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メールマガジン2017年04月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2017年04月 Vol.99

1.人事・総務ニュース

転勤の際の配慮や説明を企業に求める ~「転勤に関する雇用管理のポイント」策定へ~


  厚生労働省は2月22日、企業が従業員を転勤させる際のガイドラインとなる「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」の策定に向けた3回目の研究会を開催しました。

  この研究会では、育児や介護をしながら働く人が、仕事と家庭生活との両立をしやすい職場を後押しするために、転勤に関する実態調査の結果や、企業からのヒアリングなどをもとにして検討が行われました。

  また、転勤が本当に必要かどうか検証して転勤者を絞り込んだり、応じる従業員への待遇の上乗せを促したりするなどのほか、従業員が生活の本拠を置く場所に配慮して行うことや、転勤の時期や頻度を従業員に分かりやすく明示するよう企業に求めることなども示されています。

  厚生労働省では、早期にガイドラインを策定して、企業が人事方針を見直す際の参考にしてもらうため、その周知を行う方針です。



今後3年間で「正社員を増やす」が過半数 ~企業行動に関するアンケート調査~


 内閣府がこのほど公表した「企業行動に関するアンケート調査」によると、中堅・中小企業で今後3年間(平成29~31年度の平均)に雇用者を増やす見通しの企業の割合(全産業)は58.3%で、雇用者のうち、正社員・正職員を増やす見通しの企業の割合(全産業)は58.4%となっています。

  過去3年間(平成26~28年度の平均)の実績と比較すると、雇用者を増やす企業の割合はプラス5.8ポイント、雇用者のうち、正社員・正職員を増やす企業の割合はプラス6ポイントと、見通しながらいずれも増加しています。

  また、業界需要の実質成長率(予想回答)については、「次年度」(平成29年度)では0.8%、「今後3年間」では0.9%、「今後5年間」でも0.8%のプラス成長の見通しとなっています。



残業代控除「無効とは言えない」 ~タクシー会社の賃金規則に最高裁が判断~


 稼いだ分の歩合給から残業代が控除される会社の賃金規則は違法だとして、東京のタクシー会社の運転手と元運転手計14人が、平成22年から24年までの未払い賃金の支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷は2月28日、「(賃金規則は)無効だとはいえない」と指摘し、無効とした二審判決を破棄、審理を東京高裁に差し戻しました。

 同社の賃金規則は、残業手当や深夜手当、休日手当、交通費と同額を歩合給から差し引くというしくみで、会社側は「不必要な時間外労働を減らすためだ」と主張していましたが、会社側敗訴となった二審判決後にこの賃金規則を変更しています。

 タクシー会社などでみられるこうした賃金制度は、実質的には残業代が支払われないものだと、その違法性が指摘されていますが、今回の最高裁の判断は、労働基準法で定める時間外労働の割増賃金の在り方に一石を投じた結果となりました。



2.社会保険ワンポイント・ゼミナール(高年齢雇用継続給付の「みなし賃金」とは)


高年齢雇用継続給付の受給要件


 雇用保険の高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の被保険者が、原則として、60歳時点の賃金額と比べて75%未満に低下した場合、申請により、各月に支払われた賃金の最大15%の給付金が支給されるものです。

 この高年齢雇用継続給付には、60歳を超えて継続雇用されている人を対象とした「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当などの受給中に再就職した人を対象とした「高年齢再就職給付金」の2種類があります。ここでは、「高年齢雇用継続基本給付金」について取り上げます。



支給額は

 給付金の支給額は、支給対象となる月ごとに、各月に支払われた賃金が60歳時点の賃金と比べてどのくらいの割合なのかによって決まります。この割合を「低下率」といいます。

  具体的には、低下率が61%以下の場合は、各月の賃金の15%相当の額となり、61%を超え75%未満の場合は、その低下率に応じて、賃金の15%相当額から一定の算式により減じられた額となり、75%以上では給付金は支給されません。

 なお、賃金が支給限度額(*)以上のときは、給付金は支給されず、賃金額と給付金として算定された額の合計が支給限度額を超えるときは、支給限度額と賃金額との差額が支給されます。

 (*)毎年8月1日を基準に改定され、平成28年8月1日からは「33万9,560円」

「みなし賃金」とは


 低下率をみる際の「各月に支払われた賃金」とは、その月に実際に支払われた賃金のことをいいますが、その賃金が一定の理由で減額されて支給された場合は、その減額された分を加算した賃金額を用いて賃金の低下率が判断されます。この賃金額を「みなし賃金額」といいます。

