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メールマガジン2016年08月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2016年08月 Vol.91

1.人事・総務ニュース

介護休業の取得要件を明確化へ  ~ 判断基準を「要介護2以上」などに ~


 厚生労働省に設置された有識者研究会は7月8日、来年1月から介護休業の取得要件を明確にするための報告書(案)をまとめました。

  現在の介護休業を取得できる判断基準は、「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」にある対象家族を介護するためとされ、介護保険の要介護2~3程度と考えられています。

 研究会では、介護保険制度との整合性、一般の労働者・事業主による判断の容易さという観点から、①介護保険の要介護2以上の認定を受けていることを基準として、②歩行や排泄、衣類の着脱など、必要な介護の状態12項目をそれぞれ、1(自分でできる)、2(一部介助が必要)、3(全面介助)に区分し、12項目のうち「2が2つ以上」または「3が1つ以上」該当し、かつその状態が継続すると認められること、の2つの判断基準とすることを示しています。

 また、介護を受ける家族が要介護認定を受ける前に介護休業制度等の利用を申し出る場合などは、②の基準を用いて判断するとしています。

過労死等の労災申請が増加   ~ 27年度「過労死等の労災補償状況」 ~


 厚生労働省はこのほど、平成27年度の「過労死等の労災補償状況」を公表しました。

 それによると、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患の労災請求件数は795件で、前年度と比べ32件(4.2%)増加。このうち、労災認定されたのは251件で、同26件(9.4%)減少しています。また、仕事による強いストレスなどが原因で発症した精神障害の労災請求件数は1,515件で、前年度と比べ59件(4.1%)増加。このうち、労災認定されたのは472件で、同25件(5.0%)減少しています。

 発症原因とみられる出来事別の支給決定件数は、多い順に「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が75件、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」 が60件となっています。



最高裁が労災と認定  ~ 歓送迎会後に事故死 ~


 会社の歓送迎会に参加後、残業のため車を運転して職場へ戻る途中に交通事故で死亡した男性の労災認定をめぐる訴訟で最高裁第2小法廷は7月8日、「労災に当たる」として1、2審判決を破棄。その上で、労災認定せず遺族補償給付を不支給とした労働基準監督署長の処分を取り消しました。

 男性は福岡県内の会社に勤務していましたが、2010年12月、居酒屋で開かれた中国人研修生の歓送迎会に残業を中断して参加。飲酒はせず、残業に戻る前に研修生を車で住居先に送る途中、衝突事故で死亡しました。

 判決では、男性が上司の意向で歓送迎会に参加せざるを得なかったことや、会社の経費が使われていたことなどから、会が「事業活動に密接に関わっていた」と指摘。その上で、「男性は事故の際も会社の支配下にあった」と判断しました。



2.社会保険ワンポイント・ゼミナール(同一月に資格を取得・喪失した場合の厚生年保険料の扱い )


保険料の徴収


  毎月の給与にかかる厚生年および健康保険の保険料は月単位で計算・徴収され、被保険者資格 を取得した日の属する月から資格を喪失した日(退職の場合は退職日の翌日)の属する月の前月分 まで納める必要があります。

 入社(資格取得)した日が月の途中であっても、その月の分として1ヵ月分の保険料がかかりま す。また、喪失する場合、たとえば、月の末日に退職した場合は、翌月の1日が資格喪失日となり ますので、退職した月分までの保険料がかかります。しかし、月の途中(末日以外)で退職した場 合は、資格喪失日はその月のいずれかの日になるので、その月の保険料は納める必要がありませ ん。


同じ月に取得・喪失した場合


  同じ月に入社と退職をして、被保険者資格の取得日、喪失日が同じ月にある場合は、原則とし て、その月1ヵ月分の保険料の納付が必要となります。

  ただし、厚生年の被保険者資格を取得した月にその資格を喪失し、さらにその月に国民年の 被保険者(第2号被保険者は除きます)資格を取得した場合には、厚生年保険料の納付は不要と なります(この取り扱いは平成27年10月1日からです)。

