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メールマガジン2018年05月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2018年05月 Vol.112

1.人事・総務ニュース

中堅中小で大手上回る賃上げ ~2018年の平均2099円~


 業界大手を含む中堅中小企業の春闘も順次収束に向かっていますが、交渉を終えた127社の平均妥結額は 2099円でした(労働新聞社集計)。前年の1252円を850円ほど上回っていて、自動車・電機・鉄鋼など大手完 成品メーカーの平均より500円玉一個分ほど多い水準です。

 近来にない人手不足を受けて、事業の継続に不可欠な「人」への投資のあり方について、中小の賃上げ交渉 の場では労使が真剣に論議を交わした状況がうかがえます。

 業種別にみると、電機1409円(前年比386円増)、自動車1203円(158円増)、機械金属1517円(305円増)、 サービス2417円(646円増)などとなっています。翌年分も見据えた特殊な交渉方式を採る鉄鋼も、単年度当 たり1500円賃金を引き上げ、運輸も総額の平均賃金原資を1504円アップさせました。



禁煙は客席100平方メートルが基準 ~健康増進法改正案~


 多数が利用する場所での受動喫煙対策を定めた健康増進法改正案が、国会に上程されました。学校や病院、 官公庁は屋内全面禁煙としますが、屋外に受動喫煙対策を講じた喫煙場所を設置できます。

  その他の多数が利用する場所(船舶・鉄道等含む)では、専用室内でのみ喫煙可を原則とします(加熱式 たばこは経過措置で喫煙室外も可)。飲食店のうち、個人経営または資本金5000万円以下の中小企業で、客 席面積100平方メートル以下の既存の小規模店は、喫煙可能であることなどを記載した標識を掲示すれば、喫 煙を認めます。

 さらに、小規模飲食店も含めすべての施設で、客・従業員ともに20歳未満の喫煙スペースへの立入りを禁止 します。施行は一部を除き2020年4月1日です。



「労働契約申込みみなし制度」を適用へ ~違法の警備業務派遣~


 大阪労働局は、禁止されている警備業務に労働者派遣を行ったとして、ビル管理会社に事業停止・改善命令 を出しました。

 平成27年・改正派遣法により、「違法を知りながら派遣を受け入れていた」派遣先に対して、自動的に「直 接雇用の労働契約を申し込んだ」とみなす仕組みが設けられています(40条の6)。禁止業務への派遣受入れ も対象に含まれ、同労働局は今回事案にも適用されるとみています。



転職受入れへ指針 ~厚労省・成長産業活性化を狙う~


 厚生労働省は、「年齢にかかわりない転職・再就職者の受入れ促進のための指針」を公布・施行しました。 転職が不利にならない柔軟な労働市場の形成と企業慣行の見直しを図ります。

 企業に対しては、職務遂行能力の適正な評価と中途採用者の賃金決定における公平かつ柔軟な取り扱いを要 請しました。転職者を即戦力とするには、入社時の導入教育と社内ネットワークの形成支援が大切です。能力 が十分発揮できるよう早期定着に向けた取組みの必要性を指摘しました。

 日本では、入職者の6割が中途採用ですが、プロパー社員と比べると処遇が低いケースが大半です。同省で は、官民を挙げて転職者の採用機会拡大に向けた機運醸成に力を入れる方針です。これによって、「成熟企業」 から「成長企業(特に地方の中堅企業)」への転職を促進し、経済全体としての生産性向上を目指します。



2.シフト減で賃金が大幅ダウン ~教室統廃合により異動も連続~


 学習塾の受付事務として採用されたものの、当初の約束と違って、勤務時間・日数が極端に減らされた ケースです。入社時に交付された労働条件通知書には、週5日・1日7時間勤務と記載され、異動があり 得る点については何も説明されていませんでした。

 ところが、学習塾側の都合によって何度も異動を命じられたうえに、シフト減(1日2時間勤務や自宅 待機等)により収入が落ち込んだ従業員が、困り果てて、都道府県労働局長による助言・指導を求めまし た。


