数)の低下傾向
日本の労使関係紛争は、労働組合と使用者とのあいだの集団的な労使関係紛争が主な紛争でした。しかし、高度経済成長の鈍化や経済社会情勢の変化などから労働市場が個別化へと転化し、全雇用者数に占める労働組合員数の割合である推定組織率は、年々低下傾向にあります。
昭和28年から57年の推定組織率は、30%代と高い組織率を維持していましたが、昭和60年頃から平成14年にかけては20%代まで低下しました。平成15年には10%代に突入しましたが、近年は18%~19%に落ち着いています。
4. 集団的労使関係紛争から個別労使関係紛争へ
1980年代以降、集団的労使関係紛争の減少に反して、1990年代は企業の人事労務管理の個別化の進展等を背景に、解雇や労働条件の変更など、個々の労働者と事業主とのあいだの紛争(個別労使関係紛争)が大幅に増加しました。個別の労使関係紛争を解決する手段としては裁判制度がありますが、解決に至るには長期的な期日と多額な費用を要します。
平成13年、こうした実情に即し、迅速かつ適正な解決を図るために「個別労働関係紛争解決促進法」が制定されました。これにより、労働条件その他の労働関係に関する事項についての労使紛争については、裁判に至る前に行政主導による簡易かつ迅速に解決を図ることが可能となっています。
5. 労働関係法規の専門家である社会保険労務士による解決
社会保険労務士は、労働・社会保険関係法規、人事・労務管理、年金相談の専門家として、国家資格を有するものをいいます。これまで紛争解決手続の代理業務は弁護士の専門業務でしたが、平成19年より、個別労働関係に関する労働関係紛争については、社会保険労務士も代理業務ができるようになりました。
社会保険労務士が個別労働関係紛争の代理業務を行うためには、紛争解決のための法律に関して厚生労働省が定める研修を修了し、紛争解決手続代理業務試験に合格しなければなりません。研修を修了し試験に合格した社会保険労務士は、「特定社会保険労務士」となります。
2.個別労働関係紛争の制度の概要
1. 「個別労働関係紛争解決促進法」により創設された行政上の制度
個別労働関係紛争(個々の労働者と事業主との間の紛争)は、労使間の自主的な交渉により、円満に解決するのが理想的です。「個別労働関係紛争解決促進法」にも、当事者は早期にかつ誠意をもって、自主的に解決すべき努力するよう定めています。
厚生労働省では、平成13年に制定された「個別労働関係紛争解決促進法」に基づき、①「総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談」 ②「都道府県労働局長の助言・指導」 ③「紛争調整委員会によるあっせん」が設けられています。
2. 「総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談」の概要
「総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談」の制度として、各都道府県労働局、各労働基準監督署に労働問題に関する相談窓口を設けています。
個別労働関係紛争の中には、単に法律を知らなかったり、誤解により発生したりするものが多くあります。これらの紛争は労働問題に関する情報を入手することや、専門家へ相談することで紛争を未然に防止、または早期に解決することが期待できます。
3.「都道府県労働局長の助言・指導」の概要
「都道府県労働局長の助言・指導」は、民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が紛争当事者に対して問題点を指摘し、さらに解決の方向を示すことにより、当事者による自主的な紛争解決を促進する制度です。
この助言・指導の制度は、法律違反に対する是正のための行政指導とは異なります。そのため、強制ではなく、あくまでも当事者に話合いによる解決を促すものであり、法的強制力を有するものではありません。
4. 「紛争調整委員会によるあっせん」の特徴
「紛争調整委員会によるあっせん」の制度とは、民事上の個別労働紛争について、紛争調整委員会(弁護士、大学教授、社会保険労務士等の労働問題の専門家により組織された3名による委員会)が当事者間の調整を図り、話合いを促進することによって解決を図る(和解する)ことを目的としています。
紛争調整委員会による“あっせん”は、裁判とは異なり、自分の主張に法律的な根拠があるのかを厳密に検討する必要まではないため、手続が迅速かつ簡便です。また、あっせん制度の利用も無料という特徴があります。
5. 「紛争調整委員会によるあっせん」の効力
あっせんが合意に至った場合は和解となりますが、和解の法律上の取扱いは、「民法上の和解」と「裁判上の和解」に分けられます。あっせんの和解は、事実関係が法律的に認められるという確定効が生じ、当事者は、紛争が解決したことを約する契約が締結されたことになります。
紛争調整委員会による“あっせん”は、裁判とは異なり、自分の主張に法律的な根拠があるのかを厳密に検討する必要まではないため、手続が迅速かつ簡便です。また、あっせん制度の利用も無料という特徴があります。
3.個別労働関係紛争の現況
1. 総合労働相談の件数
総合労働相談として各都道府県労働局、各労働基準監督署に労働問題に関する相談窓口が設けられていますが、その総合労働相談の件数は、平成20年度から100万件を超える水準で推移しています(統計を取り出した平成14年の総合労働相談件数は、60万件超)。これは雇用者数が5,500万人ほどいることからすると、100人に2人ほどの割合で労働相談を受けていることになります。
