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メールマガジン2016年06月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2016年06月 Vol.89

1.人事・総務ニュース

看護・介護休暇の半日取得、運用を容易に
~ 改正育児・介護休業法等の省令・指針事項案を示す ~


 改正育児・介護休業法および男女雇用機会均等法に関する省令事項・指針事項(案)を議題として、このほど労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会が開催されました。

 子の看護休暇および介護休暇を1日未満の単位で取得できる労働者について、改正法では、「1日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるもの以外の者」とされていますが、省令事項(案)では、厚生労働省令で定めるものは、1日の所定労働時間が「4時間以下の短時間労働者」と示されました。

 また、1日未満の単位は「半日」としたうえで、「半日」は1日の所定労働時間の2分の1とされますが、労使協定によって、2分の1以外の「半日」も可能としています。たとえば、午前中3時間、午後4時間といった運用も容易になります。

 このほか、育児休業の申し出ができる有期契約労働者について、改正法では「子が1歳6ヵ 月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者」に要件が変更されましたが、この趣旨についての労使双方の理解不足等により、対象となる有期契約労働者の権利行使が妨げられることのないよう、分かりやすく周知することが必要であるとされています。

 このため、指針とすべき事項に、育児休業期間中や育児休業終了時に労働契約の終了時期(更新時期)が到来し、更新の有無をその時点で判断する場合に、育児休業の取得等を理由として契約を更新しないことは、不利益取扱に該当するため禁止されるとしたうえで、育児休業の取得等を理由とせず、経営上の理由等から契約を更新しないことは、不利益取扱には該当しない、と整理して示すことが必要だとしています。

「全員参加社会」に向け職業能力を底上げへ  ~ 第10次職業能力開発基本計画を策定 ~


 厚生労働省は4月28日、今後5年間にわたる職業能力開発施策の基本方針を示した「第10次職業能力開発基本計画」を策定しました。

 基本計画では、「生産性向上に向けた人材育成戦略を前面に打ち出し、そのための職業能力開発の施策について、①国、企業、民間教育訓練機関、学校などの教育訓練資源を効果的に活用した人材育成の強化、②女性・若者・中高年齢者・障害者など、全ての人材がその能力を存分に発揮できる「全員参加の社会」の実現加速に向けての職業能力底上げの推進、③産業界のニーズや地域の創意工夫を活かした人材育成の推進、④人材の最適配置を実現するための労働市場インフラの戦略的展開、といった今後の方向性などが盛り込まれています。



海外勤務でも「国内所属」と認める ~ 東京高裁が労災不支給処分を取消し ~


 上海(中国)に赴任中に過労などを原因とする急性心筋梗塞で死亡した男性の遺族が、海外勤務を理由に労災保険の適用外とし、遺族補償給付を丌支給とした中央労働基準監督署長の処分取り消しを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は4月27日、同処分を取り消す判決をしました。

 判決で裁判長は、海外勤務中に労災保険の適用になるかは、仕事の内容や指揮命令など勤務実態を踏まえて判断すべきだとしたうえで、男性については、「労働の場が海外にあるだけで、実質的には国内の事業所に所属していた」と認め、労災が適用されると判断しました。

 日本国内で行われる事業から派遣されて、海外の支店や工場、現地法人など、海外で行われる事業に従事する労働者は、あらかじめ労災保険に「特別加入」をすれば労災が適用されますが、男性はこの手続きをとっていませんでした。


2.社会保険ワンポイント・ゼミナール(算定基礎届での年間平均の申出 )


「年間平均」による算定の要件


 健康保険・厚生年金保険の保険料や保険給付の額の基礎となる標準報酬月額の定時決定は、7月1日現在の被保険者に、その年の4月、5月、6月に支給した報酬(給不)について、事業主からの届出(算定基礎届)により行われます。

 この方法では、季節的な業務の繁閑などによって、4月~6月の平均の報酬が他の月の水準よりも高い場合、通常の方法により平均の報酬で算出すると、1年を通しての平均よりも著しく高くなり、それが保険料にも反映されることになってしまいます。しかし、このような場合には、申し立てをすることによって、1年を通しての報酬をもとに算定する「年間平均」の特例を受けることができます。

 年間平均による算定の申し立てができるのは、原則として、次の要件をいずれも満たす場合です。

  1. 「4、5、6月の給不の平均額から算出した標準報酬月額」と「前年の7月から当年の6月までの給不の平均額から算出した標準報酬月額」に2等級以上の差が生じたこと(算出した平均額が標準報酬月額の上・下限にかかる範囲の場合は1等級の差でも対象となる場合があります)
  2. その差が業務の性質上例年発生することが見込まれること
  3. (年間平均による算定を申し立てることに)被保険者が同意していること

届出手続きに必要な書類


 年間平均による算定を申し立てるためには、「被保険者報酬月額算定基礎届」(備考欄に「年間平均」と記載)に、事業主が、被保険者が保険者算定の要件に該当すると考えられる理由などを記載した「年間報酬の平均で算定することの申立書」を添付して保険者(年金事務所、健康保険組合や厚生年金基金)に提出することが必要となります。また、対象となる被保険者の前年7月から当年6月の「被保険者報酬月額算定基礎届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等」の様式をあわせて提出しなければなりません。