従業員の言い分


 求人広告には当初勤務地の記載しかなく、入社時の面接でも、異動があるという話は聞かされていません でした。異動があっても1日7時間・週5日勤務の約束が守られれば我慢もできます。しかし、シフトが減 らされた結果、収入は半分ほどにダウンしてしまいました。

 総務課長に苦境を訴えましたが、「今、教室の統廃合をしているので、他の人も似たり寄ったりの状態だ。 あなただけじゃないから、わがままをいわないで」と取り合ってくれません。契約どおりに仕事をさせても らえるようにしてください。



事業主の言い分


 当社の就業規則には異動に関する規定が設けられているし、県内に教室が十数か所あると説明する際、転 勤の可能性についても本人に伝えてあったと、当方としては認識しています。

 しかし、契約内容と実態に隔たりがあることは事実なので、早急に改善を図ろうという気持ちはあります。



あっせんの内容

 就業規則に記載はありますが、本人と話し合いの機会を設けることもなく、一方的に配置転換およびそれ に伴う賃金ダウンという決定を行った点に関しては、人事権の濫用として無効とされるおそれもあるところ です。

 事業主として、できるだけ早く従来の勤務シフトに戻すように助言・指導を行いました。



結果

 話し合いの結果、事業主側が「勤務場所の異動はあっても、週5日・1日7時間労働の契約は順守する」 ことを約束しました。異動に関しては、従業員側が一歩譲ったうえで、円満な解決が図られた事案です。



3.調査  日本生産性本部「2017年度新入社員秋の意識調査」

 日本生産性本部が1991年から実施している調査です。


 テレビでは「条件は今よりいい会社」などと転職を促すコマーシャルが流れていますが、新入社員はどの ように考えているのでしょうか。「移る方が得」という回答は44.0%で昨年(54.6%)より低下しています。


 「イクメン」ということばはすっかり日常語として定着した感があります。その割に、現実の取得率は高 くありませんが、新入社員の男性は79.5%が「取りたい」と考えています。彼らが結婚し、子供が生まれる 頃までには、会社として必要な環境整備を済ませておきたいところです。



4.身近な労働法の解説 ~年次有給休暇①~


 労働基準法の改正案において、「一定日数の年次有給休暇の確実な取得」が盛り込まれています。具 体的には、「10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して 与えなければならない」と義務化する内容です。

 「確実な取得」の前提となる年次有給休暇の付与日数について、労働法の取扱いを簡単に確認しまし ょう。


法定の付与日数


①②を満たす労働者に対して、10労働日の年次有給休暇が与えられます。

①雇入れの日から起算して6か月継続勤務
②全所定労働日の8割以上を出勤

その後、基準日の前年における②を要件として、継続勤務年数1年ごとに継続勤務年数に応じて11労働日から20労働日の年次有給休暇が与えられます。

週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間数が30時間未満の労働者については、比例付与として、労 働日数および継続勤務年数に応じて1労働日から15労働日が付与されます。

※認定職業訓練を行う未成年者および週以外の所定労働日数を定める場合の付与日数については割愛しま す。



労働契約(所定労働日数等)に変更があった場合の付与日数

(1)付与日数

 年次有給休暇は基準日に発生するので、基準日現在の労働契約により付与日数が定まります。

 例えば、5月1日が基準日のパートで3労働日の比例付与対象だが、その後、6月から正社員になること が決定したという場合でも、3労働日分の付与のままで問題ありません。

 なお、基準日から1年内の退職が決定している場合でも、法定の付与日数を下回る付与はできません。

(2)勤続年数のカウント

 継続勤務年数については、「実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算する」とされています。 例えば、次のようなケースです。

・定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再採用している場合
・短時間アルバイト等を正社員に切り替えた場合
・在籍型の出向をしている場合
・日々雇い入れられる者等でも、その実態よりみて引き続き使用されていると認められる場合



