1. 東京都千代田区・社会保険労務士法人ACROSEED
  2. メールマガジン
  3. メールマガジン2015年08月号

メールマガジン2015年08月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2015年08月 Vol.79

1.人事・総務ニュース

「いじめ・嫌がらせ」が6万件超  ~ 個別労働紛争解決制度施行状況 ~

 厚生労働省はこのほど、労働者と事業主とのトラブルを、裁判に持ち込むことなく迅速に解決するための「個別労働紛争解決制度」の平成26年度の施行状況を公表しました。

 それによると、「総合労働相談コーナー」に寄せられた相談件数が7年連続で100万件を超え、このうち、民事上の個別労働紛争の相談件数を内容別にみると、「いじめ・嫌がらせ」が62,191件と、続く「解雇」の38,966件、「自己都合退職」の34,626件を大きく引き離し、3年連続で最多となりました。


違法残業で会社役員などを書類送検 ~ 東京労働局の特別チーム ~

 東京労働局に設置された過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)は7月2日、全国に展開する靴の販売店の運営会社が従業員に違法な時間外労働をさせていたとして、同社の労務担当取締役と店舗責任者2人について、労働基準法違反の疑いで東京地検に書類送検しました。

 同社は、過去にも複数の店舗で労働基準監督署長の是正指導を受けていたにもかかわらず、東京都内の2つの店舗で、従業員に事前に労使協定で取り決めた残業時間を大幅に超える残業をさせるなど、違法な行為を続けていました。

 特別対策班は、違法な長時間労働などを取り締まるため今年4月に発足した組織で、書類送検を行うのは今回が初めてということです。


精神障害の労災認定が過去最多 ~ 平成26年度「過労死等の労災補償状況」 ~

 厚生労働省はこのほど、平成26年度の「過労死等の労災補償状況」をまとめました。過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患の労災請求件数は763件で、前年度と比べ21件(2.7%)減少。一方、仕事による強いストレスなどが原因で発症した精神障害の労災請求件数は1,456件で、同47件(3.3%)増加しました。このうち、労災認定されたのは497件と同61件(14.0%)増加し、請求件数および認定件数はともに過去最多となっています。

 また、精神障害の労災補償状況を年齢別にみると、請求件数、認定件数ともに40歳代(454件、140件)が最も多く、次いで30歳代、20歳代の順となっています。



育休取得率、女性86.6%、男性2.3% ~ 雇用均等基本調査結果速報 ~

 厚生労働省がまとめた「平成26年度雇用均等基本調査(速報版)」によると、昨年10月1日現在、女性の育児休業取得率は86.6%で前年度調査より3.6ポイント上昇。一方、男性は2.3%で、同0.27ポイント上昇しています。

 また、男性の育児休業取得率について産業別にみると、「生活関連サービス業、娯楽業」が10.35%で突出して高く、続いて「運輸業、郵便業」3.59%、「医療、福祉」3.52%の順になっています。



2.社会保険ワンポイント・ゼミナール(マイナンバー制度のスタート)


マイナンバーとは

 マイナンバーとは、国民一人ひとりが持つ12桁の個人番号のことをいいます。マイナンバーにより、社会保障や税、災害対策の分野で効率的に情報が管理され、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されます。

 また、利用する側(本人や民間事業者など)にとっては、行政手続の際の添付書類が削減されるなど、負担が従来より軽くなることにもなります。


10月からマイナンバーの通知開始

 マイナンバーは、住民票を有するすべての人(外国籍の人も含む)に付与されるもので、今年10月から住民票の住所にマイナンバーの通知カードが簡易書留で届けられます。通知カードは確実に受け取らなくてはなりませんので、住民票の住所と異なるところに住んでいる場合は、早めに住民票を移す必要があるでしょう。

 また、平成28年1月からは、希望者が申請すれば「個人番号カード」が交付され、それを本人確認のための証明書として活用することができます。


マイナンバーの収集

 民間事業者は、従業員や役員の社会保障や税に関する手続の際にマイナンバーを届け出ることが必要となります。予定では、平成28年1月提出分からは雇用保険と税務関係(源泉徴収票など)、1年遅れて平成29年1月提出分からは、健康保険や厚生年金の届出の際にマイナンバーを記載して届け出ることになっています。

