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メールマガジン2016年04月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2016年04月 Vol.87

1.人事・総務ニュース

退職金の減額は「十分な説明が必要」 ~ 最高裁が初めて判断を下す ~


 信用組合が合併を繰り返した経緯で生まれた山梨県民信用組合が退職金を減らす変更をしたのは不当だとして、旧信組出身の元職員が合併前の基準での支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁(第2小法廷)は2月19日、賃金や退職金を減額するなどの不利益変更には「事前に経営者側が十分な説明を行うなど、労働者側が自由意思に基づいて同意していることが必要だ」として、元職員が敗訴した二審判決を破棄。審理を東京高裁に差し戻しました。退職金の減額について最高裁が判断を示したのは初めてだということです。

 同信用組合は、平成16年に新たな退職金規定を導入し、職員側も同意していましたが、旧信組出身の職員にとっては、退職金が一切支払われないか、または大幅に減額される内容だったことから訴訟となっていました。一、二審ではいずれも変更時の職員側の同意は有効だとして請求は棄却されましたが、最高裁は「労働者は経営者側の命令に従うべき立場にあり、意思決定の基礎になる情報収拾能力も限られる。形式的に同意しているだけでは不十分だ」と指摘しました。



労働時間の把握、「IC定期券」も利用へ  ~ 労災補償業務で厚労省が通達 ~


 厚生労働省はこのほど、都道府県労働局長宛に「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」と題した通達を発出しました。

 通達では、労災請求のうち長期にわたって決定が出されていない過労死などの事案においては、実際の労働時間の把握が重要であることから、タイムカードなどの実労働時間と直結する資料が得られない場合には、同僚、取引先や家族からの聴取に加えて、事業場建物への入退館記録、パソコンによる作業履歴の分析、さらにはIC定期券などの乗車記録の確認を行うことで、労働時間の迅速・適正な把握を行うことを示しています。

 このほか、長期未決事案などについて、迅速な処理と進行管理の徹底により解消することや、請求人などへの懇切、丁寧な対応を行うことなどが盛り込まれています。



「秘密情報の保護ハンドブック」を公表  ~ 経産省が企業情報漏えい防止策を示す ~


 経済産業省はこのほど、営業秘密など企業情報の漏えい防止対策を示す手引書となる「秘密情報の保護ハンドブック」を作成、公表しました。

 秘密漏えい防止のためには、働きやすい職場環境を整備し、公平な人事評価制度の運用を通じて企業への帰属意識や仕事に対する意欲を高めることが最も有効な対策だとしたうえで、情報へのアクセス権の適切な管理に努め、人事異動時には情報を利用できる者の範囲を確実に変更することが重要だとしています。

 具体的な対策としては、①秘密情報に「近寄りにくくする」(アクセス権の限定、施錠管理)、②秘密情報の「持出しを困難にする」(私物USBメモリ等の利用禁止)、③漏えいが「見つかりやすい環境づくり」(レイアウトの工夫、防犯カメラの設置)、④「秘密情報と思わなかったという事態を避ける」(マル秘表示、ルール周知)、⑤社員の「やる気を高める」(ワークライフバランス、社内コミュニケーション)が挙げられています。


2.社会保険ワンポイント・ゼミナール(健康保険法の改正 傷病手当金・出産手当金の計算方法の変更


傷病手当金・出産手当金の計算方法


 健康保険の傷病手当金は被保険者が業務外の病気やケガの療養のため働くことができない期間、出産手当金は被保険者が出産のため休業する期間を対象として、給与(報酬)が受けられない場合、または給与の支払額が手当金より少ない場合に受けることができます。

 手当金は、休業1日につき標準報酬日額(標準報酬月額の30分の1)の3分の2相当額が支給されますが、計算のもとになる標準報酬月額は休業の当月の額とされています。

 平成28年4月からはこの計算方法が変更され。1日について、手当金の支給が始まる日の属する月を含む直近の継続した12ヵ月間の被保険者期間の標準報酬月額を平均した額の30分の1を基礎として、その3分の2に相当する額になります。



「12ヵ月」に満たない場合


 手当金の支給開始日以前の被保険者期間が1年間に満たない人は、その人の被保険者期間における各月の標準報酬月額の平均額と、支給開始日の属する年度の前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額の平均額を比べて、少ない方の額をもとに標準報酬日額を算出することになります。この標準報酬月額の平均額は、保険者(協会けんぽや健康保険組合)ごとに算定されます。(協会けんぽの場合は、平成27年度は28万円となっています。)

