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メールマガジン2017年05月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2017年05月 Vol.100

1.人事・総務ニュース

改正雇用保険法等が成立 ~保険料率引き下げ、育児休業を最長2歳に~


  雇用保険法など労働関係の4法を一括して改正する法律が3月31日、参院本会議で可決、成立しました。

  これにより、雇用保険の失業等給付に係る保険料率が平成29年度から時限的に引き下げられることや、失業等給付について、倒産・解雇などにより離職した30歳以上45歳未満の離職者の所定給付日数が4月から増加されることになりました。

  育児休業制度の改正では、原則子が1歳までの育児休業は、現行制度では保育所に入れない場合などに限り1歳6ヵ月まで延長できますが、平成29年10月1日からは、これをさらに6ヵ月延ばし最長で2歳まで可能にするとともに、育児休業給付の支給期間も2歳まで延長されます。

  また、ハローワークや職業紹介事業者への求人については、平成30年1月から、求人者が虚偽の条件で求人 申し込みをした場合には、罰則の対象とすることなども盛り込まれました。



遺族年金の男女差は「合憲」 ~最高裁が初の判断~


 公務災害と認められた公立中学の女性教諭の遺族補償年金をめぐって、夫を亡くした妻には年齢条件がなく、妻を亡くした夫には年齢条件を設けた規定が、憲法の「法の下の平等」に違反するかどうかが争われた訴訟で、最高裁は3月21日、「規定が合理的な理由を欠くとは言えない」として、合憲との判断を示し、夫の上告を棄却しました。

  業務を原因とする死亡に対して支給される遺族補償年金は、公務員(国家・地方)、民間労働者らについてそれぞれ定めた法律がありますが、配偶者が死亡した際、妻は自分の年齢に関係なく受け取れる一方で、夫は原則60歳以上(特例で55歳以上)であることを要件としています。原告の男性は、妻の死亡時に51歳であったことを理由に遺族補償年金が支給されませんでした。



冬のボーナス、わずかにダウン ~毎月勤労統計調査~


 厚生労働省が4月7日に発表した毎月勤労統計調査の特別集計結果によると、従業員が5人以上の事業所で支給された平成28年の年末賞与は1人平均37万162円で、前年に比べて0.1%減少したことが分かりました。

 主な産業についてみると、製造業が49万2,512円(前年比1.0%減)、卸売業・小売業が31万1,753円(同0.5% 減)、医療、福祉が30万5,077円(同0.7%増)などとなっています。

 なお、従業員が30人以上の事業所では、前年比0.8%増の42万8,786円となっています。



2.社会保険ワンポイント・ゼミナール(労災を健保で治療を受けたときの清算は)


療養の費用の請求


 労働者が業務上または通勤途中での災害が原因でケガなどを負ったときは、労災保険で療養(補償)給付を受けることになります。

 しかし、治療を受けた診療所や病院が労災指定医療機関でなかった場合、または誤って健康保険などを使ってしまい医療機関での清算ができなくなっている場合などは、いったん治療費の全額を負担することになります。(健康保険などを使ってしまった場合は、窓口で自己負担の3割分を支払い、残りの7割分は返還請求の通知が届いてから支払います。)

 この場合、あとで労災保険に「療養の費用」として負担相当額を請求し、現金での給付を受けることができます。

 このような清算方法は、本来は労災でまかなえるはずの治療費について、労働者自身でいったん立て替え 払いをしなければなりません。とくに、労災認定までに相当な時間を要したときなどは、その金額も大きくなってしまい、たいへんな負担となることがあります。



