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メールマガジン2018年09月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2018年09月 Vol.116

1.人事・総務ニュース

サービス業対象に業種区分再編 ~労災保険料率の見直し開始~


 厚生労働省は、次回(平成33年度)の労災保険率改定に合わせて、「業種区分」を一部見直します。今年度中に専門家による検討を終わらせ、試案を提示する予定です。

 労災保険制度では、「業種の種類」に応じて保険料率を定めているため、どの業種に分類されるかが保険料支払いに大きく影響します。現在は54種類に区分されています。

 近年、サービス経済化に伴って、「その他の各種事業(事業の種類番号「94」)に一括されている事業場の割合が拡大しています。事業場数では全体の33%、労働者数では36%に達します。

 このため、情報サービス業、教育業、医療業、社会福祉事業、幼稚園、保育所、認定こども園など(社会保険料率は、すべて1000分の3)について独立の区分とする方向で検討を行います。保険率の見直しにより、労災防止へのインセンティブを高めるのがねらいです。



リハビリ出勤に最賃支払い命令 ~労基法上の労働と判断~


 テレビ局勤務のメンタル不調者が「試し出勤」した期間について、名古屋高裁は最低賃金相当額の支払いを命じました。上司の指示に従いニュースを作り、放送していたことなどから、労基法上の労働に当たると判断したものです。

 訴えを起こした従業員はうつ病で休職・復職を繰り返していましたが、「試し出勤(リハビリ出勤)」中に上司と口論し、最終的に退職に至っています。試し出勤の期間は無給で、交通費のみが支給されていました。

 メンタル不調者が増加する中、復職に向け「リハビリ出勤」等の仕組みを整える必要性が高まっていますが、その間の待遇をどうするかは頭の痛い問題です。一審の名古屋地裁は、「出勤状態が復職の判断材料とされるからといって、労務の提供を義務付けるとはいえない」と判示しましたが、高裁はその判断を覆しました。



賃金合算も検討へ ~ダブルワーカーの労災補償~


 厚労省は、副業・兼業の拡大に合わせ、複数企業就業者の労災認定と労災保険給付の在り方について検討をスタートさせました。

 現在の労災法では、副業先の事業場でケガをしても保険給付を受けられますが、給付額に関してはアルバイト先等の賃金だけが算定基礎とされています。業務起因性の認定でも、2事業場の労働負荷を通算・評価する仕組みとなっていません。

 厚労省の労働政策審議会では、①賃金合算による補償、②複数就労による過労死救済等に関して議論を深めます。この場合、事故発生時の災害補償責任の分担等に関しても考え方を整理する必要があります。

 総務省の調査によると、2012年時点の副業者数は100万人を超え、希望者は320万人に及んでいます。検討結果次第では、今後、法改正につながる可能性もあります。



2.育休者にパート転換強要 ~代替要員を正社員登用~


 正社員が育児休業を申請したので、当面の策として、会社はパートによる補充で対応しました。ところが、「穴埋め」のはずのパートの方が、テキパキと仕事をこなしていきます。

 スポーツ等では、ケガをきっかけとして、レギュラーの座が入れ替わるのは、よくある話です。

 しかし、労務管理の世界では、法律による制限を受けます。会社の思惑どおり、自由な身分の入替えが認められるわけではありません。「パートへの転換」を強要された女性従業員が、正社員の地位を取り戻すため、都道府県労働局長の助言・指導を求めた事案です。


従業員の言い分


 私は、本社の事務部門で正社員として採用されましたが、産後休業の後で、半年間の育児休業を取得しました。

 しかし、復職の直前に、人事部長から呼出しを受け、パートへの身分転換を言い渡されました。表面上の理由は「経営不振による支店の統廃合と、経営合理化による事務部門の縮小」です。

 もっともらしい説明ですが、私のパート転換と同日付で「後任者のパートが正社員に抜擢」されています。このような不当な人事は到底納得できず、正社員としての原職復帰を要求します。



