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メールマガジン2018年02月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2018年02月 Vol.109

1.人事・総務ニュース

賃金債権の消滅時効を見直しへ ~厚労省検討会が初会合~


  厚生労働省の賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会は12月26日、初会合を開きました。

 会合では、改正民法(2020年4月施行)で未払い金や滞納金を請求する権利がなくなる期限(消滅時効)が、 原則として5年に統一されることを受け、現行の労働基準法で2年(退職手当を除く)と定められている賃金な どの債権の消滅時効についても、見直しに向けた議論を行うことを確認しました。

 労基法上の賃金等債権の時効は、未払いの残業代など、労働者が使用者に対してさかのぼって請求できる期 間を2年間とするものですが、この期間の拡大に向けた見直しが行われると、企業への影響も大きくなることが 予想されています。



5人未満事業所、月給が0.3%増  ~2017年毎月勤労統計(特別調査)~


 厚生労働省はこのほど、2017年「毎月勤労統計調査特別調査」の結果をまとめました。  それによると、常用労働者1~4人規模の事業所で、2017年7月におけるきまって支給する現金給与額は19万 6,363円で、前年と比べて0.3%増加しています。

  男女別にみると、男性が26万4,286円 (前年比1.0%減)、女性が14万3,770円 (同1.3%増)となっています。 (下表参照)

  また、同年7月における1時間当たりの きまって支給する現金給与額は1,369円 で、前年と比べて1.0%増加しています。 男女別では、男性が1,612円(前年比 0.9%減)、女性が1,182円(同2.7%増) となっています。



障害者雇用率の算定基準を改定へ  ~週30時間未満も1人分で計算~


 厚生労働省は12月22日、労働政策審議会に、事業者が障害者を雇用する割合(法定雇用率)の計算方法を見直 す省令案要綱を諮問しました。

 現行の基準では、勤務時間が週20時間以上30時間未満の障害者(重度を除く)については、1人をもって「0.5 人」でカウントしていますが、同要綱では、2018年4月1日から23年3月31日までに雇い入れられた精神障害者につ いては、「1人」とみなすとしています。

 法定雇用率は、18年4月から民間企業では2.2%(現行は2.0%)に引き上げられることが決まっていて、対象 となる企業の雇用者数も、50人以上から45.5人以上に拡大することになっています。



2.社会保険ワンポイント・ゼミナール ~個人年金で事業主が行う事務手続き~


個人型確定拠出年金とは


 個人型確定拠出年金(iDeCo)とは、公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金の一つで、加入者の老後 の所得確保の手助けとなる制度です。企業型確定拠出年金とは異なり、掛金の全額を加入者個人で負担します。

 従来は自営業者や、企業などに属していて企業年金などに加入していない人がiDeCoに加入できましたが、昨 年1月からは、企業年金などに加入している人や専業主婦なども新しく加入できるようになりました。



事業主が行う主な事務手続き


 iDeCoは個人型の年金ですが、厚生年金保険の適用事業所の事業主は、雇用する従業員のなかで初めてiDeCo に加入した人が出た場合、国民年金基金連合会に事業所登録をする必要があります。

 これは、60歳未満の厚生年金保険の加入者(国民年金の第2号被保険者)については、法令により、加入の 資格要件に関する事業主の証明が必要とされていて、加入者の勤務先事業所の情報を、運営者である国民年金 基金連合会に登録しなければならないことになっているためです。

 また、その後も従業員がiDeCoに加入する場合には、その都度、従業員から証明を求められますので、渡され た書類に厚生年金保険の加入者であるなどの事項を証明することになっています。

 さらに、毎年1回(6月ごろ)、加入者の資格要件に関する確認があり、同連合会から証明を要する書面が届 きますので、事業主は書面に沿って加入者である従業員の企業年金などの加入資格や退職の有無を証明した上 で、連合会に返送します。



掛金の払込みに関する事務

 iDeCoの毎月の掛金は、厚生年金保険に加入している人の場合、「事業主払込」または「個人払込」のいずれ かの方法により連合会に納付することになっています。

 原則は「事業主払込」で、具体的には、事業主が加入者の給与から掛金の天引きを行った上で、事業所の口 座から、口座振替により掛金の納付を行います。

 しかし、事務手続きが困難などといった理由があれば、天引きではなく、本人の口座からの振替による「個 人払込」もできることになっています。

 また、iDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金として全額が所得控除の対象となりますので、「事業主払込」 を選択している場合、加入者の給与から掛金の天引きを行うときは、給与から掛金額を控除した上で、所得税 の源泉徴収税額を算出する必要があります。

