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メールマガジン2018年07月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2018年07月 Vol.114

1.人事・総務ニュース

定年再雇用後の賃下げ容認 ~最高裁が労契法20条で初判断~


 最高裁は、「期間雇用であることを理由とする差別」(労契法20条)に関して、2つの注目すべき判決を下しました。「個々の賃金項目の相違の不合理性を判断する際、その趣旨を個別にみる必要がある」という枠組みが示されています。

 長澤運輸事件は、運転者が定年後再雇用により有期の嘱託社員となり、年収が20~24%低下したのを不服として提訴したものです。

 1審は労働者側勝訴、2審は会社側勝訴でしたが、最高裁は再雇用による賃金ダウンを容認(精勤手当等除く)する立場を採りました。有期・無期間の労働条件の相違の不合理性を判断するポイントは、「職務の内容」「人材活用の仕組み」に限定されず、定年後再雇用は「その他の事情」として考慮すべきとしています。

 ハマキョウレックス事件は、有期・無期間の手当の差異が論点ですが、最高裁は2審が認めた手当に加え、皆勤手当の不支給も不合理と認めました。



勤務間インターバルで目標数値 ~過労死防止大綱改正案~


 厚生労働省は、過労死等防止対策大綱の改定案を明らかにしました。現行大綱が閣議決定された2015年7月以降、専門家・当事者家族・労使等で構成する協議会での議論が進む一方で、過労死事案が後を絶たないことから新たな大綱を策定するとしています。

  過労死防止対策の数値目標として、企業での導入割合が1.4%にとどまっている勤務間インターバル制度に関する内容(2020年までに導入率10%等を想定)を新設します。仕事上の悩み・ストレスについて相談先がある労働者割合や、ストレスチェックの集団分析結果を活用する事業場割合に関する目標値も加える方針です。

 一方で、「全国過労死を考える家族の会」は、過労死等労災認定基準の改定に関する意見書を厚生労働省に提出しました。

 過労に起因する脳・心疾患認定基準(平成13年12月)と同精神障害認定基準(同23年12月)は、過労死防止法制定以前に整備されたため、以後の裁判例の蓄積や調査・研究の進展を反映させる必要があるとしています。



社会保障協定 ~中国と協定へ~


 政府は、日本と中国の年金制度への二重加入を防止するための日中社会保障協定に署名しました。日本が、社会保障協定を締結済みの国は、ドイツ等17カ国です。

 協定がない場合、海外派遣駐在員は本国と派遣先国の両方の年金制度に加入する必要があります。しかし、協定の締結により5年以内の一時派遣被用者は、原則として派遣元である国の年金制度のみに加入することになります。今後、国会の承認を経て協定を締結する予定です。



2.知らぬ間に退職金規定変更 ~自己都合なら不支給に!?~


 賃金等の低下を理由に、従業員が退職願を提出したところ、「退職金はゼロ」といわれてビックリ仰天です。実は6年前に就業規則が改正され、「自己都合については退職金は支給しない」というルールに変わっていたのです。

 当然、納得を得られるはずがありません。従業員側の主張は2点です。第1に、労働条件の悪化を理由とする退職なので、会社都合として扱うべき。第2に、退職金の金額は変更前の規定に基づいて計算すべきというものです。


従業員の言い分


 退職金規定の変更は「寝耳に水」で、退職願を出した後で初めて知らされました。

 今回の退職は、当方の私的な理由に基づくものではありません。会社は賃下げ、歩合給制の導入など労働条件を引き下げる一方で、退職勧奨も行っていました。そのような形で、従業員側が辞めざるを得ないような状況に追い込んでおきながら、自己都合退職とみなすなど、とんでもない話です。

 変更前の退職金規定に基づき、「基本給(20万円)×勤続年数(14年)×支給率(0.5)=140万円」の支払いを要求します。



事業主の言い分


 退職金規定の変更は、定年制導入に伴って制度全体の整備を図ったものです。今回退職の従業員も含め、誰からも異論がなかったので、同意は得られたものと理解しています。

 会社業績の悪化から、賃金制度の見直しも進めてきましたが、退職を強要した事実はありません。事業主としては、あくまで自発的離職と受け止めています。



あっせんの内容

 2つの論点のうち、第1点(会社都合退職であるか否か)については、従業員に対して「自ら退職願を提出していることから、会社都合という判断は難しい」と伝えました。

 第2点(規則改正の成否)については、事業主に対して「就業規則の変更に際し、代償措置もなく、説明手続きも不十分なため、無効とみなされる可能性が高い」と説明しました。