「労災」と「健保」の保険者間の調整

 そこで、今年2月に発せられた厚生労働省の通達により、こうした金銭面での負担を軽減するために、従来の方法に加えて別の方法でも調整が行われる仕組みが設けられました。

 この調整は、労災保険で療養の給付を受けるべきものを健康保険などから給付を受けた場合に、労災保険と健康保険などを運営するそれぞれの「保険者」の間で行われます。

 具体的な調整の方法は少し複雑ですので省きますが、健康保険などで治療を受け、費用の返還請求の通知を受けた労働者がしなければならないのは次のことです。

 1.所属する事業場を管轄する労働基準監督署に対して、療養の費用の支払先を健康保険などの保険者にしてもらうように申し出ます。(このとき、保険者から被災労働者の療養に係るレセプトを監督署が入手することについて、労働者の同意を得たことを証する書面に署名・捺印して提出します)

 2.労働基準監督署と健康保険などの保険者の間の調整するべき金額が確定した後に、自己負担した分の療養の費用を監督署に請求するように通知が届いたら、所定の請求書を監督署に提出します。(このとき、保険者から送付された返還通知書の原本、自己負担した分の領収書の原本、監督署長への委任状など、一定の書類を添えて提出します)

 こうすることで、健康保険などの保険者に療養の費用を返還することなく、医療機関の窓口で支払った自己負担相当額をあとで戻してもらえることになります。

 なお、従来の方法でも清算はできますので、労働者が労災保険適用の事案で健康保険などを使って治療を受けてしまった場合に、その費用の清算方法について、従来の方法と新しい方法のどちらを選択するかあらかじめ確認しておくとよいでしょう。



3.参考資料 (「能力開発費」は増加の見込み ~平成28年度能力開発基本調査~)

 厚生労働省の「平成28年度能力開発基本調査」(常用労働者30人以上の企業・事業所が対象)によると、企業が従業員の能力開発のために支出する費用(ここではOFF-JT費用)について、「今後3年間」の見込みと「過去3年間」の実績を比較すると、今後3年間は『増加予定』とする企業割合が高くなり、過去の実績に比べて正社員が12.6ポイント、非正社員が10.2ポイントそれぞれ増加したことが分かりました。

企業調査


1.能力開発の実績・見込み

  正社員に対する過去3年間(平成25~27年度)のOFF-JTに支出した費用の実績は、『増減なし』とする企業が35.2%、『増加した』が24.8%です。

 一方、非正社員に対する過去3年間(同)のOFF-JTに支出した費用の実績は、『増減なし』とする企業が30.3%、『増加した』が10.4%です。

 また、「今後3年間」の見込みと「過去3年間」の実績を比較すると、正社員、非正社員ともに今後3年間は『増加予定』とする企業割合が高くなり、正社員では37.4%、非正社員では20.6%となっています。(下図参照)

2.教育訓練のための費用

   企業が教育訓練に支出した費用の労働者1人当たり平均額をみると,OFF-JTは21,000円(平成27年度調査(以下「前回」という)17,000円),自己啓発支援は5,000円(同6,000円)となっています。

3.能力開発の考え方

《「全体重視」か「選抜重視」か》

 正社員に対する教育訓練について、「労働者全体の能力を高める教育訓練」を重視する企業は59.1%(前回58.6%)、「選抜した労働者の能力を高める教育訓練」は39.9%(同40.8%)です。

 一方、非正社員に対しては、「労働者全体の能力を高める教育訓練」を重視する企業は54.8%(前回53.2%)、「選抜した労働者の能力を高める教育訓練」は43.0%(同45.1%)です。

《「外部委託・アウトソーシング」か「社内」か》

 正社員に対する教育訓練の実施方法について、「社内」を重視する企業は61.8%(前回61.0%)、「外部委託・アウトソーシング」は37.1%(同38.2%)です。

 一方、非正社員に対しては、「社内」を重視する企業は74.3%(前回74.4%)、「外部委託・アウトソーシング」は23.6%(同23.7%)です。


事業所調査


1.教育訓練の実施状況

《OFF-JTの実施状況》

 正社員に対して、平成27年度にOFF-JTを実施した事業所は74.0%(前回72.0%)で、産業別では複合サービス事業(98.1%)、電気・ガス・熱供給・水道業(96.6%)で高く、生活関連サービス業、娯楽業(60.0%)、宿泊業、飲食サービス業(65.4%)で低くなっています。

