1. 東京都千代田区・社会保険労務士法人ACROSEED
  2. メールマガジン
  3. メールマガジン2017年03月号

メールマガジン2017年03月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2017年03月 Vol.98

1.人事・総務ニュース

雇用保険法等の改正案を国会に提出


  育児休業給付の支給を、最大で現行の1歳6ヵ月から2歳まで延長するほか、失業等給付に係る保険料 率を引き下げることなどを主な内容とした「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が1月31日、国会に提出されました。



協会けんぽ、健康保険料を決定


 全国健康保険協会は、平成29年3月分(4月納付分)から適用される都道府県(支部)ごとの健康保険の保険料率を決定しました。保険料率が改定されるのは44の支部で、そのうち、引き上げが24支部、引き下げが 20支部となっていて、3支部では据え置かれました。これにより、保険料率の全国平均は改定前と同じ10%と なっています。

 なお、介護保険料率は、従来の1.58%から1.65%に変更となります。



時間外労働の新規制、罰則付きで導入へ

 政府の「働き方改革実現会議」は2月1日、残業による長時間労働の抑制策について、本格的な議論を開始しました。

  並行して行われている厚生労働省の有識者検討会では、労働基準法に基づく時間外労働に関する協定(いわゆる「三六協定」)について、通常の延長時間は、ほぼすべての企業で限度基準告示(月45時間、年360時 間など)の範囲内に収まっている一方で、一部には、特別条項(*)がある場合の延長時間が月100時間を超えるものも見受けられ、長時間労働の歯止めとして十分機能していない、という指摘があります。

  こうしたことなどを受けて政府は、時間外労働の上限について、月60時間、年720時間としたうえ、繁忙期は 一時的に月100時間まで認めるほか、この上限時間を超えた場合の罰則を設ける方針を固めました。政府は、抑制策を3月末までにまとめる実行計画に盛り込み、労働基準法改正案を国会に提出するとしています が、繁忙期に過労死ラインとされる月80時間を超える時間外労働を容認することに対して、取りまとめに向けた調整が難航することも予想されています。

  (*)労使で合意すれば、年6回まで通常の延長時間の上限を超えられるもの




2.社会保険ワンポイント・ゼミナール(海外に赴任する介護保険の適用はどうなるか )


介護保険の被保険者


 介護保険制度は、保険料を主な財源として、介護が必要な人が適切な介護サービスを受けられるように支えるしくみをいいます。

 介護保険の被保険者は、国内の市区町村に住所を有する65歳以上の人(第1号被保険者)と、40歳以上65歳未満の医療保険加入者(第2号被保険者)に分けられます。第1号被保険者は、原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることができ、第2号被保険者は、加齢に伴う疾病 (特定疾病)が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。

 職場で健康保険に加入する第2号被保険者の介護保険料は、健康保険の保険料と一体的に徴収され、原則として、被保険者と事業主で2分の1ずつ負担することになっています。




国外居住者の適用除外

 介護保険の運営主体(保険者)となっているのは、市町村および特別区です。その介護保険に加入する被保険者は、国内の市区町村に住所を有する人ですので、被保険者が国内の市区町村に住所を有しなくなった場合は、介護保険の適用が除外され、介護保険料の負担もなくなります。

  職場の健康保険と同時に介護保険に加入している被保険者が海外赴任となり、日本国内から外国へ転居した場合には、事業主を通じて健康保険の保険者(協会けんぽ加入者は日本年機構)に「介護保険適用除外等該当届(*)」を提出します。この場合、国外に転居したことが証明できる書類(住民票の除票)を添付することが必要です。

 反対に、海外赴任で外国に居住していた人が日本に戻って国内に居住するようになり、職場の健康保険と同時に介護保険の被保険者に該当することになる場合は、「介護保険適用除外等非該当届(*)」を提出する必要があります。 (*)名称は保険者によって異なる場合があります。



介護保険料の扱い

 前記の届出により、国外に居住していた期間は、介護保険料(本人および事業主負担分)は徴収されません。ただし、健康保険組合に加入の場合、組合独自の規約によって、介護保険の被保険者が海外に赴任し、 居住したときでも、その人の被扶養者(40歳以上65歳未満)が引き続き国内に居住する場合には、海外赴任した人を特定被保険者として介護保険料を徴収し続けることがあります。

