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メールマガジン2019年02月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年02月 Vol.121

1.人事・総務ニュース

パワハラ防止義務の法制化へ ~女性活躍推進法も見直し~


 厚生労働省の労働政策審議会は、パワーハラスメント防止と女性活躍推進法改正等に関する建議をとりまとめました。

 ハラスメント関係では、既に均等法・育介法でセクハラ・マタハラに関する措置義務規定が整備されています。今回の建議案では、パワハラについても「防止のための雇用管理上の措置を法律で義務付けるのが適当」と提言しました。

 法制化されれば、事業主は「方針の明確化」「相談体制の整備」「事後の迅速・適切な対応」「プライバシーの保護」等に関する体制の整備が求められます。

 女性活躍推進法関連では、行動計画の策定・情報の公開義務等の対象範囲を、現在の301人以上から101人以上に広げる等の改正を実施します。優秀企業の認定制度(えるぼし)についても、1ランク上の「プラチナえるぼし」を創設する案が示されています。



中小・非正規の水準底上げを ~連合が「19春闘方針」公表~


 連合は、中央委員会で19春闘方針を決定しました。「春闘構造の再構築に向けた検討に着手する」と宣言し、基本となる賃上げ水準のほか、格差是正、底上げ・底支えに従来以上の力を注ぐ考えです。

 賃上げについては、議論の前提となる賃金実態の把握に努め、19春闘では「2%程度」の上げ幅や各種賃金指標を参考値として明示し、定昇込みで総額「4%程度」月例給の引上げを求めるとしています。

 規模間格差の是正に関しても、これまで地方で積み上げてきた底上げ運動や中小共闘のデータなどに基づき「社会横断的水準」の確保に向けた指標も示します。時給制非正規の場合、高卒初任給との均等待遇という観点から時給1050円という目標を設定しました。



厚労省 保育所の「落選狙い」に対処 ~内定辞退理由を審査~


 育児休業の延長を目的に、落選を狙って保育所に入所申込みをする事案が問題となっています。厚労省は、第1希望の保育所の内定を辞退し、二次調整に申込み落選した場合、保留決定通知書にその旨を記載する等の対応策を示しました(年末に閣議決定)。

 現行制度は、育児休業・給付の延長の期間を、子が1歳に達するまでとしています。例外として、希望しても保育所に入所できなかったときは、2歳までの延長が認められます。

 企業とハローワークは例外要件に合致するかどうかを、自治体が発行する「入所保留通知書」で確認していますが、この仕組みを逆用し、当面復職する意思がない育休取得者があえて落選しそうな保育所に入所申込みする例が増えています。

 今後、保留決定通知書に「内定辞退等の事実を記載」することで、企業とハローワークが「やむを得ない事情があったかどうか」等を審査し、延長の可否を判断するという活用法が想定されています。



2.職場でありがちなトラブル事情 


 保険証を期日までに未提出 ~いきなり減給制裁の対象に~

 健康保険の被保険者証の更新時期となったので、会社は掲示板にお知らせを出しました。しかし、期限は2日後で、当然のことながら数人、告知に気づかずに提出を忘れた社員がいました。

 会社はさらに期限を2日延ばすお知らせを掲示しましたが、たまたまAさんは年休を取っていたため、知る機会がありませんでした。

 Aさんが年休明け(提出の期限日)に出社したところ、上司から被保険者証の提出を求められました。「年休で知らなかった」と釈明しましたが、翌日、「減給制裁の処分を科す。併せて、始末書も出すように」と告げられました。

 あまりに過酷な処分に、思い余ったAさんは都道府県労働局の助言・相談を受けることにしました。


従業員の言い分


 保険証の未提出は、単純にお知らせに気づかなかった(2回目の掲示は年休でみることができなかった)ためです。会社にもそう説明したのですが、「業務命令を無視するような態度を取った」と叱責を受けました。

 提出が遅れたのは私のミスですが、最後は謝罪もしています。それなのに、あまりに唐突な懲戒通告で、申し開きの機会すら与えられませんでした。本社の決済も受けておらず、公平さを欠く処分なので、撤回を求めます。



事業主の言い分


 2回も告知を出したうえで、被保険証の提出を促したのに、「掲示板などみたことがない。自分には関係ない」と開き直られ、まったく反省する様子がありませんでした。

 これは正に、就業規則で定める「故意に業務の遂行を妨げ、業務上の指揮命令に違反する」行為です。懲戒は当然の処分で、本社に伺いを立てるまでもないと考えます。



指導・助言の内容

 被保険者証の提出を求めた際のAさんの受け答えについて、本人・事業所長の主張には大きな食い違いがあります。減給という重い処分を科すにはその前提として事実関係の十分な調査が必要です。

 仮に非違行為があったとしても、過去の処分例に照らして、量刑が適当か慎重な判断が求められると、会社側に対して再考を促しました。



結果

 会社と事業所長が再調査し、検討した結果、懲戒処分を撤回し、その旨を掲示しました。



3.厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査(初任給)」

 最近の人手不足は、「1990年代のバブル期に肩を並べる」ともいわれるほどです。そのあおりで、小売り・飲食店等でみかける外国人従業員もめっきり増えました。

 新卒市場も「引く手あまた」の売り手市場で、初任給も上昇を続けています。平成30年6月現在で、規模10人以上の民間事業所の初任給を調査したところ、大卒男性は初めて21万円台を記録しました。


