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メールマガジン2018年11月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2018年11月 Vol.118

1.人事・総務ニュース

技術・技能系で人材獲得が激化 ~平成31年高卒初任給~


 労働新聞社が実施した高校窓口の実地調査によると、求人票の数が大幅に増えると同時に、金額も高騰傾向を示しています。なかでも技術・技能系は、平均で前年比3000円を上回る18万円台半ばまで上昇しました。

 調査では、平成31年春の高卒者を対象に企業が提出した求人票記載の初任給額を集計しています。技術・技能系の業種別の数値をみると、建設が190,384円、製造が177,929円、情報通信業が177,076円などとなっています。サンプル数が少なく、参考数値ですが、販売・営業系194,889円、事務系179,098円なども大きく金額を伸ばしました。

 就職担当者によると「介護をはじめとして人手不足といわれる業種で求人が増え、特に建設が際立って多い」という話で、企業が人材獲得に向け条件引上げ努力を行っている状況がうかがえます。



短期雇用の充足へ ~「ジョブペアリング」を開始 愛知労働局~


 ジョブペアリングは愛知労働局による造語で、全国初の取組ということです。「複数の企業の雇用を組み合わせて求人情報を図る」仕組みを指します。

 1人の労働者が8~11月にA社の果樹園の収穫業務、12~1月はB社のおせち料理の製造業務といった働き方を想定しています。

 人手不足の進展により、短期雇用の現場で特に労働力の確保が困難となっていて、ハローワークも対応に苦慮していました。対策として、各ハローワークが期間限定雇用の求人をリスト化し、雇用終了のタイミング・人数などの情報共有を進めます。

 上記の例では、B社(おせち製造)の了解を得てA社(果樹収穫)に情報を提供し、A社から情報を受けた労働者がB社に応募するという流れになります。労働者の離職期間を短縮することで、安定雇用の実現と企業の労働力確保が期待できます。



同一労働同一賃金で指針案 ~パート・有期雇用労働法の細則整備~


 厚生労働省・労働政策審議会では、働き方改革の柱の一つである同一労働同一賃金関連の細則整備に向けた作業を進めています。

 先の通常国会では、パート労働法と労働契約法の一部を統合したパート・有期雇用労働法の整備や派遣法の改正が決まりました(働き方改革関連法の一部)。今後は、関連する施行規則の改正や短時間・有期雇用労働者に対する不合理な待遇の禁止に関する指針の作成等が課題となります。

 審議会には、指針のたたき台も示されました。たたき台は、働き方改革実行会議が平成28年12月に公表した「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」を下敷きにしていますが、改正法の建議・国会の付帯決議や最高裁判例等を踏まえ、大幅に加筆・修正されています。

 指針に引き続き、非正規社員に対する説明義務の強化・派遣労働者の均衡待遇に関する基準等についても審議が行われる予定です。



2.正社員になれると思ったのに… 一転して期間満了により雇止め


 会社側は、勤務態度不良を理由に、法定の手続きにのっとり「淡々と」期間契約社員の雇止めを行いました。

 雇止めの期日は年末(12月31日)でしたが、冬季の賞与も支払われませんでした。

 間契約社員側も会社側の評価が低いことは薄々と感じていましたが、入社当時には「ゆくゆくは正社員になれる」等の説明を受けていたこともあり、気持ちの整理が付きません。

 復職または経済的損失の補償を求めて、都道府県労働局へあっせんの申請をしました。


従業員の言い分


 正社員登用については、最近になって、同僚から「社内試験にパスし、出勤態度・勤務成績がA評価である等の厳しい条件」だと聞かされました。事前に知っていたら、入社前に採用が決まっていた他社を選択していたはずです。

 勤務の途中で夜勤から日勤に変わり、手当も少なくなり、何の説明もなく最後の賞与も支給対象から外されました。

 会社の仕打ちは不当であり、当然もらえるはずの賞与のほか、2カ月分の賃金を補償として求めます。



事業主の言い分


 勤務態度不良については指導に尽力しましたが、一向に改善がみられませんでした。今回は期間満了に伴う雇止めであり、解雇という非難は当たりません。

 しかし、入社時には、過剰な「リップ・サービス(正社員登用)」があったのは事実として認めます。当方としては、規定どおり賞与を支払ったうえで、1カ月分の賃金を補償するという対応も検討しています。