3.参考資料 (実質賃金、5年ぶりのプラス )

 厚生労働省が2月6日に発表した「毎月勤労統計調査」(速報、常用労働者5人以上の事業所が対象)によ ると、平成28年のパートを含む労働者1人1ヵ月平均の現給与総額は前年比0.5%増の31万5,372円と3 年連続で増加。また、物価の影響を除いた実質賃金は0.7%増で、5年ぶりにプラスとなったことが分かりまし た。なお、速報値は確報で改訂される場合があります。

賃金


 1人平均の月間現給与総額は、労働者5人以上の事業所(以下すべての項目で同規模)で前年比0.5%増の 31万5,372円。実質賃金は0.7%増となりました

 現給与総額のうち、きまって支給する給与は0.2%増の25万9,735円(所定内給与が0.2%増の24万267円、 所定外給与が0.6%減の1万9,468円)で、特別に支払われた給与は2.0%増の5万5,637円でした。

  また、現給与総額を就業形態別にみると、一般労働者は0.8%増の41万1,788円、パートタイム労働者は 0.1%減の9万7,670円となりました(次ページの上表参照)。なお、パートタイム労働者の所定内給与を時給に換算 (所定内給与を所定内労働時間で除して算出)すると1,085円で、平成5年の調査開始以来、最高の水準となりま した。

労働時間


 1人平均の月間総実労働時間は、前年比 0.6%減の143.7時間となりました。

 総実労働時間のうち、所定内労働時間は0.4%減の132.9時間、所定外労働時間は1.6% 減の10.8時間でした。なお、月間の時間数を12倍して年換算すると、総実労働時間は1,724時間(所定内労働時間が1,595時間、所定外労働時間が129時間)となりました。

  また、総実労働時間を就業形態別にみると、 一般労働者は0.1%減の168.6時間、パートタイム労働者は1.7%減の87.5時間となりました。

雇 用


 常用労働者は、前年比2.1%増の4,876万6,000人で、このうち、一般労働者は1.8%増の3,379万3,000人、 パートタイム労働者は2.9%増の1,497万2,000人となりました。





4.労務管理(トラブル回避の対応術)

 懲戒での降格によって賃を下げることはできるのか
Q .当社の賃制度では、格付け等級に応じて基本給が決まるしくみを取り入れています。
  現在、社内でトラブルを引き起こした社員の懲戒事案があり、現等級での能力不足や職責が果たされていないこともあるので、今回の処分としては降格を検討しています。それに伴い基本給も1割以上引き下げることになりますが、法律上問題はあるでしょうか?

減給の制裁

 労働基準法(第91条)では、職場規律違反などの制裁(懲戒)による賃の減額について、「減給は、1回の額が平均賃の1日分の半額を超え、総額が一賃支払期における賃の総額の10分の1を超えてはならない」として、減額に対する規制が設けられています。

 一般的に、減給は対象となった労働者が実際に就労している場合に労務の対償として支払われる賃に対して行われる制裁措置とされています。

 一方、賃には全額払いの原則(労基法第24条1項)がありますので、制裁とはいえ労務の対償として労働者が得られる賃を減額することに対しては厳格な規制があるわけです。


降格に伴う減額


 制裁の処分を行う場合は、就業規則に制裁事由と処分の内容が明記されていて、その定めに基づいていることが前提となります。今回のケースのように、降格により賃(基本給)が減額となる場合も考えられますが、労基法上の減給の規制に違反するかどうかについて、賃制度で降格により賃が変更になることが明確となっているかどうかが、判断のポイントとなります。職能等級などにより基本給表を定めていたり、社内の格付けや職務・職制に連動した額の手当を支給している場合、能力不足や職責を果たしていないなどの理由でその格付けとしては不適格であるという判断での降格であれば、使用者は人事権を行使したことになります。

 したがって、降格に伴う賃(基本給や手当)の低下は、その労働者の職務や職能等級の変更に伴う当然の結果であるので、制裁規制に違反するものではないとされています。つまり、この場合は賃の「減額」ではなく、「変更」にすぎないことになります。