また、労働基準関係法令違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等の“民事上の個別労働紛争”に関する相談件数は、近年、25万件近くに上っています(統計を取り出した平成14年の民事上の個別労働紛争相談件数は、10万件超)。
2. “助言・指導”“あっせん”制度の件数と内容
民事上の個別労働紛争について、総合労働相談によっても紛争の自主的解決に至らなかった事案は、「都道府県労働局長の助言・指導」や「紛争調整委員会によるあっせん」が利用されていることが多くあります。
「都道府県労働局長の助言・指導」は、平成20年に7,500件を超えてからは同水準で推移しています。「紛争調整委員会によるあっせん」は、平成20年に約8,500件をピークに減少傾向にありますが、それでも6,000件~8,000件で推移しています。これら“助言・指導”“あっせん”の内容は、「解雇」に関するものがもっとも多くなっています。
3. “助言・指導”“あっせん”制度利用者の雇用形態
民事上の個別労働紛争についての都道府県労働局長による“助言・指導”や、当事者間の話合いによる解決(和解)を目指す“あっせん”の制度の利用者は、期間の定めがないいわゆる正社員がもっとも多く、全体の半数を占めています(平成22年度)。
しかし、制度利用者としてもっとも多いとされる正社員は減少傾向にありますが、パート・アルバイト、期間契約社員、派遣労働者などの非正規社員は増加傾向にあります。この傾向は、雇用形態の多様化が進んでいることに大きく起因していると思われます。
4.個別労働関係紛争の範囲・解決方法
1. 総合労働相談の対象となる内容
各都道府県労働局、各労働基準監督署の総合労働相談の窓口では、民事上の個別労働紛争のほか、解雇、配置転換・出向、賃金の引下げなどの労働条件や、募集・採用、ハラスメントなどの労働問題に関するあらゆる分野について相談を受付けています。
労働者からの相談に限らず、事業主からの相談も受付けており、他の紛争解決機関の情報提供も行われています。
2. 都道府県労働局長の“助言・指導”の対象となる紛争
都道府県労働局長の“助言・指導”の対象は、労働条件や労働関係に関する事項についての民事上の個別労働紛争になります。
解雇、配置転換・出向、賃金の引下げ、募集・採用などの紛争が対象となり、労働組合の集団的労使関係紛争、裁判で係争中など、他の紛争解決機関で解決が図られている事案は、対象とされていません。
3. 紛争調整委員会による“あっせん”の対象となる紛争
紛争調整委員会による“あっせん”の対象は、“助言・指導”と同様に、労働条件や労働関係に関する事項についての民事上の個別労働紛争になり、労働組合の集団的労使関係紛争、裁判で係争中など、他の紛争解決機関で解決が図られている事案は対象とされていません。
なお、総合労働相談や都道府県労働局長の“助言・指導”の対象となる“募集・採用”に関する紛争は、募集・採用の段階では労使間の契約関係にないため、あっせんの対象とされていません。
5.根拠法に基づく行政(都道府県労働局)等の紛争解決支援
1. 都道府県労働局の組織
都道府県労働局は、厚生労働省の地方支分部局(厚生労働省の事務を分担した地方出先機関の総称)の1つであり、全国の都道府県に設置されています。
都道府県労働局の内部の部署には、職掌の分野により“労働基準部”“職業安定部”や“雇用均等室”などがあります。また、管内には労働基準監督署や公共職業安定所(ハローワーク)が設置されています。
2. 労働基準監督署の労働相談
労働基準監督署は都道府県労働局の管内に設置され、労働基準行政の第一線機関として労働基準法をはじめ、所管する法律に基づいて労働条件の確保・改善の指導、安全衛生の指導、労災保険の給付等を行っています。
労働相談については解雇・賃金不払い等の労働条件のほか、労働時間や安全衛生・健康管理、労災保険等、総合労働相談の窓口として労働問題に関するあらゆる分野について相談を受付けています。
3.雇用均等室の“援助、調停”
都道府県労働局の部署である雇用均等室は、労使間の男女均等取扱い、育児・介護休業やパートタイム労働者等に関する個別の紛争に対して、「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」「パートタイム労働法」を根拠法として紛争解決を図っています。
雇用均等室では「個別労働関係紛争解決促進法」を根拠とする紛争解決制度(総合労働相談、“助言・指導”、“あっせん”)とは別に、都道府県労働局長による“援助(助言・指導・勧告)”の実施や調停会議による“調停”を行っています。調停による合意の効力は、裁判上の和解ではなく民法上の和解契約となります。そのため、当事者の一方が和解内容を履行しなかった場合、強制執行することはできませんが、債務不履行として訴訟を提起して強制執行することもできます。
4.ADR(裁判外紛争解決手続)機関の社労士会
裁判外紛争解決手続利用促進法(以下「ADR法」)は、裁判外紛争解決手続(訴訟手続によらない民事上の紛争解決を図る手続)を、専門的な知見を有する第3者(法務大臣が専門的な知見により和解の仲介が可能として認証した民間事業者)のもとに、迅速な解決を図ることにより紛争当事者の利便を向上するものとして、平成16年に制定されました。
社労士会労働紛争解決センターは、ADR法に基づき設置された個別労働関係紛争解決のためのADR機関であり、都道府県の社会保険労務士会などに設置されています。社労士会労働紛争解決センターでは、個別労働関係紛争を「あっせん」の手続により簡易、迅速、低廉に円満解決します。
6.労働審判制度
1. 訴訟よりも迅速な解決を目的とする労働審判制度