 一方、非正社員に対してOFF-JTを実施した事業所は37.0%(前回36.6%)で、産業別では複合サービス事業(88.6%)、金融業、保険業(70.0%)で高く、生活関連サービス業、娯楽業(28.8%)、製造業(29.2%)で低くなっています。

《計画的なOJTの実施状況》

 正社員に対して、平成27年度に計画的なOJTを実施した事業所は59.6%(前回58.9%)で、産業別では複合サービス事業(93.4%)、電気・ガス・熱供給・水道業(92.3%)で高く、生活関連サービス業、娯楽業(52.3%)、卸売業、小売業(52.8%)で低くなっています。

 一方、非正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は30.3%(前回30.2%)で、産業別では複合サービス事業(78.3%)、医療、福祉(44.1%)で高く、情報通信業(15.6%)、建設業(16.5%)で低くなっています。

2.人材育成に関する問題点

 能力開発や人材育成に関して何らかの「問題がある」とする事業所は72.9%(前回71.6%)。その内訳(複数回答)は、「指導する人材が不足している」(53.4%)が最も高く、「人材育成を行う時問がない」(49.7%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(43.8%)と続いています。(下図参照)

3.技能継承の取組状況

 技能継承の取組みを行っている事業所は85.1%(前回83.1%)。その内容(複数回答)は、「退職者の中から選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」(63.5%)が最も高く、「中途採用を増やしている」(44.1%)、「新規学卒者の採用を増やしている」(30.4%)、「契約社員、派遣社員を活用している」(22.3%)と続いています。




4.労務管理(トラブル回避の対応術)

 割増賃金の時間単価の変更は必要か?
Q .当社では、賃金規程により、正社員の時間外労働の割増賃金を1ヵ月の平均所定労働時間をもとに算出すると定めています。
 このたび一部の社員から、この数年で所定休日が増えているのに時間単価の金額が変わっていない、との指摘を受けました。休日数が増えれば、時間単価も上げなければならないというのですが、休日の増加にあわせてその都度変更するべきなのでしょうか?

割増賃金の計算方法

 時間外労働や休日労働などに対して支払う割増賃金の1時間あたりの単価の計算方法については、労働基準法施行規則(第19条1項)に定めがあります。それによると、月によって定められた賃金の場合、「その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1月平均所定労働時間数)で除した金額」を1時間あたりの賃金(時間単価)として、これに法定の割増率を乗じて算出するとしています。

 通常の場合、月によって所定労働時間数が異なるので、1年間における1ヵ月の平均所定労働時間数で算出します。この「1年間」は、賃金規程などで定めておくこともできますが、特に定めがなければ、暦での1年 (1月から12月)をもとにして、その1年間に支給する割増賃金の計算に適用するのが基本となります。



休日数の増加に伴う変化の必要は


 割増賃金を法定の割増率(時間外労働は25%)どおりで算出している場合、この計算方法に従った時間単価は、法定の割増賃金の最低額でもあります。また、算定対象の1年間の中で休日が増加した場合は、1ヵ月の平均所定労働時間数が減ることになります。したがって、休日の増加があれば、原則としては割増賃金の算出計算方法も変更して時間単価を増額しておく必要があります。

 ただし、もともと1ヵ月の平均所定労働時間数が決まった時間数で設定されていて、それが実際の所定労働時間数の1ヵ月の平均よりも少ない場合など、法定の基準を上回る金額で割増賃金が計算されていれば、休日の増加に伴い変更する必要がないこともあります。

 たとえば、実際の1年間の所定労働日数が245日で、1日8時間労働の場合、実際の1ヵ月の平均所定労働時間数は245×8÷12(月)≒163.3時間となりますが、もともと160時間で計算することを決めていれば、時間単価計算の除算式の分母の数が少なくなるので、法定の基準よりも単価が高くなっていることになります。