 各月に支払われた賃金が減額された理由の中には、被保険者本人や事業主に責任がある場合(本人の都合による欠勤、事業所の休業等)など、雇用保険により給付がなされることが適切でない場合も考えられます。みなし賃金を用いるのは、こうした理由により賃金の減額があった場合には、その減額された額が支払われたものとして賃金の低下率を判断することが適当であるためです。



3.参考資料 (男女間の賃金格差、最小に ~平成28年賃金構造基本統計調査~)

 このほど厚生労働省が発表した「賃金構造基本統計調査」によると、昨年のフルタイムで働く女性の賃金(6月分の所定内給与額)は、前年に比べて1.1%増の24万4,600円と3年連続で過去最高を更新し、男女間の賃金格差は過去最小となったことが分かりました。
 この調査は常用労働者10人以上の約5万事業所を対象に行われました。

一般労働者の賃金


1.賃金、前年比

 平成28年の賃金は、男女計30万4,000円。性別では、男性が33万5,200円、女性が24万4,600円で、前年と比べると、男女計および男性は0.0%と同水準、女性は1.1%増加となっています。また、男性の賃金を100とすると、女性の賃金は73.0で、男女間の賃金格差は過去最小となっています。


2.学歴別にみた賃金

   男性は大学・大学院卒39万9,700円(前年比0.7%減)、高専・短大卒30万6,300円(同0.8%減)、高校卒28万8,100円(同0.0%)、女性は大学・大学院卒28万8,700円(前年比0.3%増)、高専・短大卒25万5,600円(同1.2%増)、高校卒20万8,300円(同0.3%増)となり、女性はすべての学歴で前年を上回っています

3.産業別にみた賃金

  男性は金融業、保険業(46万6,400円)、教育、学習支援業(43万5,000円)が高く、宿泊業、飲食サービス業(27万1,100円)が低くなっています。女性は電気・ガス・熱供給・水道業(32万7,000円)、教育、学習支援業(30万,200円)が高く、宿泊業、飲食サービス業(19万6,700円)が低くなっています。

4.企業規模別にみた賃金

 男性は大企業38万4,800円(前年比0.7%減)、中企業32万200円(同0.0%)、小企業29万900円(同0.8%増)、女性は大企業26万8,700円(前年比0.1%増)、中企業24万2,300円(同0.8%増)、小企業21万9,100円(同1.2%増)となり、男性は小企業が前年を上回り、女性はすべての企業規模で前年を上回っています。

  また、大企業の賃金を100とすると、中企業は男性83.2、女性90.2、小企業は男性75.6、女性81.5となっています。

5.雇用形態別の賃金

 男女計では、正社員32万1,700円(前年比0.2%増)、非正社員21万1,800円(同3.3%増)となっています。

 性別では、男性が正社員34万9,000円(前年比0.2%増)、非正社員23万5,400円(同2.7%増)、女性が正社員26万2,000円(前年比1.0%増)、非正社員18万8,600円(同4.2%増)となっています。

 また、正社員の賃金を100とすると、非正社員は男性67.4、女性72.0にとどまっています。



短時間労働者の賃金


 1時間当たりの賃金は、男性が1,134円(前年比1円増)、女性が1,054円(同22円増)で、いずれも過去最高となっています。

 これを産業別にみると、男性は学術研究、専門・技術サービス業(1,873円)が高く、宿泊業、飲食サービス業(968円)が低くなっています。

 女性は情報通信業(1,343円)が高く、宿泊業、飲食サービス業(943円)が低くなっています。




4.労務管理(トラブル回避の対応術)

 採用後の給与を求人条件から変更できるか?
Q .このたび正社員として内定した中途採用者の給与について、業務経験や担当させる業務などを考慮して、初任給は求人の際に提示していた金額を少し下回る額で決めようと考えています。
 給与を含めた労働条件通知書はこれから交付しますが、初任給のことは前もって話してはいません。求人条件の給与額を変更することは問題があるでしょうか?