事業主の言い分


 今回、事務部門を縮小し、人員枠を8人から5人に変更しました。新体制の下では、育休復帰者の方にはパート相当の仕事を担当してもらうほか仕方がない状況です。

 後任者のパート社員については、専攻が情報管理システムだったため、個人の能力を評価して正社員登用を決定したものです。



指導・助言の内容

 「正社員からパートへの身分転換は、本人の同意なく実施できない」、「人員減が必要といいながら、並行して正社員登用を行ったのは妥当な対応といえない」等の事情を説明したうえで、事業主に対して「原職相当職復帰」に向けた努力を要請しました。



結果

 両当事者間で話し合った結果、育休から復帰した女性従業員を「正社員として技能部署に配転する」という方向で合意が得られました。



3.厚生労働省「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」

 個別労働紛争の解決制度は平成13年にスタートし、近年、相談件数はおおむね横ばいです。しかし、その中身は大きく変化しています。平成20年度当時は「解雇」関連が1位でしたが、平成24年度を境に「いじめ・嫌がらせ」関連がトップの座を占めるようになりました。


 雇用形態別にみると人数的に一番多いのは正社員ですが、これは労働者全体に占める割合を考えれば当然のことです。増加が著しいのは有期雇用労働者で、平成20年当時は全体の8.3%だったのが、平成29年度には12.2%まで増加しています。




4.休日・休暇②


 前号に引き続き、「休日」「休暇」の賃金との関係を解説します。


1. 賃金の支払い


(1)休日

 使用者は休日に賃金を支払う必要はありません。


(2)休暇
「年次有給休暇のみ、法定で有給とされています。
 その他の休暇は、無給を原則としながら労働契約で別の定めができます。
(所得補填の観点では、産前産後休業や育児・介護休業など、社会保険や雇用保険の給付が受けられる休暇もあります。)


2. 休日に労働させた場合の賃金


 労基法35条の休日(法定休日)に労働させた場合は、通常の賃金に35%以上の上乗せをした賃金を支払わなければなりません。

 法定外の休日(法定休日を上回る休日)に労働させた場合は、週法定労働時間を超えることとなった時間について25%以上の上乗せをした賃金を支払わなければなりません。


3.休暇を取得したことに対する不利益取扱の禁止


 労基法136条は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他の不利益取扱いをしないようにしなければならないと規定しています。

また、育児介護休業法は、育児・介護休業等の申出や取得を理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁じていますので、例えば、賞与支給を判定するための出勤率算定にあたり、休暇(休業)期間を欠勤扱いとして賞与を不支給とすることは、法の趣旨から公序良俗違反(民法90条)として無効となる可能性があります。


4.割増賃金基礎給との関係


 月給制の場合、休日(労働義務がない)が多いと所定労働時間は減少します。したがって、割増賃金の基礎となる賃金の単価が上がります。

 休暇(労働義務を免除)を取得しても所定労働時間に変動が生じません。「お休み」を増やすことを検討する際には、この点を考慮することも大切です。



5.実務に役立つQ&A 賃金低下で給付優遇? ~嘱託再雇用者が離職~


 定年後の嘱託再雇用者から、退職の申出がありました。聞けば、「再雇用に伴う賃金の大幅低下」に不満があるようです。本人は労働条件切下げに伴うやむを得ない離職なので、雇用保険給付が優遇されると考えているようですが、本当にそういう主張が認められるのでしょうか。


 倒産や解雇など本人の意思に反する離職(非自発的離職)の場合、「特定受給資格者」として、失業給付の所定給付日数が優遇されることがあります。

 特定受給資格者の基準の一つに、支払われていた賃金が従来に比べ85%未満に低下した場合があります(雇保則36条)。離職の日の属する月を基準として、6カ月をみて判断します。

 ただし、定年退職に伴い賃金が低下し、同一の事業主に引き続き雇用されるときや、非行・疾病・負傷等により賃金が低下するときは、特定受給資格者に該当しないとされています(雇用保険業務取扱要領)。お尋ねのケースでは、優遇を受けるのは難しそうです。



6.助成金情報  65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)