 また、支給開始前1年以内に転職などをしている場合で、転職前後で加入する健康保険の保険者が異なる場合は、転職後の被保険者期間のみで平均額を計算します。


4月より前から受給している場合


 今回の2つの手当金の計算方法変更の施行日は平成28年4月1日としているため、 例えば施行日より前から継続して傷病手当金を受ける場合、4月1日以降の日にかかる支給額については、新しい計算方法で計算されることになります。


3.参考資料 (女性の賃金、過去最高に)

 厚生労働省が発表した「賃金構造基本統計調査」によると、昨年のフルタイムで働く一般労働者の賃金(6月分の所定内給与額)は、前年に比べて1.5%増の30万4,000円と2年連続の増加。このうち、女性の賃金は同1.7%増の24万2,000円で、過去最高となったことが分かりました。
なお、この調査は常用労働者10人以上の5万785事業所を対象に行われたものです。

一般労働者の賃金

(賃金、前年比)

 平成27年の賃金は、男女計30万4,000円で、前年比1.5%増となっています。

 性別では、男性が33万5,100円で前年比1.7%増、女性が24万2,000円で同1.7%増となっています。
また、男性の賃金を100とすると、女性の賃金は72.2で、男女間の賃金格差が過去最少だった前年と同水準となっています。

(学歴別にみた賃金)

 男性は大学・大学院卒40万2,500円(前年比1.5%増)、高専・短大卒30万8,800円(同1.6%増)、高校卒28万8,200円(同0.5%増)、女性は大学・大学院卒28万7,800円(前年比1.1%増)、高専・短大卒25万2,500円(同1.4%増)、高校卒20万7,700円(同1.0%増)となっており、男女ともにすべての学歴で前年を上回っています。

(産業別にみた賃金)

 男性は金融業、保険業(48万2,300円)、教育、学習支援業(44万2,200円)が高く、宿泊業、飲食サービス業(27万円)が低くなっています。

 女性は電気・ガス・熱供給・水道業(32万4,800円)、情報通信業(31万3,700円)が高く、宿泊業、飲食サービス業(19万6,200円)が低くなっています。



(企業規模別にみた賃金)

 男性は大企業38万7,700円(前年比1.5%増)、中企業32万300円(同2.6%増)、小企業28万8,500円(同0.9%増)、女性は大企業26万8,400円(前年比1.2%増)、中企業24万400円(同2.8%増)、小企業21万6,400円(同0.8%増)となっており、男女ともにすべての企業規模で前年を上回っています。

 また、大企業の賃金を100とすると、中企業は男性82.6、女性89.6、小企業は男性74.4、女性80.6となっています。


(雇用形態別にみた賃金)

 男女計では、正社員32万1,100円(前年比1.1%増)、非正社員20万5,100円(同2.4%増)となっています。

 性別では、男性が正社員34万8,300円(前年比1.5%増)、非正社員22万9,100円(同3.1%増)、女性が正社員25万9,300円(前年比1.1%増)、非正社員18万1,000円(同1.0%増)となっています。

 また、正社員の賃金を100とすると、非正社員は男性65.8、女性69.8にとどまっています。



短時間労働者の賃金

 1時間当たりの賃金は、男性が1,133円(前年比13円増)、女性が1,032円(同20円増)で、いずれも過去最高となっています。これを産業別にみると、男性は学術研究、専門・技術サービス業(1,734円)が高く、宿泊業、飲食サービス業(960円)が低くなっています。

 女性は電気・ガス・熱供給・水道業(1,335円)が高く、製造業(915円)が低くなっています。



4.労務管理(トラブル回避の対応術)

 在宅勤務をみなし労働時間にすることができるか?
 当社は主に通信販売を事業とする会社ですが、このたび広告制作を担当する社員については、1ヵ月の半分程度、自宅で勤務をさせようと考えています。
 この場合、自宅での勤務は、実際に働いた時間にかかわらず会社で所定の時間勤務したとみなす、という扱いができるでしょうか?