 このため、事業者はマイナンバー関係の事務で利用するために、マイナンバーの通知を受けている本人から、その利用が始まる平成28年1月より前でも、あらかじめ本人や扶養家族のマイナンバーを収集することができます。人への通知が始まるまでに、収集の目的や時期、方法などを決めておき、それを周知しておくと良いでしょう。

 また、マイナンバーを収集する際は、法令にしたがって本人に利用目的を明示するとともに、本人確認を行うことが義務づけられています。

 本人確認は、原則として、次の①~③のいずれかの方法で行うこととされています。

①個人番号カード(番号確認と身元確認)
②通知カード(番号確認)と運転免許証など(身元確認)
③個人番号の記載された住民票の写しなど(番号確認)と運転免許証など(身元確認)

 ただし、これらの方法が困難な場合は、過去に本人確認を行って作成したファイルなどで番号確認を行うことなども認められます。また、雇用関係にあることなどから本人に相違ないことが明らかに判断できるときは、身元確認を不要とすることも認められます。



3.参考資料 (個別労働紛争の解決状況 90%以上が金銭により解決 )

 解雇や労働条件の引き下げといった問題をめぐり、個々の労働者と事業主との間で生じる紛争(個別労働関係紛争)については、都道府県労働局や裁判所で解決を図ることができます。一方で、解決結果の実態については、裁判所で判決が出されるケースを除いて非公開であるため、必ずしも明らかではありませんでした。
 こうしたことから、厚生労働省は、労働紛争の解決手段として活用されている「都道府県労働局のあっせん」、「労働審判の調停・審判」及び「民事訴訟の和解」について、事例の分析・整理を独立行政法人労働政策研究・研修機構に依頼。このほどその調査結果を公表しました。
  それによると、あっせん・労働審判・和解ともに、9割以上が企業側が労働者側に金銭を支払って解決に至ったことが分かりました。

労働者の性別


 あっせんでは、男性に係る案件が457件(53.6%)、女性に係る案件が396件(46.4%)と男性が若干多くなっています。

 労働審判では男性に係る案件が310件(68.6%)、女性に係る案件が142件(31.4%)と、あっせんよりも男性の比率が高く、男性が3分の2以上を占めました。

 この傾向は裁判上の和解ではさらに強まり、男性に係る案件が149件(77.2%)、女性に係る案件が44件(22.8%)と、男性が4分の3以上を占め、女性は2割強となりました。


労働者の雇用形態


 あっせんでは、正社員402件(47.1%)、非正規325件(38.1%)、派遣64件(7.5%)でした。

 労働審判ではあっせんに比べて正社員の比率が大きく高まり、342件(75.7%)と4分の3以上が正社員で、非正規は95件(21.0%)と2割強にとどまり、派遣は僅か13件(2.9%)となりました。

 この傾向は裁判上の和解ではさらに強くなり、正社員が154件(79.8%)と8割に迫り、非正規は37件(19.2%)と2割を下回りました。


制度利用に係る期間


 あっせんに係る期間(あっせん申請受理日から合意成立によるあっせん終了日までの期間)は、1~2ヵ月未満が60.8%と圧倒的に多く、1ヵ月未満の19.8%を含めれば、8割以上が2ヵ月以内に手続が終了しています。

 一方、労働審判に係る期間(労働審判の申立日から調停または審判による終了日までの期間)は、2~3ヵ月未満が43.4%と半数に近く、あっせんよりも若干時間がかかっていますが、それでもほとんどが6ヵ月以内に手続が終了しています。

 これに対し最終的に和解で解決した訴訟は手続自体にかなり長い期間を要しており、1年以上が40.9%と最も多く、次いで6~12ヵ月未満の34.7%で、訴訟を起こせばかなりの長期間となるという傾向は明確に存在しています。


解決内容

 あっせんについては、終了区分が「合意成立」である324件のうち、合意内容が金銭解決であるのは313件で96.6%に上り、撤回・取消、すなわち復職と考えられる解決に合意したものは4件、1.2%に過ぎません。

