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メールマガジン2018年06月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2018年06月 Vol.113

1.人事・総務ニュース

パワハラ防止を法定化へ ~先行してガイドライン周知も~


 厚生労働省は、職場におけるパワーハラスメントを防止するため、将来的に事業主の雇用管理上の措置義 務を法律に明記する必要があるとする検討報告をまとめました。事業主が具体的に取り組むべき事項を、先 行的にガイドラインで示すという方向性も示されています。

 専門家による報告では、パワハラの概念を①優越的な関係に基づいて行われる、②業務の適正な範囲を超え る、③身体的・肉体的苦痛を与え、または就業環境を害すること――の3要素に集約しました。

 措置義務の内容としては、セクハラ・マタハラと同様の枠組を提言しました。パワハラ防止に向け、事業主 が方針を周知・啓発します。被害者からの申出に対応するため相談窓口を設置し、迅速・適切な事後対応を図 ると同時に、プライバシー保護等にも配慮する必要があるとしています。



過労自殺で7000万円の賠償 ~労災は不支給確定だが~


 遺族が「調理師の自殺は過労が原因」と訴えた裁判で、大阪地裁は安全配慮義務違反を認め、7000万円の 損害賠償を命じました。

  調理師の労働者は、新店舗の店長に抜擢された後にうつ病を発症、休職していましたが、約半年後に自殺し ました。

 一方で、遺族は労災も請求していましたが、管轄労基署は不支給を決定、その後の行政訴訟でも請求棄却さ れています。行政訴訟と民事訴訟で判断が分かれた格好です。

 行政訴訟では、「3カ月間の連続勤務があった」とする主張を証拠不十分として採用しませんでした。これ に対し、民事訴訟ではメンタルヘルスクリニックの診療録の「3カ月休みなく働いていた」という記載を重視 しました。同僚らの証言は、「会社と口裏合わせした可能性がある」として斥けています。



従業員の副業・兼業を解禁 ~民間で広がる取組~


 ㈱新生銀行は、社外人脈の拡大等による自社イノベーションの創造を目指し、社員の副業・兼業を解禁しま した。入社年次などで制限を掛けることなく、全社員を対象としています。想定パターンは2種類。社員自ら が起業する「個人事業型」と「他社雇用型」です。長時間労働を防ぐ目的で、1週20時間、1カ月30時間未満 の上限を設けています。

 アサヒビール㈱は、退職後のキャリア形成を支援するため定年後再雇用者を対象としました。フルタイム・ 短時間勤務のいずれも利用可能です。社労士や中小企業診断士の資格を活用し、外部飲食業者のコンサルティ ングを行うタイプ、個人事業主として、美術工芸品の販売やセミナー・塾講師を務めるタイプ等を想定してい ます。



2.セクハラ拒否したら解雇された ~同時に「悪いウワサ」も流す~


 工務店の社長は、男性従業員が仕事で外出すると、事務所に1人残っている女性従業員相手にセクハ ラ的言動(肩をもむ、男性経験を聞くなど)を繰り返していました。

 社員旅行に出かけた機会にプライベートな付き合いを求めましたが、断られると態度を豹変させまし た。当初は退職を勧奨し、女性が応じなかったため、「気が強くて、手に負えない」等の悪いウワサを 流したうえで、解雇を通告しました。