在宅勤務の活用


 在宅勤務は、情報通信機器などを活用して場所や時間を自由に使ってできる柔軟な働き方を可能とする「テレワーク」の一つとして位置づけられ、通勤による負担を軽減することができるとともに、多様な働き方の選択肢を拡大するものとして、関心を集めています。

 こうしたことから、国も在宅勤務の適切な導入や実施のためのガイドラインを策定して、その普及に取り組んでいます。


在宅勤務の労基法適用


 在宅勤務であっても、労働基準法で定められた労働時間規制(法定労働時間、法定休日、深夜業、休憩など)は適用されます。一方で、原則的な労働時間の枠組みとは別に、一定の要件のもとで導入できる「事業場外労働のみなし労働時間制」を在宅勤務にも適用することができます。


みなし労働時間が適用される場合とは


 事業場外労働のみなし労働時間制とは、労働者が業務の全部または一部を事業場外で従事し、その業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、一定の時間を労働したとみなすことのできる制度で、導入にあたっては就業規則に定めるなど所定の手続きが必要です。

 労働者の自宅は、基本的には労基法上の事業場ではないので事業場外労働にあたるわけですが、その場合であっても、使用者の指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるとされるので、みなし労働時間制の適用はできません。

 ガイドラインにおいては、次の①から③の要件のすべてを満たす形態で行われる在宅勤務については、原則として、事業場外労働のみなし労働時間制が適用されるとしています。

  1. その業務が、起居寝食など私生活を営む自宅で行われること
  2. その業務に用いる情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされて いないこと
  3. その業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

 この場合の、「使用者の指示により常時」とは、労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断することが、使用者から認められていない状態のことを意味しています。また、「通信可能な状態」とは、具体的な指示に備えて手待ち状態で待機しているか、または待機しつつ実作業を行っている状態をいいます。

 これ以外の状態、例えば、単に回線が接続されているだけで、労働者が情報通信機器から離れることが自由である場合などは「通信可能な状態」にあたらないものとされています


5.参考資料 (「安特・衛特」とは)

安特・衛特


 会社によっては、「安特・衛特」に指定されて、4月からその対応をスタートしなければならないところがあるかと思います。そこで今回は、この「安特・衛特」について説明していきたいと思います。


制度の趣旨


 「安特・衛特」の正式名称は、安全管理特別指導事業場・衛生管理特別指導事業場です。その法律上の根拠は、労働安全衛生法第79条にあります。

 この制度の趣旨は、同業種の中でも労働災害発生件数の多い事業場、職場環境に問題があり、また、健康障害が懸念される事業場等を個別に指定し、安全衛生管理体制、機械設備、職場環境、安全衛生教育等についての改善事項を安全衛生改善計画書として作成させ、継続的な指導を行うこと等により、確かな安全衛生管理を確立するということです。

 ※労働安全衛生法第78条には、より厳しい措置として、厚生労働大臣の指示による「特別安全衛生改善計画」が規定されています。


指定から解除まで

【指定】

 都道府県労働局長は、上記の制度趣旨を踏まえ、労働災害について特別な指導が必要と判断される事業場を毎年度「安全衛生管理指定特別指導事業場」として指定し、安全衛生改善計画の作成を指示します。実際は、各労基署が候補事業場を選定し、その中から指定を行います。

【指定期間】

 指定期間は、原則として、当該年度の4月1日から翌年3月31日までです。ただ、災害防止の成果が出ない場合等は、継続される場合もあります。

【計画の中核】

 この計画の中核に位置づけられているのは、リスクアセスメントとそれに基づく改善措置の実施です。

【指定事業場の取組み】

 指定された当初は、多くの事業場が安全衛生管理の具体的な進め方に当惑して、災害多発のレッテルを張られたようなイメージを持つこともありますが、かえってこれを職場の安全・衛生を見直すチャンスとしてとらえ労使が真摯に取り組むことにより、改善が大幅に図られる例も多くあります。中には、その後無災害の好成績を継続して、安全衛生表彰を受けることになった事業場も見られます。

 指定された後の1年間は、会社が作成した安全衛生管理計画書に従って安全衛生管理活動を進めているかの確認と指導のため、労基署から定期的な訪問があります。

 ですので、指定された場合は、これを自社の安全衛生管理確立のための良い機会ととらえて、労働局・労基署の指導や労働安全・衛生コンサルタント等の専門家の意見を聞き、何事にも積極的に取り組むことが大事と言えます。

【指定解除】

 このような取組みを1年間行って、安全衛生改善計画書で計画された各事項が計画通り実行され、災害件数の減少等計画の目的が達成されたと認められれば、指定解除ということになります。


6.参考資料 (「過重労働解消キャンペーン」における監督指導の事例)

 このほど厚生労働省は、昨年11月に実施した「過重労働解消キャンペーン」における重点監督の実施結果を発表しました。これは、労働基準関係法令の違反が疑われる5,031事業場に対して集中的に行われたもので、73.9%にあたる3,718事業場で、違法な時間外労働や賃金不払い残業などが認められたということです。今号では、あわせて公表された具体的な監督指導の事例をいくつかご紹介します。

7.参考資料  (健康保険料率の変更)