 両者には、お互いに譲歩して、合意点を探るようにアドバイスしました。



結果

 変更前の退職金規定に基づき、自己都合退職として計算した額(会社都合の半額、70万円)を支払う旨の、合意文書の作成が行われました。



3.調査  厚生労働省・「平成29年労働災害動向調査」

 労働災害というと建設や製造業で発生するものというイメージですが、最近では第3次産業の事故(転倒、ムリな動作など)が行政の指導重点となっています(今年2月策定の第13次労働災害防止計画)。


 厚生労働省の調査によると、第三次産業ではサービス業、宿泊業・飲食業、卸売・小売業などで災害発生の度数率(※)が高めです。

 ※度数率とは、「労働災害死傷者数を延実労働時間数で除して得た値に100万を乗じたもの」。労働時間当たりの死傷者発生の頻度を表します。


 災害は、規模の小さい事業場で頻発しています。規模別の統計データをみると一目瞭然で、予防措置の不十分さが原因とみられます。



4.身近な労働法の解説 ~テレワーク~


 テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方です。tele(遠い)work(働く)をあわせた造語で、1970年代のアメリカで登場したといわれますが、その活用は限定的でした。

 日本においては近年、ICTの発達が場所にとらわれない業務遂行を可能にし、また、社会情勢や就業構造の変化等に対応するために、時間の柔軟な働き方への需要が高まり、取組みが本格化しています。

 国は、2020年東京オリンピック・パラリンピックにおいて、東京圏の交通混雑を緩和することの予行演習として、2018年7月23〜27日のうち【24日(2020年東京オリンピックの開会式の日)+その他の日】の計2日以上を「テレワーク・デイズ」として、参加団体を募り実施します。(2017年は7月24日のみ「テレワーク・デイ」として実施)


1. 働く場所による類型


【自宅利用型テレワーク】(在宅勤務)
自宅にいて、会社とはパソコンとインターネット、電話、ファクスで連絡をとる働き方

【モバイルワーク】
顧客先や移動中に、パソコンや携帯電話を使う働き方

【施設利用型テレワーク】(サテライトオフィス勤務など)
勤務先以外のオフィススペースでパソコンなどを利用した働き方

2.就労形態による類型


【雇用型テレワーク】 (事業主と雇用関係にある)
労働関連法令が適用され、適切な労務管理の下で行う就労

【自営型テレワーク】 (請負契約等で注文者と雇用関係にない)
注文者から委託を受け、主として自宅または自ら選択した場所において、成果物の作成および役務の提供を行う就労


3.雇用型テレワーク導入に向けた総務人事関係制度の再整備

業種業態、従業員規模・構成等により再整備の検討項目はさまざまですが、導入にあたって日本の雇用慣行が変化すると思われる主なものを挙げました。

■労働時間の適切な把握
 始業・終業時刻、休憩時間、休日労働、深夜労働、年次有給休暇の取得、私的時間や副業との混在

■業務の切り分け、再構築
 非同期で行える業務、チームで同期して行う業務、社内のみで行う業務、AI技術を活用する業務、自社から切り離す業務(外部委託が可能)

■人事評価制度
 職務記述書の明確化、職能評価から職務評価重視へ、昇進昇格要件の見直し、給与制度・定期昇給制度等

■採用、人材育成、教育体系
 新卒一括採用等採用要件の見直し、能力開発・ジョブローテーション・キャリアパスの見直し、ICT教育、技能の伝承方法、スペシャリスト化への対応

■安全衛生管理
 業務災害発生時の対応、作業環境管理(照明・採光、VDT作業)

■情報セキュリティ対策
 ネットワークへのアクセス方法、情報利用場所の制限、利用端末の制限等

■経費負担
 通信費、在宅勤務時の水道光熱費、文具・備品の支給

テレワークの導入にあたっては、厚生労働省(委託事業)の相談窓口「テレワーク相談センター」が用意されています。

今号「助成金情報」掲載の時間外労働等改善助成金(テレワークコース)の活用も検討してはいかがでしょうか。



5.実務に役立つQ&A 保険料が掛捨てに? ~外国人技能実習生の場合~


 外国人技能実習生も厚生年金に加入が必要と聞きますが、多くは短期の滞在と思います。保険料の掛捨てにならないでしょうか。


 外国人技能実習生が社会保険の適用事業所で働くときは、健保・厚年の被保険者となります。ちなみに、入国後、団体監理型の講習を受講している間(事業主と雇用関係が発生する前)は、国民健康保険・国民年金に加入します。