 退職後に国民年の第1号被保険者(無職、自営業者など)になる場合は、その月は国民年保険 料だけを納めることになり、退職後に第3号被保険者になるケ-スでは、その月の国民年保険料 もかかりません。

 この場合、該当する被保険者が国民年に加入したことを年事務所が確認した後に、在籍してい た事業所あてに厚生年保険料の還付についてのお知らせが送付されることになっています。

  なお、第1号被保険者になる場合は本人が手続きをし、第3号被保険者になる場合は配偶者の所属 する事業所を通して手続きをしなければなりませんので、この手続きが済むまでは還付の通知はあ りません。

 還付されるのは該当する月にかかる厚生年保険料(被保険者負担分と事業主負担分の合計額)で すので、すでに退職した被保険者から徴収していた場合は、それを本人に返すことが必要となりま す。


健康保険料の扱い


  この取り扱いは厚生年保険料に関してだけですので、同じ月に資格を取得、喪失した健康保険 の被保険者が、さらにその月に国民健康保険に加入する場合は、すでに健康保険料が徴収されてい る場合であっても、それが還付されることはありません。



3.参考資料 (5割超の中小企業で人手不足 )

 このほど日本商工会議所が発表した「人手不足等への対応に関する調査」によると、調査対象 (2,405社)の中小企業のうち、今春、「人手が不足している」と回答したのは55.6%と前年調査よ り5.3ポイント上昇し、人手不足感が強まっていることが分かりました。

人手不足の状況


 全体では、55.6%と半数以上の企業で人手が「不足している」と回答。前年調査よりも「不足して いる」と回答した割合が5.3ポイント上昇しています。

 業種別では、「宿泊・飲食業」の不足感が最も高く、79.8%の企業が「不足している」と回答。次 いで「介護・看護」(77.5%)、「運輸業」(72.3%)、「建設業」(63.3%)などとなっており、その他の 業種においても人手不足の状況が高まっています。(下図参照)

  また、従業員の規模でみると、「6~10人」および「51~100人」の企業で、前年調査と比較して 10ポイント以上人手不足感が高まっています。


求める人材


 求める人材(複数回答)としては、「一定のキャリアを積んだミドル人材」が69.0%で最も高く、 次いで「高校卒業新卒社員」41.2%、「大学卒業新卒社員」33.0%、「管理職経験者等のシニア人 材」15.2%などとなっています。

  また、すべての業種で「一定のキャリアを積んだミドル人材」が最高値となっており、「介護・看 護」(80.6%)、「融・保険・不動産業」(77.3%)、「建設業」(75.3%)などとなっています。


女性の活躍推進


 「実施している」(40.0%)と「実施を検討してい る」(21.5%)を合計すると、61.5%の企業で女性の活躍 推進について対応を講じています。

 業種別にみると、「介護・看護」(77.5%)で最も「実 施している」割合が高く、次いで「情報通信・ 情報サービス業」(59.6%)、「融・保険・不動産業」 (55.1%)、「宿泊・飲食業」(50.4%)などとなってい ます。

  また、女性の活躍を推進する上での課題(複数回 答)としては、「女性の職域が限定されている」 (38.6%)が最も高く、次いで「女性の応募が少ない (女性社員が少ない)」(31.7%)と続きます。

  一方、「女性が管理職登用を望んでいない」 (23.0%)といった項目もあり、女性社員の意識も課題 となっています。


65歳超の雇用延長

  現在、65歳超を雇用している企業は70.1%となっています。 一方、「すでに65歳超の者を雇用しているが、義務化は反対」(30.1%)、「65歳までは雇用できる が、それ以上の対応は難しい」(27.1%)といった意見の合計は57.2%となり、一律の雇用延長には慎 重な対応が求められる結果となりました。

 また、65歳超まで雇用できない理由(複数回答)としては、「本人の体力的な面で難しい」 (66.5%)が最も高く、次いで「若い年齢層の採用の阻害になる」(47.6%)、「生産性が低下する」 (37.3%)などとなっています。