 「個人払込」を選択している場合には、毎月の給与からの天引きや所得税の源泉徴収に関する事務はありませ んが、所得税の年末調整の際には、加入者から保険料等控除の申告と「小規模企業共済等掛金払込証明書」の 提出があれば、掛金額を含めた調整により、年税額の計算をすることになります。



3.参考資料 (年休取得率49.4%、やや上昇)

 このほど厚生労働省が発表した「就労条件総合調査」(2017年1月1日現在、常用労働者30人以上の企業 が対象)によると、16年の年次有給休暇の取得率は前年比0.7ポイント増の49.4%とわずかに上昇しました が、20年までに取得率を70%にするという政府の目標からは程遠い結果と言えそうです。


労働時間制度

《所定労働時間》

 1日の所定労働時間は、1企業平均7時間45分(前年7時間45分)、労働者1人平均7時間43分(同7時間45分) となっています。)

 また、週所定労働時間は、1企業平均39時間25分(前年39時間26分)、労働者1人平均39時間01分(同39時 間04分)で、1企業平均を産業別にみると、「金融業、保険業」が38時間01分で最も短く、「宿泊業、飲食 サービス業」が40時間11分で最も長くなっています。


《週休制》

 主な週休制の形態をみると、「何らかの週休2日制」を採用している企業は87.2%(前年88.6%)。そのう ち、「完全週休2日制」は46.9%(同49.0%)で、これを産業別にみると、「金融業、保険業」が95.9%で最 も高く、「鉱業,採石業,砂利採取業」が24.7%で最も低くなっています。


《年次有給休暇の取得状況》

 2016年1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く。)は、労働者1人平均18.2日(前年18.1 日)。そのうち、労働者が取得した日数は9.0日(同8.8日)、取得率は49.4%(同48.7%)となっています。

 ※産業別に関しては下図を参照ください

 なお、年次有給休暇を時間単位で取得できる制度がある企業は18.7%(前年16.8%)となっています。


《変形労働時間制》

 変形労働時間制を採用している企業は 57.5%(前年60.5%)。これを産業別に みると、「鉱業、採石業、砂利採取業」 が78.5%で最も高く、「金融業、保険業」 が23.5%で最も低くなっています。

 また、種類別(複数回答)にみると、 「1年単位の変形労働時間制」が33.8% (前年34.7%)、「1ヵ月単位の変形労 働時間制」が20.9%(同23.9%)、「フ レックスタイム制」が5.4%(同4.6%) となっています。


《勤務間インターバル制度》

 終業時刻から始業時刻までの間隔が11時間以上空いている労働者が「ほとんど全員」または「全員」である企 業は71.6%となっています。

 また、勤務間インターバル制度の導入状況別の企業割合をみると、「導入している」が1.4%、「導入を予定ま たは検討している」が5.1%、「導入の予定はなく、検討もしていない」が92.9%となっています。

賃金制度

《基本給の決定要素》

 基本給の決定要素別(複数回答)に企業割合をみると、管理職では「職務・職種など仕事の内容」が77.4%で最 も高く、次いで「職務遂行能力」が64.9%などとなっています。

 また、管理職以外では「職務・職種など仕事の内容」が74.1%で最も高く、次いで「学歴、年齢・勤続年数など」 が69.0%などとなっています。


《賃金制度の改定状況》

 2014年から16年までの過去3年間に、賃金制度の改定を行った企業は35.5%。そのうち、賃金制度の改定内容別 (複数回答)に企業割合をみると、「職務・職種などの仕事の内容に対応する賃金部分の拡大」が59.8%で最も高 く、次いで「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」が52.1%、「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」が 45.3%などとなっています。

《時間外労働の割増賃金率》

 時間外労働の割増賃金率を「一律に定めている」 企業は83.4%(前年83.1%)で、そのうち、割増 賃金率を「25%」とする企業は93.5%(同93.3%)、 「26%以上」は6.3%(同6.1%)となっています。

 また、1ヵ月60時間を超える時間外労働に係る割増 賃金率を定めている企業は32.2%(前年27.4%)で、 そのうち、割増賃金率を「25~49%」とする企業は 49.6%(同45.4%)、「50%以上」は48.9%(同53. 4%)となっています。



4.労務管理(トラブル回避の対応術)


無期転換ルールの特例となる労働者

 「無期転換申込権」は、有期契約労働者であって、同一の使用者との間で1回以上更新された契約期間が通算 して5年を超えている場合に発生します。

 ただし、「有期雇用特別措置法」により、次の①、②の労働者については、その特性に応じた雇用管理に関 する特別の措置が講じられていると認められる場合には、無期転換申込権が発生するまでの期間に関する特例 が適用され、通常の場合に発生する無期転換申込権が一定の期間発生しないことになっています。

①専門的知識等を有する有期雇用労働者(高度専門職) ②定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)