 労働審判についても、金銭解決が434件、96.0%と大半を占め、裁判上の和解については、金銭解決が174件、90.2%とやや少なく、その分撤回・取消が12件、6.2%とやや増えています。


解決金額


 あっせんにおける解決金額の分布を見ると、10~20万円未満に3割近くが集中しており、10万円未満が4分の1強に上ることも含めると、過半数が20万円未満で解決しているという結果になります。 平均値は27万9,681円ですが、これは高額の解決金に引っ張られているためで、中央値は15万6,400円で、半分近くは15万円以下で解決しています。

 これに対し、労働審判における解決金額は50~100万円未満と100~200万円未満に半分以上が集中し、さらに200~300万円未満と300~500万円未満にそれぞれ1割前後分布しています。平均値は229万7,119円、中央値は110万円で、半分以上が100万円以上で解決しており、あっせんとは明確に異なっています。

 裁判上の和解については、50万円から1,000万円に至るまでなだらかに分布しており、高額の解決が頻繁に見られます。平均値は450万7,660円、中央値は230万1,357円で、総じて労働審判における解決金額の2倍ほどの額で解決しています。



4.労務管理(トラブル回避の対応術)

 パート従業員が妊娠、産休はとらせなければならないか?
 当社はパートタイマーを数名雇用していますが、このほどある女性パートが妊娠し、産休の取得を希望しています。1年契約で更新して3年目に入り、来月が更新の時期となります。パートは貴重な戦力なので、契約を更新して産休を取らせても良いのですが、代わりのパートを採用しなければならず、このまま契約満了で退職も仕方ないかとも考えています。
 このような場合でも、産休を取らせなければならないのでしょうか?

均等法とマタニティー・ハラスメント


 男女雇用機会均等法(第9条)では、その雇用する女性労働者が妊娠、出産したことなどを理由として、その女性労働者に対して解雇、その他の不利益な扱いをすることを禁止しています。この条文は正社員だけではなく、パート、アルバイト、派遣労働者にも適用されます。

 均等法に違反する場合には、罰則の適用も含めて行政による厳しい措置の対象になります。厚生労働省は、原則として妊娠・出産などから1年以内に女性が不利益な取り扱いを受けた場合は、直ちに違法と判断することを明確に示していて、是正指導や勧告に従わない企業名を公表することなども含めて、この判断基準に基づく指導などを徹底するとしています。

 また、最近では、働く女性が妊娠・出産をきっかけに、会社から不利益な扱いを受けるほかに、職場において精神的・肉体的な嫌がらせを受けることも含めて、マタニティー・ハラスメント(マタハラ)という言葉が認知されつつあります。

 政府は、来年の通常国会での法改正も視野に、企業にマタハラ防止対策の強化を促すための取り組みを実施する方針を打ち出すなど、規制強化に向けた動きが活発になっています。


妊娠を「きっかけ」とした雇止めも法違反


 質問のケースのように、雇用契約期間を定めたパートタイマーに関しても、妊娠や出産をきっかけとして不利益な扱いをすることは、たとえ本人が一定の理解を示していたとしても、法的には違反行為と認められることになります。妊娠したからといって契約の更新をしないことや退職を促すこと、減給や不利益な人事評価なども行ってはならないとされています。


必要な措置はとるべき


 パートタイマーであっても法令に基づいた産前・産後休業など、女性労働者に対する就業上の制度は適用されます。もともと、妊娠の事実がなければ契約を更新する予定だったのであれば、更新して所定の休業をさせるようにしなければならないでしょう。

 また、均等法(第12条・13条)においては、雇用する女性労働者が、妊娠・出産に関して保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保することや、主治医などから指導を受けた場合は、その指導事項を守ることができるよう必要な措置を取ることが義務づけられています。

 したがって、本人からこうした申し出などがあれば、勤務時間の状況や本人の希望なども踏まえて対応することが必要となるでしょう。

5.参考資料 (改正労働者派遣法、今国会で成立へ)


 通常国会に提出されている改正労働者派遣法案が6月19日に衆議院で可決、7月8日には参議院での審議が始まりました。会期が大幅に延長されているため、改正法案は今の通常国会で成立する見通しとなりました。成立すれば、今年9月1日から施行されることになります。