 このため、女性側が都道府県労働局に救済を求めた事案です(均等法に基づく調停制度のスタート前 で、あっせんを申請)。


従業員の言い分


 日頃からセクハラを受けていたうえに、社員旅行の夜には、一人で社長の部屋に呼び出しを受けました。

 生活のために退職勧奨を拒否しましたが、根拠のないウワサを広めたうえで、最後は当方に非があるかの ような解雇宣告です。

 当面の生活補償(50万円)と精神的・身体的苦痛に対する慰謝料(100万円)の支払い、さらに社長本人 からの謝罪文を求めます。



事業主の言い分


 女性に好意を示したのは事実ですが、本人もあからさまに拒否しておらず、このように大げさに騒ぎ立て るべき筋合いのものではないはずです。

 そもそも女性がセクハラとして訴える行為の大部分は、当方として身に覚えのないものです。

 裁判等の場で争いたいのであれば、こちらも応じる用意があり、このように高額な慰謝料要求には到底応 じられません。



あっせんの内容

 セクハラ行為の有無に関しては、双方の主張の隔たりが大きかったため、会社の同僚等を参考人として招 集し、事実確認を行いました。女性側の主張がおおむね立証されたため、当初は反発していた社長側も和解 に応じる意思を示しました。

 このため、女性側の要求に沿ったあっせん案を作成・提示しました。



結果

 解決金150万円の支払いと謝罪文の提出を内容とするあっせん案を、当事者双方が受諾しました。社長と 事務員という力関係の差に基づく典型的な「対価型セクシュアルハラスメント」事案で、女性の主張がほぼ 全面的に認められる結果となりました。



3.調査  厚生労働省・「過重労働解消キャンペーン:重点監督実施結果」

 厚生労働省が、平成29年11月の「過重労働解消キャンペーン」に合わせて実施した「重点監督」の結果を 集計したものです。


 対象となったのは、過労死等の労災請求のあった事業場と「若者の使い捨て」が疑われる事業場(長時間 労働が疑われる企業)だったので、当然ともいえる結果ですが、約6割の企業で1カ月80時間を超える時間 外が発生していました。

 まさに「過労死と隣り合わせ」の環境です。


 労働時間管理の基本は、適切・正確な労働時間の把握です。厚労省では、平成29年1月に「労働時間の 適正把握ガイドライン」を公表していますが、「原則的な方法(使用者による現認、タイムカード等の記録) 」による企業は、全体の63%という状況です。不適切な会社に対しては、ガイドラインに基づく指導が実施 されました。



4.身近な労働法の解説 ~年次有給休暇②~


 年次有給休暇の請求権の発生について、全労働日の8割出勤を条件としているのは、労働者の勤怠の状況 を勘案して、特に出勤率の低い者を除外するという趣旨です。

 8割出勤の算定は、次のとおりです。

 出勤した日 ÷ 全労働日

 全労働日の日数は、就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいいます。


1. 全労働日に含まれない日


・所定の休日に労働をさせた日(所定労働日ではないため)
・労使のいずれの責めにも帰することのできない、いわゆる「不可抗力」による休業日
・使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日
・正当な同盟罷業(ストライキ)その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日
・割増賃金の代替休暇を取得して終日出勤しなかった日
・公の職務(裁判員制度など)で休んだ日

2.出勤したものとみなす日


以下の不就労日は、出勤したものとみなします。

・業務上の怪我や病気による休業(通勤途上は除く)
・育児休業、介護休業
・産前産後休業(出産が予定日より遅れた期間を含む)
・年次有給休暇取得日
・労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日(上記1.のうち●を除く)

なお、一斉付与や分割付与により法定の付与日(基準日)以前に付与する場合は、短縮された期間は全期 間出勤したものとみなします。



5.実務に役立つQ&A 通勤傷病手当金もらえるか? ~退職後は年金受給~


 今年62歳になる嘱託従業員がいますが、年金の支給が始まるので退職したいという意向を示していま した。ところが病気で入院し、治療は長引きそうな様子です。当面、傷病手当金を受給しますが、年金 の支給が始まったらどのような扱いになるのでしょうか。


 傷病手当金は、支給を開始した日から起算して1年6カ月の間受けられます(健保法99条)。在職中 に給付が始まり、途中で退職しても、資格喪失後の継続給付の対象となります。

 退職後に傷病手当金の給付を受けている人が、老齢基礎年金・厚生年金の受給権を得たとします。こ の場合、年金が優先され、傷病手当金は原則として支給停止となります。

 ご質問の嘱託従業員は「60歳代前半の老齢厚生年金」が62歳から支給されることになりますが、1日 当たりの傷病手当金の額が1年分の年金を360で除した額を上回るときは、差額分が調整支給されます (同法108条5項)。