ICT(情報通信技術)の活用

 ICT(*)化に向けた取組みについて、59.7%の企業が実施しています。 業種別にみると、「情報通信・情報サービス業」(85.1%)、「融・保険・不動産業」(79.6%) で取組みが進んでいる一方、「運輸業」、「宿泊・飲食業」、「製造業」では取組みが進んでいな い割合が高い結果となりました。

 *顧客情報をデーベース化したり、出退勤の管理や給与計算のシステムを一元化したりする取 組み

長時間労働の削減に向けた取り組み

  長時間労働削減に向けた取組みは、 73.8%の企業が実施しています。

  業種別にみると、「融・保険・不動産 業」では85.7%の企業が取り組んでいる のに対して、「建設業」では66.3%と なっており、業種の違いによって差が顕 著です。

 また、長時間労働削減に向けた取組み が進まない理由(複数回答)としては、 「仕事に偏りがあるため」(35.2%)、 「業種・業界特性からの外部要因」 (34.9%)が高い結果となりました。


「同一労働賃」について

  賃を決定する際に考慮する項目(複数回答)として「合理性がある」と考えられるものとして は、「責任」(76.9%)、「本人の生産性」(76.7%)が高い結果となりました

  一方、労使紛争で賃差の理由を求められた場合、「立証が難しい」と考えられる項目(同)につ いては、「本人の生産性」(47.0%)が最も高く、次いで「将来の役割への期待」(43.3%)、「責任」 (37.5%)と続きます。「合理性がある」と考えるものの、「立証が難しい」と思われる項目が重なっ ています。



4.労務管理(トラブル回避の対応術)

 出勤停止中の無給は問題になるか ?
 当社は現在、就業規則の見直しをしています。懲戒の種類に「出勤停止」を新しく設けることを 検討していますが、出勤停止期間は無給と決めても問題はないでしょうか。また、すでに設けてあ る「減給」との関連はどうなるのでしょうか?

出勤停止中の賃金

 出勤停止とは、労働基準法には定めがありませんが、一般的に就業規則上の職務規律違反などに 対する制裁として、対象となる労働者との労働契約を存続させながら、その就労を一定期間禁止す ることをいいます。

 就業規則に、出勤停止およびその期間中の賃を支払わないことが定めてある場合には、労働者 がその出勤停止の処分を受けることになり、出勤停止期間中の賃が受けられないことは、制裁と しての出勤停止の当然の結果であるものと認められています。

 しかし、その期間の長さについては、「公序良俗」(民法第90条)の見地から、規律違反事案の 情状の程度などにより制限があり、不当に長期になるものは認められないとされています。


減給の制裁


 一方、減給の制裁については労働基準法(第91条)に定めがあり、「減給は、1回の額が平均賃 の1日分の半額を超え、総額が一賃支払期における賃の総額の10分の1を超えてはならない」 と、減額の幅には上限が設けられています。

 減給は、対象となった労働者が実際に就労している場合に労務の対償として支払われる賃に対 して行われる制裁措置ですので、一定の制限があります。しかし、出勤停止は、労働者が就労せ ず、もともと労務の提供に対して支払うべき賃が発生しないので、労基法の減給制裁の規定には 関係ないものとされています。


制裁の二重適用は禁止


 憲法には二重処罰の禁止が定められています。これは、一度ある犯罪として処罰された行為を、 さらに別の罪にも当たるとして処罰してはならない、という原則のことです。

 企業内での制裁についても、この原則が成り立つという考えから、同一の違反事案に対して、複 数の制裁処分を行うことは認められません。したがって、減給をしたうえで、さらに出勤停止の処 分を行うことがないように注意しなければなりません。

  また、制裁の処分は社会通念上からも相当でなければならないとされています。初めての軽微な 違反は「訓戒」などにとどめ、同じ違反を繰り返す場合などに、再度の違反防止と強く反省を求める ため、減給、出勤停止などの制裁処分を課すなど、その適用に関しても就業規則に定めておくこと が望ましいでしょう。



5.参考資料 (衛生委員会の役割 )