上記の労働者について、無期転換ルールの特例の適用を希望する事業主は、対象労働者に応じた適切な雇用 管理の措置に関する計画を作成して、本社・本店を管轄する都道府県労働局に提出し、計画が適切であることの 認定を受ける必要があります。(計画は上記①、②の対象労働者ごとに作成・提出し、認定もそれぞれ行われま す)この認定を受けることによって、無期転換ルールの特例が認められることになります。


高度専門職の要件・範囲と特例の内容

 ①の高度専門職の要件と範囲は、有期労働契約期間において、確実に支払われると見込まれる賃金が1年間あ たり1,075万円以上であって、博士の学位を有する者、大学等を卒業後に一定期間の実務経験を有する技術者や システムエンジニアまたはデザイナー、医師等一定の資格を有する者などとされています。

 特例が認められると、高度の専門的知識等を必要とし、5年を超える一定の期間内に完了する業務(プロジェ クト)に従事する有期雇用労働者については、そのプロジェクトに従事している期間は、無期転換申込権が発 生しません。

ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は10年とされ、プロジェクトの期間を超えた場合やそれに 従事しなくなった場合、年収要件を満たさなくなった場合、または計画の認定が取り消された場合には、通常 の無期転換ルールが適用されることになっています。


継続雇用の高齢者の特例

 ②の継続雇用の高齢者とは、就業規則に定める定年に達した後に、引き続いて同一の事業主または高年齢者 雇用安定法に定める特殊関係事業主(いわゆるグループ会社)に雇用される有期雇用労働者をいいます。

 特例が認められると、継続雇用の高齢者については、定年後引き続き雇用される期間は無期転換申込権が発生 しません。また、定年に達している人をすでに継続雇用している場合にも、計画の認定を受ければ、そうした人 も特例の対象者となります(すでに無期転換申込権を行使している場合を除きます)。

ただし、計画の認定が取り消された場合には、継続雇用の高齢者であっても通常の無期転換ルールが適用さ れることになっています。



5.参考資料 (20業種で労災保険率を引き下げ)

 労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)は12月21日、労災保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱 について、妥当と認める答申を行いました。

 同要綱では、原則3年ごとに過去3年間の災害発生状況などを考慮して改定されている労災保険率について、 平成30年度から、全54業種平均で1000分の4.7から1000分の4.5へ引き下げるとしています。

 54業種中、引き下げとなるのが20業種、引き上げとなるのが3業種、据え置きが31業種となっています。

 また、一人親方などの特別加入に係る第二種特別加入保険料率については、全18事業・作業のうち、半数で 引き下げが行われます。

 労災保険率の改定とともに、請負による建設の事業に係る労務費率(請負金額に対する賃金総額の割合)の 改定も行われ、30年度から、8事業のうち4事業で1~2%引き下げられます。


6.参考資料(同一労働・同一賃金)

 最近、ニュースなどで「同一労働・同一賃金」という言葉が目立ちます。もと もとはヨーロッパで移民や女性を不当に安く雇用することを防ぐために始まった 考えですが、現在では「同じ仕事であれば、アルバイトや正社員などの雇用形態 に関係なく、同じ賃金が支払われるべき」という意味合いで活用されています。

 新しい技能実習制度でも「日本人と同等の給与額」ということが強調され、従 来のように「最低賃金でも法律を満たしているから大丈夫」という考えは一切通 用しなくなりました。現状では「同等である」と証明する方法についても、従業 員の給与台帳の提示など、慎重で細かい審査が進められています。このような現 状を踏まえても、日本企業が国籍に関係なく優秀な人材を採用して、国際的な競 争力を身に着けるための第一歩として、「同一労働・同一賃金」の考え方は避け ては通れないハードルと言えるのではないでしょうか。

 一般的に、仕事に人を当てはめるヨーロッパと比べ、終身雇用制度が根付いて いる日本では「同一労働・同一賃金」の定着は難しいと言われていますが、雇用 企業の努力が足りない部分も多くありそうです。

 先日、フランス企業の経営者との懇親の機会がありましたが、雇用企業の負担 は相当なものだそうです。職種ごとに労働組合があり適正給与額が毎年公表され る、解雇はできない、休日は日本よりも多くそのすべての消化が大前提、サービ ス残業など考えられない…それでも労働生産性は日本よりも高い。この現実を突 きつけられると雇用企業の努力が足りないと認めざるを得ません。

 各国にはその文化に根付いた制度があって当然ですが、国際的な流れから判断 すると「同一労働・同一賃金」という流れには逆らえそうにはありません。日本 では相当先の話になりそうですが、今から一歩ずつ準備を進めていく必要があり そうです。みなされる可能性が非常に高いため、具体的な職務内容を記した上で申請を行った方がよいでしょう。