6.助成金情報  ~時間外労働等改善助成金~

 平成29年3月に決定された「働き方改革実行計画」では、長時間労働の是正が重要課題の一つに挙げられています。

 また、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」でも長時間労働の是正に向け時間外労働の上限規制の導入や、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直しにつき、中小企業への猶予措置廃止、一定日数の年次有給休暇の確実な取得等が挙げられています。

 そこで、これらの政策を後押しするために従来の職場意識改善助成金が拡充されました。

 中小企業事業主(対象事業主)が、所定外労働の削減、年次有給休暇取得促進、その他労働時間設定の改善のために、研修、周知・啓発、労働時間の管理の適正化に資する機械・器具の導入等を実施し(支給対象となる取組)、生産性の向上を図り、労働時間等設定の改善の成果を上げた(成果目標の達成)事業主に重点的に助成金を支給することにより、中小企業における労働時間等設定の改善の推進を図ることを目的としています。


対象事業主

1.雇用する労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数が13日以下であり、かつ月間平均所定外労働時間数が10時間以上であり、労働時間等の設定の改善に積極的に取り組む意欲がある中小企業事業主   ⇒(対象事業主①)

2.労働基準法の特例として法定労働時間が週44時間とされており、かつ、所定労働時間が週40時間を超え44時間以下の事業場を有する中小事業主 ⇒(対象事業主②)


支給対象となる取組 いずれか1つ以上を実施すること

1.労務管理担当者に対する研修
2.労働者に対する研修、周知・啓発
3.外部専門家(社会保険労務士・中小企業診断士など)によるコンサルティング
4.就業規則・労使協定等の作成・変更(時間外・休日労働に関する規定の整備)など
5.人材確保に向けた取組み 6.労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
7.テレワーク用通信機器の導入・更新
8.労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、飲食店の自動食器洗い乾燥機など)


成果目標の設定

対象事業主①の場合

1.「年次有給休暇の取得促進」について、労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数を前年と比較して   4日以上増加させること

2.「所定労働時間の削減」について、労働者の月平均所定外労働時間数を前年と比較して5時間以上削   減させること

対象事業主②の場合

事業主が事業実施計画において指定した全ての事業場において、週所定労働時間を2時間以上短縮して、  40時間以下とする


支給額

Ⅰ対象事業主①(成果目標1「年次有給休暇の取得促進」および、成果目標2「所定労働時間の削減」の場合)


Ⅱ対象事業主②(成果目標2「所定労働時間の短縮」の場合)




7.コラム  ~日系4世の受入れ拡大に~

 本年7月1日より日系4世の受入れ拡大が実施されます。従来は原則として日系3世までの受けいれが認められていましたが、3世の一般的な年齢は50~60歳前後となり高齢化が目立っていました。

 しかし、今回の改正により、年間4000人程度の受け入れ枠が設けられていますが、18歳から30歳以下の日系4世の5年間の受入れが可能となります。また、本制度は「日本と日系社会との結びつきを強める懸け橋となる人材を育成すること」が趣旨となっています。

 もちろん、在留資格は「特定活動」となり就労に制限はありません。工場内での単純作業や飲食、サービス業での接客、運送業でのドライバーなど、どのような職種にも就くことができます。

 ただし、今回からの新しい試みとしてサポーター制度が導入されました。これは日本での生活面をサポートするホストファミリーのようなもので、月1回の生活状況の報告、在留手続きの代理申請、それに日系4世からの生活相談等に応じることとなっています。サポーター1名につき2名までの日系4世の受入れが可能となります。このほかにも日本語教育や日本文化の習得等の義務等もあります。

 サポーター制度があるため大人数の受入れは難しいかもしれませんが、技能実習等に比べれば手続きや履行義務などは比較的容易となっています。社会貢献の一環として活用されてみてはいかがでしょうか。