労働条件の明示

 労働基準法(第15条)では、使用者は労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないとされており、決定した労働条件については、書面で明示することが義務付けられています。

 この条文でいう労働条件の明示とは、労働者個人に対するものです。求人情報誌やハローワークに掲載されている求人条件は、あくまでも募集の際に提示する労働条件の目安であって、労基法で定める労働条件の明示には該当しません。



労働契約の締結


 労働契約法では、労働契約は労働者と使用者の合意により成立するとしています。ここでいう労働契約とは、賃金などの個々の労働条件が含まれますので、労働契約はそれぞれが対等の立場における合意に基づいて締結し、または変更すべきものとされています。

 したがって、労働条件が応募や面接などの時点で決定しなくても、採用時までに示された労働条件で合意できれば、労働契約が成り立つことになります。

 しかし、職業安定法では、求人広告などにより労働者の募集を行う者は、賃金を含めた募集内容について誤解が生じないよう的確な表示に努めなければならないと定めています。無用なトラブルを避けるためにも、求人内容と実際の労働条件ができるだけ食い違うことがないようにすることが重要となります。

使用者の説明責任


 求職者が応募する動機において、具体的な求人条件のうち賃金に関する事項は、他の条件と比べて大きなウェイトを占めているのが通常だといえるでしょう。また、求職者は、少なくとも求人条件で示された賃金が受けられるものと信じて応募することは確かです。

  したがって、やむを得ない事情などにより求人条件の内容と実態が異なる場合、使用者は、労働契約締結の段階で、雇い入れ後の正確な労働条件を提示する信義則上の説明責任があるものとされています。

  労働契約法(第4条)では、使用者は労働者に提示する労働条件および労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにすることが定められています。今回のケースのように、求人条件よりも低い賃金額となる場合は、それを単に伝えるだけでなく、その理由などについても誠意をもって説明し、十分に理解を得ておくことが大切となるでしょう。



5.参考資料 (年休取得率48.7%、やや上昇 ~平成28年就労条件総合調査~ )

 このほど厚生労働省が発表した「就労条件総合調査」(平成28年1月1日現在、常用労働者30人以上の企業が対象)によると、平成27年の年次有給休暇の取得率は前年比1.1ポイント増の48.7%とわずかに上昇しましたが、平成32年までに取得率を70%に引き上げるという政府の目標からは程遠い結果となっています。


年次有給休暇の取得状況

 平成27年1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数は除く。)は、労働者1人平均18.1日(前年18.4日)。そのうち労働者が取得した日数は8.8日(同8.8日)、取得率は48.7%(同47.6%)で、男女別では、男性が8.4日(取得率45.8%)、女性が9.3日(同54.1%)となりました。

 なお、年次有給休暇を時間単位で取得できる制度かある企業は16.8%(前年16.2%)となりました。



時間外労働の割増賃金率等

 時間外労働の割増賃金率を「一律に定めている」企業は83.1%(前年80.3%)で、そのうち割増賃金率を「25%」とする企業は93.3%(同93.8%)、「26%以上」は6.1%(同6.1%)となりました。

 また、1ヵ月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めている企業は27.4%(前年25.7%)で、そのうち割増賃金率を「25~49%」とする企業は45.4%(同46.1%)、「50%以上」は53.4%(同53.2%)となりました。

 なお、割増賃金の支払いに代えて有給の休暇を付与する「代替休暇制度」がある企業は20.7%(同20.6%)となりました。



6.参考資料 (企業単独型の技能実習制度の活用 )

 最近は製造業を中心に、企業単独型の技能実習制度の活用が多くみられます。事業協同組合などが第一次受入機関となる団体受入型とは異なり、受入企業がすべて自社で技能実習生の入国から帰国に至るまでの管理監督を行うことが可能となります。

 そのため、他者の影響を受けることなく、自社の方針にのっとった独自の受入方法を確立できます。

 技能実習生の受入れにあたっては、自社の従業員20名につき技能実習生1名の割合で受入れが可能です。そのため、従業員100名の企業であれば1年間に5名までの受入れが可能となります。

  また、技能実習生の受入れは、技能実習1号で1年間、技能実習2号で2年間の合計3年間となっています。初年度で技能実習1号として5名を受け入れた場合、翌年はその5名が技能実習2号となるため、その枠を埋めるように新たに技能実習1号で5名を受入れることが可能となります。

 もともと技能実習制度は製造業などにおける日本の優れた技術を海外に移転するための制度ですが、最近では技術移転を行いながら日本流の働き方、仕事観を伝えるためにも活用されています。3年間の研修を修了した技能実習生は本国に帰り技術移転を行うことが原則とされていますが、企業によってはさらに高度な研修を行うために技能実習生を呼び戻し再研修を行う事例も見られます。

  海外に拠点をもつ製造業であれば、企業単独型の技能実習制度を活用する余地は十分に考えられますので、検討されてみてはいかがでしょうか。