 以上のように、時間単価計算のもとになる1ヵ月の平均所定労働時間数は、原則どおりに運用すると、休日数の増減に伴って変更しなければなりません。それに代わる方法として、あらかじめ単価計算で使う時間数については、法定の基準を上回るように決めていれば、その都度の変更の必要もありません。

 その都度変更する煩雑さを避けるのであれば、計算方法の見直しを検討する余地はあるでしょう。



5.参考資料 (長時間労働の削減に向けて )

 昨今、長時間労働を起因とした過労死がメディアで取り上げられ、今年の春闘では賃金に加えて長時間労働の是正が焦点となっています。長時間にわたる過重な労働は、脳・心臓疾患による過労死等を引き起こすのみでなく、精神障害の原因ともなります。また、「ブラック企業」のイメージがついてしまうと、会社の社会的信用の失墜にもつながります。

長時間労働の原因を探そう

 長時間労働を削減するために行わなければならないのは、労働時間が長時間になってしまう原因を突き止め、それぞれの原因に応じた対策を講じることです。まずは長時間労働の原因となる4つのポイントから、会社の問題をあぶりだしてみましょう。

1.社員個人の仕事の進め方・意識

  • 仕事の進め方に無駄がある
  • 時間内に仕事を終わらせるという意識が欠如している

2.上司のマネジメント

  • 部下の仕事の進め方に対する関心が希薄である
  • 部下への指示や指導が適切でない
  • 優秀な部下に仕事を集中させてしまう

3.企業風土

  • 労働時間が長い社員ほど評価される風土がある
  • 有給休暇を取得しにくい雰囲気がある

4.会社の仕組み

  • 社員の始業・終業時刻を把握しておらず、労働時間を管理していない
  • 長時間の会議が頻繁にあり、他の仕事を圧迫している


長時間労働の削減

 周囲が残業していることにより、定時に帰りづらいといったようなことや、有給休暇を取りづらいといった雰囲気を持った会社はまだ多く存在すると思われます。

 そのような場合は、トップ主導で「早く帰るのは良いこと」「有給休暇を取得するのは良いこと」という意識の植え付けをし、長時間労働を削減していくことが望まれます。あくまでもトップ主導というところが肝要です。

 また、長時間の会議が頻繁にあり、圧迫された他の仕事を終わらせるため、結局、長時間労働になる場合もあります。そのような場合は、会議のテーマを限定したり、時間を区切るなどして、会議の質に重きを置くことが望まれます。



6.参考資料(外国人雇用の“方法”について )

 本年度に入り技能実習制度に「介護」が加えられたことにより、介護施設の運営者などが外国人材の獲得に向けて見切り発車でバタバタと東南アジアを訪れる動きが多くみられます。しかし、外国人を雇用する際にまず留意しなければならない事は、“どのような受け入れ方法を選択するか“という点です。

 特定の企業が発する都合の良い情報だけを鵜呑みにするのではなく、メリット・デメリットを見極めながら他の選択肢も考慮することが肝心です。例えば、介護職での雇用であれば、EPA、外国人留学生のアルバイト、ワーキングホリデー、日系人の活用など、選択肢は他にも考えられます。

 日本人の採用であれば、まずは人材を獲得し、それから現場を決定するという“人ありき”の方法も通用します。しかし、外国人雇用では在留資格の関係から職種に制限がつくことが多く、まずは受入れ方法を決定してそこから現場での業務の進め方を構築していく考え方が必要となります。

  外国人の中には母国での生活をなげうって、人生をかけて来日する人も多くいます。日本での受け入れ態勢の不備が理由となり、彼らの夢と希望を奪うことがないよう、受入れ企業にはより慎重な対応が求められているのではないでしょうか。