指導・助言の内容

 従業員に対しては、会社側の雇止めは法的な基準に沿うもので、手続き的な瑕疵はみられない点を説明しました。

 賞与に関しては、就業規則に従い支払い義務がある点を確認しました。

 その前提に立って、両者間で経済的補償に関する意見調整を行い、解決を促しました。



結果

 賞与は就業規則の規定どおり、勤務成績等を考慮したうえで適正な額を支払い、それに加えて1カ月分の賃金相当額を補償する旨の合意が成立しました。



3.厚生労働省「平成29年・労働安全衛生調査」

 安衛法に基づくストレスチェックは、平成27年12月から、「従業員規模50人以上」の事業場を対象に実施が義務付けられています。

 「実は、うちではまだ手が回らなくて…」という会社では、他社の実情が気にかかるところですが、50人以上規模では実施率9割という状況です。


 ストレスチェックはメンタルヘルスの未然予防が目的ですが、メンタル不調者はどのくらい発生するものでしょうか。1カ月以上休んだ人は0.4%という数字ですが、この数字を多いとみるか、少ないとみるかで会社の対応も違ってくるでしょう。




4.平均賃金①


 労働者の給与を取り扱う際に「平均賃金」という言葉を耳にします。単に支給している給与額を平均したものではなく、労基法で定める平均賃金には計算方法があります。3回にわたり、平均賃金についておさらいします。


1. 平均賃金とは


 休算定すべき事由の発生した日以前3カ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額(労基法12条)をいいます。

 つまり、月給制や時間給制であっても、日額で算出されます。


2. 平均賃金が使われる主な場面

 法律により平均賃金が使われる主な場面は次のとおりです。

(1)解雇予告手当(労基法20条)
「30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」

(2)休業手当(労基法26条)
「休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」

(3)年次有給休暇取得時の賃金(労基法39条)
「平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金(中略)を支払わなければならない。」

(4)災害補償(労基法76〜82条)
「労働者の療養中平均賃金の100分の60の休業補償」(労基法76条)
「平均賃金に別表第二に定める日数を乗じて得た金  額の障害補償」(労基法77条)
「平均賃金の1000日分の遺族補償」(労基法79条)
「平均賃金の60日分の葬祭料」(労基法80条)
「平均賃金の1200日分の打切補償」(労基法81条)
「第77条又は第79条の規定による補償に替え、平均賃金に別表第三に定める日数を乗じて得た金額を、6年にわたり毎年補償」(分割補償)(労基法82条)

(5)減給の制裁(労基法91条)
「減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の1日分の半額を超え(中略)てはならない。」

(6)労災法の給付基礎日額(労働者災害補償保険法8条)
「給付基礎日額は、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額とする。」

(7)賃金総額の特例(労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則15条)
「平均賃金に相当する額に、それぞれの労働者の使用期間の総日数を乗じて得た額の合算額を賃金総額とする。」(造林の事業、木炭又は薪を生産する事業その他の林業の事業(立木の伐採の事業を除く。)、水産動植物の採捕又は養殖の事業であって、賃金総額を正確に算定することが困難なものの場合。)


3. 原則の計算方法


3カ月間に支払われた賃金総額 ÷ 3カ月間の総日数

※賃金締切日がある場合は、その起算日は直前の賃金締切日です。
※銭未満の端数が生じた場合、これを切り捨てることは差し支えありません。(昭22・11・5基発第232号)

 次回は、平均賃金の計算方法について、具体的に触れていきます。



5.実務に役立つQ&A 学生も保険料支払うか 障害年金もらえなくなる?


 パート従業員から「大学生の息子がまもなく20歳になるけれど、国民年金の保険料を支払わないとダメですか」と尋ねられました。メリットをあまり感じないということですが、どのように説明するとよいでしょうか。


 老齢基礎年金の支給開始は65歳(将来的にはさらなる引上げも予想されます)なので、遠い将来の話と考えておられるのでしょう。しかし、短期的には、不慮の事故によって障害が残るという可能性も否定できません。

 障害基礎年金を受給するには、初診日の前日において初診日の属する月の前々月までの国民年金被保険者期間のうち、保険料滞納期間が3分の1以下か、直前1年間に滞納がないか、いずれかの要件を満たす必要があります。20歳に達した学生が保険料を滞納していると、事故等に遭遇しても年金の請求ができません。就職し(厚生年金に加入し国民年金の第2号被保険者となり)、1年余りたって初めて納付要件を満たすことになります。