 企業間格差は、大企業を100とした場合の中企業・小企業の初任給水準を示す指標で、大卒女性を例にとると、小企業は95.7という水準です。

 しかし、人出不足が深刻な学歴・性別では逆転現象も生じています。高卒男性では小企業が101.1と大企業を上回る初任給を提示し、人材集めに苦心しています。




4.身近な労働法の解説


 36協定届の様式変更

改正労基法で残業時間の上限が定められ、平成31(2019)年4月から、36協定届の様式が変わります。


1. 新様式での届出について


 36協定で2019年4月1日以後の期間のみを定めている場合は、新様式で届出します。 2019年3月31日を含む協定は、その期間の初日から1年を経過する日までは、旧様式(現行様式)で届出ができ、内容も改正前の労基法36条、施行規則、限度基準告示が適用されます。

 なお、中小企業は、2020年4月から適用されますので、上記「2019年」を「2020年」と読み替えてください。


2. 新様式の協定届の種類(主なもの)

 次の種類が用意されています。
・特別条項がない場合(様式第9号)
・特別条項がある場合(様式第9号の2)・・・2枚1組
・新技術、新商品等の研究開発に従事する労働者(様式第9号の3)
・自動車の運転業務、建設事業、医業に従事する医師※(様式第9号の4)


3. 旧様式と新様式(様式第9号)との記載項目の違い(主なもの)



 様式第9号の2では、「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」についての記載が必要になりました。

 様式第9号の3では、「労働基準法第36条第4項で定める時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」についての記載が必要です。


4. その他


 ・従来どおり、36協定届を用いて36協定を締結することもできます。その場合には、労働者代表の署名または記名・押印が必要です。
・新様式以外の形式であっても、必要事項の記載があれば届出できます。
・厚生労働省HPに「書面作成支援ツール」が用意されています。
・36協定届は、電子申請での届出が可能です。



5.実務に役立つQ&A


 休職中に賃金変動したら? ~引越しで手当額が上昇~

 育休を取得中の従業員から「子育ての便等を考慮し、広めの住居に引っ越した」との連絡がありました。住宅手当・通勤手当がアップし、通常なら随時改定の対象になるところですが、現在は休職中です。どのように取り扱えばよいのでしょうか。


 被保険者の固定的賃金に増減があり、3カ月の報酬額平均が標準報酬月額と比べて2等級以上の差が生じたときは、随時改定(月変)の対象となります(健保法43条)。ただし、各月の報酬支払基礎日数がすべて17日(社会保険の適用拡大の対象者は11日)以上あることも要件とされています。

 しかし、ご質問にある従業員は育児休業を取得中です。無給の状態が長期にわたって継続するので、報酬支払基礎日数17日以上という条件を満たすことはできません。この場合、随時改定の手続きを採る必要があるのでしょうか。

 転居により住宅手当・通勤手当をアップさせる条件は満たしていますが、休業で無給状態ですから、増額後の手当は現実に支払われていません。  

 この場合(無給期間中に昇給等があった場合)については、「実際に変動後の報酬を受けた月を起算日として改定」の手続きを採るべきとされています(平23・5・26事務連絡)。



6.助成金情報

 両立支援等助成金(出生時両立支援コース)~男性の育児休暇取得を促進

 男性が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場づくりに取り組み、その取組によって男性に育児休業(①②)や育児目的休暇(③)を取得させた事業主に、下表の額を支給します。


支給額


※( )の額は、助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」がその3年度前に比べて6%以上伸びていることなど、各助成金共通の生産性要件を満たした場合に適用。

※中小企業とは、原則として次の表の(1)または(2)いずれかを満たす企業が該当します。



受給手続

 ①② 男性労働者の育休取得


 ③ 育児目的休暇の導入・利用
・子の出生前後に育児や配偶者の出産支援のために取得できる休暇制度を導入すること
・男性が育児目的休暇を取得しやすい職場づくりのため、★に準じた取組を行うこと
・上記の新たに導入した育児目的休暇制度を、男性が、子の出生前6週間または出生後8週間以内に合計して8日以上(中小企業は5日以上)取得すること

 ★取組の例
・子が生まれた男性に対して、管理職による育休取得の勧奨を行うこと
・管理職に対して、男性の育休取得についての研修を実施すること


受給手続

1.定められた申請期限を守ること
2.事業主の本社等(人事労務管理の機能を有する部署が属する事業所)の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に申請すること



7.コラム  ~外国人から選ばれる国に~

 本年4月に施行される予定の「特定技能」で、海外から年間4万人の外国人労働者を受け入れることが決まりました。これに伴い政府は日本語教育や多言語相談窓口の設置など、4月からの受け入れ準備に大慌てで対応していますが、その内容は外国人労働者に何かの義務を求める内容が多く、受入れ側の日本企業への義務はあまり見られません。もちろん、日本で働く以上は日本語の習得や日本での働き方などを熟知することは必要不可欠ですが、雇用企業側も相手国の言葉や文化を学ぶ、外国人にわかりやすい就業規則、評価制度に改訂するといった努力も必要だと実感しています。

 以下に示すのは、フィリピン人労働者が新規に海外で働く場合にどこの国に行くのか、を集計したグラフです。


 PHILIPPINE OVERSEAS EMPLOYMENT ADMINISTRATION OVERSEAS EMPLOYMENT STATISTICS DEPLOYED OVERSEAS FILIPINO WORKERS 2016 vs 2015

 あと数年も経過すれば中国やアジア諸国が、今度は外国人を受け入れる側に変わるかもしれません。その際に日本が外国人労働者に選んでもらえるよう、日本企業は今から努力することが求められています。