 年間平均で算定することの申し立てに被保険者の同意が必要なのは、適用された標準報酬月額が、保険料だけではなく将来受ける年金の額に反映されるためでもあります。被保険者の同意があったかどうかは、この様式に本人氏名の自署または記名・押印があることで保険者の確認が行われることになっていますので、あらかじめ本人に、年間平均による算定の内容などについて説明をしておくことが大切でしょう。

 なお、健康保険組合などでは、申し立てについて独自の書類や確認資料の提出が必要となる場合もあります。


3.参考資料 (災害時への備え、中小は不十分)

 2016年版の「中小企業白書」では、最近の中小企業の動向について分析を行い、売上高の伸び悩みや人手丌足、設備の老朽化といった中小企業が直面している課題を浮き彫りにしています。
 また、災害時などへの対応策をまとめた「事業継続計画」(BCP)を策定済みの中小企業がわずか15%にとどまることに着目。自然災害が後を絶たない我が国において、早めの計画策定の重要性を強調しています。
 ※同白書は複数の省庁の調査等を基に構成されていますが、紙面の都合上、それらの表記を割愛しています。

中小企業の収益の状況


 景況調査の採算(経常利益)DI※をみると、リーマン・ショックの影響もあり、2008年から09年第1四半期にかけて大幅に低下しましたが、以降は上昇傾向にあります。

 ※採算DIは、前年同期に比べて、採算が「好転」と答えた企業の割合から、「悪化」と答えた企業の割
合を引いたもの。

 経常利益の実額についても、2013年以降は増加傾向にあり、15年10-12月期は過去最高水準となりました。


収益構造の分解


 経常利益は、売上高、変動費(原材料、仕入品等の売上高に比例する費用)、人件費、減価償却費(建物や設備等の固定資産の費用)、営業外損益(企業の財務活動等によって発生する損益)の5つの要因に分解することができます。

 これらのうち、過去最高水準の経常利益に最も大きく寄不している項目は変動費の減少(経常利益が最も落ち込んだ09年に比べて+1.7兆円)、次は人件費の減少(同+1.6兆円)で、売上高は減少しています(同▲0.9兆円)。

 これにより、売上高は伸び悩びましたが、変動費や人件費が減少したことで、経常利益を増加させていることが分かります。


中小企業の経営上の問題点


 卸売業・小売業・サービス業について、中小企業の経営上の問題点を景況調査により確認すると、どの業種も「需要の停滞」が上位に位置しており、他にも、卸売業は「販売単価の低下・上昇難」、小売業は「大・中型店の進出による競争の激化」等、売上高の伸び悩みへと直結する課題を経営上の問題としてあげている事業者も多くあります。


減価償却費(設備投資)の分析


 減価償却費について、関連する設備投資の動向をみていきます。

 実際の設備投資額の推移を確認すると、2008年から10年初旬にかけて減少傾向にありましたが、以降はほぼ横ばいで推移。15年にはやや増加しているものの、リーマン・ショック前の水準には達していません。 中小企業が設備投資をしない理由として、現状設備で十分という理由が68%で最も多く、次いで景気の先行き不透明、借入負担が大きい、と続いています。

 また、最後に設備投資を実施した時期を聞くと、全体の約4割が5年以上設備投資を実施しておらず、2割弱が10年以上実施していない。結果として設備の老朽化という課題が顕在化してきています。


変動費の分析(取引環境)


 変動費は売上高の変動によって変動する費用であり、製造業であれば材料費、小売業であれば仕入価格の変動等に左右されます。 関連の深い一次産品(エネルギー、金属等)価格は変動が大きいため、その変動に応じて販売価格に適切に転嫁できるかどうかが経常利益に影響します。

 過去10年間で価格単価を引き上げできなかった場合の対応として、「利益率の圧縮」を行ったと回答した企業が53.9%で最も多く、以下、「人件費の抑制」「他の原材料・仕入価格の抑制」、「設備投資の抑制」などと続いています。


事業継続計画(BCP)の策定


 従来から自然災害の脅威にさらされている我が国においては、リスク管理の重要性が増しています。BCPとは企業が自然災害等の緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段等を取り決めておく計画のことです。

 中小企業におけるBCPの策定状況をみると、「策定済み」の企業は15.5%にとどまり、BCP策定への取組は不十分であるといえます。自然災害が多く、企業を取り巻く環境の変化により多様なリスクが想定される我が国においては、今後もリスクへの対応をより強固にしていくことが重要です。

 経営者は、BCPを特別なものであると認識せずに、雇用・人材育成や事業承継と同様に、企業の経営の一環として積極的に対応していくことが求められます。



4.労務管理(トラブル回避の対応術)

 業務委託契約を適用するには?
 当社は生命保険の代理店を営んでいますが、保険外交員とは業務委託契約を締結しています。
このほど、一部の外交員については会社の指示で特別な仕事をさせることが必要となり、当社とは雇用関係に切り替える検討をしています。
 そのなかで、仕事上、時間や場所などを自分で決められる裁量が大きい外交員については業務委託契約のままとしたいのですが、その区分をどう判断すればよいでしょうか?