 今月は、雇用関係助成金のうち、「65歳超雇用推進助成金」(高年齢者無期雇用転換コース)をご紹介します。

 本助成金は、有期労働契約で働く高年齢者の無期雇用への転換を実施した事業主に対して助成金を支給することにより高年齢者の労働条件を改善することでその活躍を推進することを目的としています。

 無期雇用転換計画を作成し、無期雇用転換制度の整備・高年齢者雇用推進者の選任・高年齢者雇用管理に関する様々な措置を実施することが必要です。


計画書提出から計画実施・支給申請の流れ

1.無期雇用転換計画書の提出

 無期雇用転換計画の開始日から起算して6カ月前から2カ月前の日までに提出すること。すなわち、提出日から最短で2カ月後を計画開始日とすることができます。

 有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する制度(一定の条件が要求されています)を労働協約または就業規則等に規定していることが計画書提出までに要求されます。

2.支給申請書の提出

 無期転換後6カ月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2カ月以内に支給申請書を提出すること。すなわち、無期転換後最低でも6カ月間は雇用を継続してから2カ月以内に申請することが必要です。

3. 無期雇用転換計画期間内の転換の実施

 あくまでも計画で定めた期間内に転換を実施することが必要です。

4.転換後6カ月の賃金を支給

 このような実績を踏んだのちに初めて支給申請書を提出できます(前記2参照)


支給要件

1.50歳以上の定年年齢未満の有期契約社員を雇用していること

2.雇用保険に加入していること

3.申請日の直近1年以上前の段階で、現行の就業規則が高年齢者雇用安定法に違反していないこと

4.高年齢者雇用推進者の選任

5.計画書提出日において、次の措置を1つ以上実施すること

① 職業能力の開発および向上のための教育訓練の実施等
② 作業施設・方法の改善
③ 健康管理、安全衛生の配慮
④ 職域の拡大
⑤ 知識、経験等を活用できる配置、処遇の改善
⑥ 賃金体系の見直し
⑦ 勤務時間制度の弾力化


支給額

1名につき48万円(生産性要件をみたす場合は60万円)


生産性要件

 生産性要件とは、助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が3年前に比べて6%以上伸びていることをいいます。

 少子高齢化が進む中、労働力人口は減少し、高年齢者が社会の中で活躍することがますます重要になっています。意欲も能力もある高年齢者が働き続けることができる社会の実現が望まれます。企業は、その存続をかけて高年齢者の活用を図るべく、このような助成金を積極的に活用することをお勧めします。

 類似の助成金であるキャリアアップ助成金の正社員化コースと比べて、賃金の5パーセントアップは要件とされていません。




7.コラム  ~経済産業省の外国人雇用支援~

 2019年4月以降に創設が予定されている新たな在留資格「特定技能」の動きを受け、経済産業省が中小企業(製造業)を対象に支援策を実施することを発表しました。少子高齢化などの影響により減少する労働力不足を補うため、法務省が「特定技能」の在留資格を創設し、経済産業省が受け入れた外国人労働者の活用をサポートする構図となっています。

 ちなみに、「特定技能」とは、現行の技能実習制度で入国した技能実習生が研修終了後も継続して日本に滞在し就労できる在留資格です。現在の技能実習生の滞在期間は最長でも5年間ですが、特定技能へと移行することでさらに5年間の延長が可能となり、その後も試験など合格することで他の在留資格へと移行できる可能性も示唆されています。また、現在は造船、建設、介護、農業、宿泊の5分野に限定されていますが、この業種も増加されることが予想されています。

 新聞報道では法務省が認めた登録支援機関(業界団体、自治体、社会保険労務士など)が、製造業の中小企業に指導やアドバイスを行うとされていますが、経済産業省によると「現状では未定であり、年末の予算編成時までに具体的な内容を検討する」とのことでした。

 外国人雇用については、入り口は政府が主導するが、その後のフォローや運用は各企業の現場任せという風潮が強く見られます。特にマンパワーやノウハウに乏しい中小企業にとっては対応が難しく、せっかく外国人を雇用できてもその後の活用がうまくいかずに挫折するケースが多くみられます。今回の経済産業省の支援が具体的で活用的なものとなり、多くの中小企業が労働力不足を克服できること願っています。