懲戒の権利濫用


  一方で、労働契約法(第15条)では、使用者が労働者を懲戒(制裁)することができる場合において、「労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」としています。

  このことから、人事権の行使としてではなく、懲戒処分としての降格であれば、労働契約法の懲戒権の濫用法理により規制の対象となります。 したがって、権利の濫用だと認められれば、降格自体が無効となることも考えられます。



5.参考資料 (仕事と介護の両立支援 )


介護離職の現状等

 総務省の「就業構造基本調査」(平成24年)によると、平成23年10月~24年9月の1年間だけでも、介護等 を理由に離職した人が10万人以上という結果が出ています。そして今後、要介護者を支えなければならない 就業者(15~64歳の世代)が急増することも予想されています

  この様な状況を受けて、平成29年1月、特に介護休業について大幅に改正された改正育児・介護休業法が 施行されました。

 育児と介護の両立を支援する上で、次のような課題の違いがあります。子育てには子供の小学校入学・卒業 といった区切りのタイミングがある一方、親の介護は何年必要になるか終わりが見えないことも多く、就業者に とって、今後の見通しが立てにくいことが挙げられます。また、自分の親の介護が必要になる頃には、本人は 40~50歳代の中堅・管理職クラスの社員であることが多く、仕事と介護の両立が困難になる場合も予想され ます。


介護に直面している従業員への支援

 厚労省の「企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル」(平成28年)では、企業に求められる従業 員の仕事と介護の両立支援への具体的な取り組み方法を紹介しています。その中で、介護に直面した従業 員への支援として以下6項目が挙げられています。

  1. 相談窓口での両立課題の共有
    両立する上での課題を、従業員本人と共に整理します。

  2. 企業の仕事と介護の両立支援制度の手続き等の周知
    自社の両立支援制度について、具体的な利用方法や手続きをアドバイスします。特に、介護休業は復帰後の準備期間としてうまく利用してもらえるよう伝えます。

  3. 働き方の調整
    休業や休暇を取るだけでなく、残業の削減や、変形労働時間制の導入、在宅勤務制度の活用、就労時間 帯の調整等働き方を検討した上で、仕事の分担や役割について見直します。

  4. 職場内の理解の醸成
    両立するためには、職場の上司や同僚に理解を得て、サポート体制を作ることも重要です。

  5. 上司や人事による継続的な心身の状態の確認
    介護は長期にわたる可能性があります。人事や上司が継続的に見守り、両立の状況について確認すること が重要です。

  6. 社内外のネットワーク作り
    働きながら介護をする人たちは、地域などのネットワークに参加できる機会が少なくなりがちですので、企業がサポートすることも有効です。

助けあえることを伝えましょう


  仕事と介護の両立は、従業員個人だけで解決できるものではありません。人事担当者は、気軽に相談できる 環境を作り、介護保険制度や自治体、民間の介護サービス等の情報を提供するなど、頼れるところに頼ること も必要であることを伝えましょう。

 従業員が充実した職業生活を送ることができるよう支援して行くことで、会社全体が助け合える職場へ変わることが両立支援の一歩になるのではないでしょうか。



6.参考資料 (日本企業への課題 「労働生産性の向上」 )


 中小企業庁が発表したOECD「Productivity Database」によると、日本の労働生産性はベルギー、アイルランド、アメリカ、フランスと比べて約70%となっており、ルクセンブルグ、ノルウェーについては50%近くにも落ち込みます。この結果には根性、職人気質、品質へのこだわりなどの日本特有の考え方も関係しているかもしれませんが、今後の労働力人口の減少を考慮すると、労働生産性の向上はすべての日本企業にとって重要な課題となりつつあります。

 当然、最小の労働時間と人員で最大の効果を上げることが求められ、今後はより一層、①付加価値の向上、②効率の向上の2つの課題に取り組んでいかなければなりません。


  優秀な人材の採用、効率的な教育制度、残業の抑制、コア業務以外のアウトソーシング化など、打つ手は無限に考えられますが、一部署だけで対応できる課題は少なく、今後は全社をあげた取り組みがより強く求められていくのではないでしょうか。