注目されている衛生委員会


 昨今、衛生委員会は注目を浴びる存在になっています。昨年12月から施行されているストレス チェックにおいても、衛生委員会はストレスチェックの実施体制、実施方法、受検の有無の情報の 取扱い、結果の記録の保存方法等を審議することとされていますが、これは、ストレスチェックを 実施していく上で根幹的事項と言えます。

 また、厚生労働省が最も力を入れている施策の一つである過重労働対策についても、衛生委員会 の重要な調査審議事項とされています。

 さらに、大阪市内の印刷会社で労働者らに胆管がんが多発した問題で、会社に衛生委員会が設置 されていれば、胆管がんの発症を早期に把握できていた可能性があるという批判がされ、この問題 を通して衛生委員会の存在が改めてクローズアップされたところです。

 このように注目されている衛生委員会は、心身の健康問題が多く取り上げられる今の時代、その 存在意義がより増している状況にあると思われます。ただ、そのような状況になっている衛生委員 会も、まず設置されていること、そして、その役割をしっかり果たしていることが重要ですので、 今回は、改めて設置基準や役割について見てみたいと思います。


【設置の基準】

  衛生委員会は、常時使用する労働者が50人以上の事業場に設置しなければなりません。安全委員 会と異なり、この要件があてはまる全ての業種に設置義務があります。

【委員の構成】

 衛生委員会のメンバーは、①総括安全衛生管理者またはそれ以外の者で、当該事業場において事 業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者1名(議長)、②衛生管理者、③産業医、④労働 者(衛生に関する経験を有する者)とされています。ただし、①以外の委員の半数については、労働 者の過半数で組織する労働組合(無い場合には労働者の過半数代表)の推薦に基づいて指名しなけれ ばならないとされています。

【主な役割一調査審議事項】

①衛生に関する規程の作成に関すること。
②衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。
③衛生教育の実施計画の作成に関すること。
④定期健康診断等の結果に対する対策の樹立に関すること。
⑤長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
⑥労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。

【開催回数等】

 衛生委員会は毎月1回以上開催することとされ、委員会における議事の概要を労働者に周知し、 議事録は3年間保存する必要があるとされています。


実効ある存在に

 以上見てきたとおり、衛生委員会は、労働者が心身の健康を保つために重要な役割を持っていま す。ですので、設置するだけではなく、その役割となっている調査審議を実施実行して、その存在 を実効あるものにしていくことが望まれます。


6.参考資料 (生産性向上には「従業員の能力向上」が不可欠 )

 「経営者の労働実態」と「生産性向上に向けた取り組み」をテーマに、大同生命保険株式会社が 中小企業経営者4,000人を対象に行ったアンケート調査の結果をご紹介します。

7.参考資料  (マタハラ防止に向けた新指針案を提示 )


  労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)の雇用均等分科会において6月27日、改正育児・介護休業法および男女雇用機会均等法に関する告示案要綱および指針案要綱が示されました。

 今回は、職場において妊娠・出産などに関するマニティーハラスメント(マハラ)、および育児休業に対するハラスメントの防止に向けて、事業主が取り組むべき措置について新たな指針案や、セクハラに関して雇用管理上講ずべき措置についての指針を改正する告示案が示されています。

 マハラ防止に向けた指針案では、①ハラスメントの内容、②妊娠、出産等に関する否定的な言動が妊娠、出産等に関するハラスメントの背景等となり得ること、③妊娠、出産等に関するハラスメントがあってはならない旨の方針、④妊娠、出産等に関する制度等の利用ができる旨を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発することなどを事業主が行うべき措置として示しています。

 さらに、マハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則などの文書に明確に定めることや、被害者の相談窓口を定めるなど適切に対応するために必要な体制を整備することを求めています。

 セクハラに関して雇用管理上講ずべき措置についての指針を改正する告示案では、セクハラの対象者について、「被害を受けた者の性的指向または性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となることを明示すること」としています。

 これにより、同性愛者や性同一障害を持つ人など、いわゆる「性的少数者」も含まれることが明確化されることになります。 厚生労働省は、来年1月1日の改正法の施行に向け、指針などを正式に示すことにしています。