 現行制度では、派遣ができる期間について、ソフトウェア開発など政令で定めた専門業務については制限がなく、その他の業務には原則で最長3年の制限がありますが、同改正法案ではこの仕組みを廃止したうえで、新しく以下の制度が設けられます。

  1. 事業所単位の期間制限‥派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受入れは3年を上限とする。それを超えて受け入れるためには、事業所の過半数労働組合(それがない事業所においては労働者の過半数代表者)からの意見聴取などが必要
  2. 個人単位の期間制限‥派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受入れは3年を上限

 これにより、専門業務を含めて原則3年の期間制限が適用されますが、同一業務であっても、派遣労働者の交代により3年を超えての派遣が可能になります。

 また、派遣元に対しては、派遣期間終了時において、①派遣先への直接雇用の依頼、②新たな派遣先の提供、③派遣元での無期雇用、④その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置の実施が義務づけられます。(1年以上3年未満は努力義務、3年経過時は義務)

 このほか、派遣元と派遣先双方において、派遣労働者と派遣先の労働者の均衡待遇確保のための措置を強化することが盛り込まれていますが、これを受けて、同じ仕事をする派遣労働者と通常の労働者(正社員)との賃金格差を解消することを目的とした、いわゆる「同一労働・同一賃金」を推進する法案も6月19日、衆議院で与党などの賛成多数により可決し、参議院へ送られています。

 しかし、審議において、法文のうち、「職務に応じた待遇の均等」とされていた部分が「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度その他の事情に応じた均等な待遇及び均衡のとれた待遇」へと変更され、必要となる法制上の措置も「施行後1年以内に」を「3年以内に」としたうえで、「必要があると認めるとき」と改められるなど、法律の実効性が問われるような修正が加えられました。

6.参考資料 (日本年金機構からのお知らせ)

7.参考資料  (ストレスチェックと精神保健福祉士)

 労働安全衛生法が改正されて、本年12月1日から、ストレスチェックの実施が従業員数50人以上の事業場に義務づけられています。ところで、このストレスチェックを実施できる者すなわちストレスチェック実施者は、医師、保健師、看護師、精神保健福祉士であることが必要とされています。
 この中で、精神保健福祉士は一般にはあまり馴染みがないと思われます。そこで今回は、このストレスチェック実施者に入った精神保健福祉士について見てみようと思います。

精神保健福祉士とは


 精神保健福祉士は、平成9年に制定された精神保健福祉士法により定められた精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格です。精神科ソーシャルワーカーということで、PSWと略称されることもあります。

 法に定められた定義では、「厚生労働省に備える精神保健福祉士登録簿の登録を受け、精神保健福祉士の名称を用いて、精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の地域相談支援の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うことを業とする者」とされています。


精神保健福祉士の職場と仕事


①医療機関

 医療機関での業務は、精神科病院などで、精神障害の医療を受けている人たちの相談を受けたり、助言、指導、支援を行ったりすること等がその職務となっています。

②生活支援サービス

 その設置目的によって行う業務にも幅があり、日常生活訓練をする事業所、就労前訓練や作業を行う目的の施設、相談支援事業所や地域活動支援センター等の地域生活の支援を主目的とする事業所等で、その目的に応じた各種サービスを提供します。

③福祉行政機関

 行政機関では、法律に基づいた各種支援事業や手続きの実施を担うほか、精神保健福祉に係る計画立案に関与し、また精神障害者の生活支援のために、関係機関のネットワークを作るコーディネートなどの企画、実施、調整なども担当します。

④近年広がった職域

 以上の他、近年広がった職域として、保護観察所や矯正施設などの司法施設、社会福祉協議会、ハローワーク、介護保険関連施設、教育機関、一般企業等があります。


ストレスチェックの担い手として


 ストレスチェックも精神保健福祉士の新しい職域分野に位置づけられることになると思います。現在、精神保健福祉士の登録者数は約7万人ということですが、ストレスチェック制度のスムーズな運営のためには、精神保健福祉士の協力が不可欠であると言えます。