 老齢年金は受給資格の取得に最低10年を要するので、短期滞在の外国人被保険者向けに「脱退一時金」の制度が設けられています。被保険者期間が6カ月以上ある外国人が出国後2年以内に請求することで、滞在中の標準報酬月額の平均額に一定の支給率を乗じた額を、一時金で受け取ることができます(厚年法附則29条)。

 ただし、国によっては社会保障協定により二重加入を調整する規定が設けられていて、日本での加入を要しないケースもあるので、事前に確認することが重要です。



6.助成金情報  ~時間外労働等改善助成金(テレワークコース)~

 先月号に引き続き、時間外労働等改善助成金を取り上げます。今回は、テレワークコースです。これは、時間外労働の制限その他の労働時間等の設定の改善および仕事と生活の調和の推進のため、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークに取り組む中小事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成します。

 平成30年度からは対象労働者一人当たりの支給額の上限が15万円から20万円に拡大しました。

対象事業主

1.テレワークを新規で導入する中小事業主
2.テレワークを継続して活用する中小事業主

支給対象となる取組

いずれか1つ以上を実施すること

1.テレワーク用通信機器の導入・運用
2.保守サポートの導入
3.クラウドサービスの導入
4.就業規則・労使協定等の作成・変更(テレワーク勤務に関する規定の整備)など
5.労務管理担当者や労働者に対する研修、周知・啓発
6.外部専門家(社会保険労務士など)による導入のためのコンサルティング

テレワークの実施に当たっては、必要な通信機器の導入だけでなくこれまでの働き方に大きな変化をもたらすため、労務管理や時間管理上の問題に適切に対応する必要があります。そのため、社会保険労務士等のコンサルティングの費用も助成対象とされています。


成果目標

1.評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施させる。

2.評価期間において、対象労働者が在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施した日数の週間平均を、1日以上とする。

3.年次有給休暇の取得促進について、労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数を前年と比較して4日以上増加させる。または所定外労働の削減について、労働者の月間平均所定外労働時間数を前年と比較して5時間以上削減させる。


評価期間

「成果目標」の達成の有無は、事業実施期間の中で、1カ月から6カ月の期間で設定する「評価期間」で判断します。

支給額

「支給対象となる取組」の実施に要した経費の一部を、「成果目標」の達成状況に応じて支給します。

(対象経費)  謝金、旅費、借損料(維持管理費等)、会議費、雑役務費、印刷製本費、備品費、機械装置等購入費、委託費

(助成額)  対象経費の合計額×補助率(上限額を超える場合は上限額)


成果目標を達成することで助成額が上がりますが、未達成でも一定の助成をすることで、テレワークへのチャレンジを促しています。

働き方改革の柱ともいえる「育児・介護との両立支援、通勤負担の軽減、人材確保の有効な手段」として、今こそ本気でテレワークの導入の検討をお勧めします。

※詳細は厚生労働省HP「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)」をご参照ください。



7.コラム  ~外国人政策の一大転期~

 政府は農業や介護現場などの人手不足に対応し、外国人労働者の受けいれ窓口を広げるために、出入国管理及び難民認定法(通称、「入管法」)に関する改正案を秋の臨時国会に提出し、新たな在留資格「特定技能」を新設することを検討しています。これにより現状に加えて毎年50万人超の外国人労働者が日本に滞在することが想定されています。

 毎年政府が発表する「経済財政運営と改革の基本方針」では、一定の日本語能力や技能水準を持った外国人については在留期限を撤廃し、家族の帯同も認めることが明記されました。

 現時点では原案なので具体的なことははっきりしていませんが、「技能実習」から「特定技能」へと移行した外国人などが他の在留資格へ移行して、そのまま永続的に日本で就労して生活する可能性が出てきました。

 この場合、時間はかかりますが日本での永住権の取得や日本国籍の取得も可能となり、実質的には外国人労働者が家族を引き連れて日本に移住することも可能となります。世界で加熱する人材獲得競争を有利にすすめるため、政府は長年固持していた方針の変更に大きく舵を切ったと思われます。

 今後、どのような形をとるかは定かでありませんが、日本社会に多くの外国人が定住するようになることは確実です。近所のレストランに行けば外国人が働いている、となり近所に外国人が住んでいるとう状況も珍しくなくなるでしょう。