個別労働関係紛争をあっせんにより解決することは、手続が迅速かつ簡便でたいへん利用しやすい制度です。しかし、あっせんが成立しないまたはあっせん拒否で和解できない場合は、労働審判や訴訟ということになります。
労働審判は、平成18年4月から開始されている制度であり、地方裁判所に申立てを行います。通常の民事訴訟よりも迅速、適正かつ実効的に解決できる制度ですが、自分の主張に法律的な根拠があるのかを厳密に検討し、個別労働関係紛争の争点と証拠の整理をしなければなりません。また、あっせんとは異なり、特定社会保険労務士に代理権はありません。
2. 労働審判制度の調停
労働審判の審理は、労働審判官(裁判官)と、労働審判員(労働関係の専門家2人)で組織された労働審判委員会により行います。
個別労働関係紛争を原則3回以内の期日で審理し、話合いによる解決の見込みがあると判断されれば、いつでも調停を試みます。調停により解決できない場合には、実情に応じた判断(労働審判)を行います。
3.労働審判に対する異議申立て
労働審判制度は、適宜、調停を試み、調停が成立しない場合は労働審判を行います。労働審判に対して当事者から異議申立てがあった場合、労働審判はその効力を失い、労働審判事件は訴訟に移行されます。
民事裁判を起こす(訴えの提起)には、原告またはその訴訟代理人である弁護士が裁判所に“訴状”という書面を提出しなければなりません。原告は、訴状にどのような判決を求めるのか(請求の趣旨)と、またそれを裏付ける事実(請求の原因)を記載します。
4.調停と労働審判の効力
個別労働関係紛争の解決が、労働審判制度の労働審判委員会による調停が成立したとき、また労働審判による判断が受諾され確定したときは、裁判上の和解の効力を有します。
そのため、民法上の和解とは異なり、民事調停と同様の確定判決の効力を有します。当事者の一方が和解内容を履行しなかった場合は、強制執行を申し立てることができるとする執行力を有します。
7.個別労働関係紛争解決手続代行サービス内容
1.サービスの内容
社会保険労務士は、労働・社会保険関係法規、人事・労務管理の専門家として、個別労働関係紛争を未然に防止することが本来的な業務です。しかし、労働者の権利意識の高まりに対して企業のコンプライアンス(法令遵守)が追いついていないことや、労働関係法規だけでは解決できない民事上の個別労働関係紛争の増加などから、社会保険労務士といえども紛争を完全に防止することはできません。
これまで紛争解決手続の代理業務は、「弁護士」の専門業務でしたが、現在では個別労働関係に関する紛争について、弁護士より労働者との距離が近く、また敷居も低い「特定社会保険労務士」も代理業務ができます。
ACROSEEDの特定社会保険労務士は、紛争となっている事案について依頼者の主張の要点を的確に把握し、法令や判例の根拠を検討します。また、同時に多種多様な紛争解決のための手段をご説明します。依頼者のご要望に応じて、裁判によらないADR(裁判外紛争解決手続)による“あっせん”を代理します。
2.業務フロー
(1)企業が労働者からあっせん申請を受けた場合
| 1.相談 | |
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| 2.提案 | |
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| 3.主張・陳述の代理 | |
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| 4.あっせん案の妥当性の判断・受諾 | |
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5.あっせん打切り後のフォロー |
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(2)労働者が企業へあっせん申請する場合
| 1.相談 | |
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| 2.あっせん申請の可否の判断 | |
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| 3.あっせん申請書の作成・提出 | |
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| 4.主張・陳述の代理 | |
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5.あっせん案の妥当性の判断・受諾 |
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6.あっせん打切り後のフォロー |
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3.サービスの料金
(1)企業が労働者からあっせん申請を受けた場合
| ①着手料 | 31,500円 |
|---|---|
| ②和解契約により解決した経済的利益の額 | 1.0%~10.0%を基準として算定した額 |
・上記を基準としますが、あっせん事案に応じて協議させていただき、妥当額を提示させていただきます。
(2)労働者が企業へあっせん申請する場合
| ①着手料 | 21,000円 |
|---|---|
| ②和解契約により解決した経済的利益の額 | 1.0%~10.0%を基準として算定した額 |
・上記を基準としますが、あっせん事案に応じて協議させていただき、妥当額を提示させていただきます。
お見積り・お問い合わせ
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