 自身の収入が少ない学生は、学生納付特例制度で支払いの猶予が可能なので、少なくともそちらの手続きは済ませるようにアドバイスしてあげてください。  



6.助成金情報  時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)

 2018年6月に「働き方改革関連法」が可決・成立しました。長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等が重要課題の一つに挙げられています。企業は2019年4月1日に施行される各改正法に向けて対応を迫られています。特に時間外労働の上限規制の導入、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直しにつき中小企業への猶予措置廃止、一定日数の年次有給休暇の確実な取得等は喫緊の課題です。

 今回は以前にもご紹介した時間外労働改善助成金のうち「時間外労働上限設定コース」をご紹介します。


対象事業主

2016年度または2017年度において「労働基準法第36条第1項の協定(いわゆる36協定)で定める労働時間の延長の限度に関する基準」に規定する限度時間を超える内容の時間外・休日労働に関する協定を締結している事業場を有する中小企業事業主で、当該時間外労働および休日労働を複数月行った労働者(単月に複数名行った場合も可)がいること。


支給対象となる取組

 いずれか1つ以上を実施すること
1.労務管理担当者に対する研修
2.労働者に対する研修、周知・啓発
3.外部専門家によるコンサルティング
4.就業規則・労使協定等の作成・変更
5.人材確保に向けた取組
6.労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
7.テレワーク用通信機器の導入・更新
8.労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新。


成果目標の設定

1.現状の36協定の延長時間の短縮
 事業主が事業実施計画において指定した全ての事業場において、2018年度または2019年度に有効な36協定の延長する労働時間を短縮して、所定の上限設定を行い、労働基準監督署へ届出を行うこと。
① 時間外労働時間数で月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定
② 時間外労働時間数で月45時間を超え月60時間以下かつ、年間720時間以下に設定
③ 時間外労働時間数で月60時間を超え、時間外労働時間数および法定休日における労働時間数の合計で月80時間以下かつ、時間外労働時間数で年間720時間以下に設定

2.休日の増加
 週休2日制の導入に向けて、4週当たり5日から8日以上の範囲内で休日を増加させることを成果目標に加えることができます。


支給額

 取組の実施に要した経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて支給
 以下のいずれか低い額
1.1企業当たりの上限200万円
2.上限設定の上限額および休日を増加した場合に決められた休日加算額の合計額
3.対象経費の合計額×補助率3/4



7.コラム  ~激化する人材獲得~

 業務を通して多くの外国人雇用企業様を訪問する機会がありますが、どこの企業でも共通する課題は人の募集・採用です。「少子高齢化により労働力人口の減少、そのため、外国人雇用を進める…」といった一連の流れは珍しくなくなりつつありますが、近ごろはその外国人材の採用が難しくなってきていることを痛感します。ITやAIなどの高度人材においては数年前から世界中の国が人材獲得競争を続けていますが、最近ではコックさんや営業などの一般的な職務にまでその波が広がりつつあるのではと感じることが多くなりました。

 この背景にはアジアでの賃金の上昇があります。深セン、上海、北京といった中国の大都市、香港、シンガポールなどでは日本の平均給与よりも賃金が高い地域が目立つようになりつつあり、昨今では中国系のIT企業が大卒の初任給で40万円を提示した例もみられました。現状ではパイロットや優秀なコックさんなど一部の職種に限られますが、日本を離れてアジアの大都市で就職したことで給料が2倍近くになったという事例も見られます。同様に同じ営業職でも日本では500万円前後の給与が、アメリカ(サンフランシスコ)では平均でも1300万円近くに達しています。

 企業で働く価値はお金だけではありませんが、労働者にとって賃金は最も重要な要素の1つであることにはかわりません。日本については、日経平均は23,000円近くに迫っていますが、いつまでたっても国内の需要は鈍く賃金も上昇しない…このような状況が続けば、いつの日か日本人がアジア諸国に出稼ぎに出ていく日がくるかもしれません。日本の国が本質的な競争力をつけるためにも、多くの日本企業がより高収益な体質へと変化していくことが求められていることを実感しています。