業務委託契約と労働契約


 労働契約を結んで雇用される労働者は、労働関係の法令によって保護されるのに対して、業務委託や請負契約を結んだ場合は、個人事業者として他人の指揮命令を受けずに仕事をすることになります。したがって、基本的には労働者を保護する法令は適用されません。

 また、業務委託や請負契約の場合、一般的には、報酬は出来高払いなどによって支払われ、仕事をする時間や就業場所の拘束が少なく、委託側の就業規則も適用されず、労働保険などにも加入しないといった取扱いがなされることになります。

 このように、労働契約と業務委託契約では大きな違いがあり、形式上で業務委託契約書を結んだとしても、実態からみて労働契約であると認められるような場合は思わぬトラブルに発展することも考えられます。


労働者の定義


 労働基準法(第9条)では、「労働者」は、事業に使用される者であって、その対償として賃金が支払われる者と定められています。 しかし、実際には、指揮監督の程度や態様の多様性、支払われる報酬の性格の不明確さなどから、労働者であるかどうかの判断が困難な場合があります。その場合、労働者性の判断にあたっては、労務が提供される形態や報酬の内容、これらに関連するいろいろな要素をも勘案して、総合的に判断されることになります。


実態を重視して判断する


 業務委託契約が適当かどうかを具体的に判断するにあたっては、労働者性を判断する法令解釈をもとにすると、次のような要素に整理されるものといえるでしょう。

  1. 仕事の依頼や業務従事の指示などに対して諾否の自由があること
  2. 業務を遂行する上で指揮命令を受けていないこと
  3. 勤務する場所や時間が指定され、管理されていないこと 業務の性質や安全を確保する必要などから、必然的に勤務する場所や時間が指定される場合 もあるので、その指定が業務の性質などによるものか、業務の遂行を指揮命令する必要によるもの かを見極める必要があります。
  4. 報酬が使用者の指揮監督の下に一定時間労務を提供していることへの対価ではないこと

 このほか、業務の実態などケースバイケースで、報酬の額(同種の業務に従事する労働者より高額であること)や専属の度合い(他社業務に従事することが制約されないこと)なども補足的に判断の要素とされることがあります。


5.参考資料 (改正安衛法とリスクアセスメント)

 安衛法改正によって、一定の化学物質についてリスクアセスメントの実施が事業者の義務となり、これが6月1日から施行されます。
 最近リスクアセスメントという言葉はよく聞かれるようになってきていますが、対象が化学物質で、それも640物質もあるので、うまく実施できるか心配されている会社も多いのではないかと思います。そこで、今回はこの化学物質に対するリスクアセスメントのポイントを見ていきたいと思います。

リスクアセスメントとその実施者


 リスクアセスメントとは、化学物質やその製剤の持つ危険性や有害性を特定し、それによる労働者への危険または健康障害を生じるおそれの程度を見積り、リスクの低減対策を検討することをいいます。ここで実施を義務づけられているのは、業種や事業場規模にかかわらず、対象となる化学物質の製造・取扱いを行うすべての事業場です。したがって、製造業や建設業だけでなく清掃業や飲食店、病院、介護施設などでも該当する物質を使用していればリスクアセスメントを行わなければなりません。


640物質の確認


 自分のところで使っている製品に対象物質が含まれているかどうかの確認が、今回の重要ポイントと言ってよいと思います。対象は、安全データシート(SDS)の交付義務の対象である640物質です。

 この640物質については、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」で公開されていますので、検索すれば確認ができます。


リスクアセスメントの基本的な手順


 リスクアセスメントの基本的な手順は、以下のとおりです。

  1. 化学物質などによる危険性または有害性の特定
  2. 特定した全ての危険性または有害性についてのリスクの見積り
  3. 見積りに基づきリスク低減措置の内容の検討
  4. リスク低減措置の実施
  5. リスクアセスメント結果の労働者への周知

危険性または有害性の特定


 化学物質を使用する作業を洗い出した上で、SDSに記載されているGHS(化学品の危険有害性を世界的に統一された一定の基準に従って分類し、絵表示等を用いて分かりやすく表示したもの)などに即して危険性又は有害性を特定していきます。


リスクの見積もり


 ここでは、 a対象物が労働者に危険を及ぼし、または健康障害を生ずるおそれの程度(発生可能性)と危険または健康障害の程度(重篤度)を考慮する方法、 b労働者が対象物にさらされる程度(ばく露濃度など)とこの対象物の有害性の程度を考慮する方法、 c aまたはbに準じる方法がありますが、このいずれかの方法またはこれらの方法の併用によってリスクの見積りを行います。



6.参考資料 (6割が「従業員・家族のマイナンバー取得・管理が課題」と回答)


7.参考資料  (被扶養者資格の再確認)