5.実務に役立つQ&A 通勤災害として請求? ~共用ビル内で負傷~


 オフィスのある共用ビル内で、従業員が帰宅の際、階段から転落してケガをしました。労基署に申請す る際、通勤災害用の様式を使用するのでしょうか。


 従業員のケガが、業務災害になるか、通勤災害になるかは、災害の発生した場所により決まります。 「就業の場所(オフィス内等)」であれば業務災害、「就業の場所と住居とを往復する経路上」であれ ば通勤災害と判断されます。

しかし、事故のあった階段は就業するオフィスの外側ですが、いまだ共用ビルの中にあるので、問題 はちょっと複雑です。

 この点については、次のような解釈が示されています(昭51・2・17基収252号の2)。

 ビルには不特定の者の出入りがなく、ビルの管理も入居している事業主が共同で行っていたという事 情が認められたケースで、「ビルの内部も事業主の支配が及ぶ就業の場所である」と判断されています。

 しかし、小売店や飲食店の入っているビル等では、また判断が異なってくる可能性もあるので注意が 必要です。



6.助成金情報  ~障害者雇用に関する助成金 平成30年度変更点情報~

 障害者雇用に関しては、雇い入れた場合・適切な雇用管理措置を行った場合等の助成制度があります。

 平成30年4月1日から障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わり、法定雇用率は、民間企業で現行の2.0 %から2.2%に変わっています。精神障害者の雇用率算定方法は対象者1人(新規雇入れ(または精神障害者 保健福祉手帳の取得)から3年以内)につき0.5から1に変わりました。

 以上のような法改正は、今後、企業の障害者雇用の努力を促すものです。

 今回は、高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇 用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成される特定雇用開発助成金(特定就職困難者 コース・平成29年4月1日より名称変更)をご紹介します。


支給要件

1.ハローワーク等の紹介により雇い入れること
2.雇用保険の一般被保険者として雇い入れ、継続雇用することが確実であると認められること
3.雇用関係助成金共通の要件をみたすこと


支給額(以下の対象労働者・助成対象期間等に応じて30万円から240万円)

1.短時間労働者以外の者

 (1)高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等
 (2)重度障害者等を除く身体・知的障害者
 (3)重度障害者等

2.短時間労働者

 (4)高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等
 (5)重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者

※ 詳細は厚生労働省HP「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」をご参照ください。


企業や支援機関に望まれる対応

1.通院の確保や周りの従業員の障害理解の促進
2.仕事の標準化・障害特性に応じた職場コミュニケーション上の工夫
3.強みやできていることに焦点を当て、できることを正当に評価する仕組構築
4.個々人の障害特性に応じた配慮


7.コラム  ~新たな在留資格「特定技能」~

 政府は今秋の臨時国会に入管法改正案を提出し、2019年4月より新しい在留資格「特定技能」を新設する方針です。

 「特定技能」とは、現在の技能実習制度で最長5年間滞在したのちに、さらに5年間就労するための在留資格です。日本での滞在は最長5年間で建設、農業、介護などの業界に限定されるようですが、本国にいる家族の呼び寄せや在留期間の更新など、現状の就労可能な在留資格とほぼ同じとなるようです。

 この在留資格が創設された場合、技能実習からカウントしてトータルで10年間の就労が可能となりますが、その後の更新はなされないようです。また、「技能実習」から「特定技能」への移行時には帰国が義務付けられており、永住許可の要件の一つである「日本での滞在が通算10年以上」という条件を満たすことはなく、長年日本で就労をしていても永住権を取得することは難しそうです。

 現在では海外での人材獲得競争は単純労働者においても激しくなっており、フィリピンやベトナムの出稼ぎ労働者は少しでもより良い条件の国を選んでいるのが現状です。カタール、ドバイ、韓国、香港、シンガポールなどのライバルを出し抜き、わざわざ日本語を習得してでもこの国に行きたいと思える魅力的な制度作りが求められています。

 国のルールを変えることはできませんが、「調和と活力のあるグローバル化」を目指すACROSEEDとしては、日本でまじめに働く外国人が報われるサービスを生み出していきたいと思います。