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メールマガジン2019年03月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年03月 Vol.122

1.人事・総務ニュース

6年連続2%超目指す ~識者が19年賃上げを予想~


 厚生労働省の労働政策審議会は、パワーハラスメント防止と女性活躍推進法改正等に関する建議をとりまとめました。

 経団連は、引き続き大幅賃上げを求める政府の立場に理解を示しつつも、「経営の自主性配慮、各社の実情に合った賃上げ」という主張を強めています。政府と使用者の立ち位置に微妙な変化も感じられますが、賃金コンサルタントの観測では19年春闘も平均値としては堅調な状況が続きそうです。

 プライムコンサルタントの菊谷寛之代表は、「初任給の高騰、働き方改革による非正規社員の待遇改善等により企業サイドでは人件費の上昇圧力を警戒する向きもある。10月からの消費税率増税による景気減速も不安視されるが、足下の日本経済は高水準を保っていて、今年のベアは1600~1800円程度、賃上げ率は2.3%+αと予想する」と述べています。

 賃金システム研究所の赤津雅彦代表は、「中国経済の鈍化、世界の通商問題等の外的要因は残るが、企業の雇用人員判断は不足感がさらに強まっている。人材確保の面からも、中小中堅企業の底上げが『求心力』となる。格差が改善されれば、全体の賃上げ2%超は期待できる」とみています。



外国人受入れは14分野 ~政府が「基本方針」を策定~


 「特定技能」資格を創設する改正入管法は、平成31年4月1日施行で、政府は急ピッチで関連規定の整備を進めています。

 外国人の受入れが必要な「人材確保を図るべき分野」や「入国を認める人材基準(試験等)」は、年末に出された政府の「基本方針」および法務大臣の「運用方針」等で定められました。

 対象分野は、「介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・船用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造、外食業」の14種類です。

 雇用形態は「直接雇用」が原則ですが、農業・漁業は「派遣形態」も可能とされています。



Q&A方式で疑問点に対応 ~改正労基・安衛法で通達~


 厚生労働省は、平成31年4月1日の改正労基法・安衛法の施行に向け、詳細な解釈例規(Q&A方式)を示しました(平30・12・28基発1228第15号、第16号)。同時期に、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」と「時間外労働の上限規制」に関する「分かりやすい解説」というリーフレットも公表し、企業担当者の疑問点解消に努めています。

 時間外の上限規制に関しては、「2~6カ月平均で80時間以内」というルール(罰則付き)の順守が、実務的な難問となります。どのような場合に違反となるのか、法違反を犯さないためには、どのようなチェック体制が望ましいのか等について、具体的な解説が付されています。なお、新法の対象となる以前の36協定期間については「2~6カ月」の通算対象から除かれますが、それ以後は、2つの協定にまたがる期間に関しても、「80時間以内」に収まっているか確認が必要とされています。



2.職場でありがちなトラブル事情 


 経理不足金の賠償を要求 ~出納担当に全責任と主張~

 小規模企業では、出納の担当者が1人だけで、十分にチェック機能が働かないケースが往々にしてあります。

 飲食店経営のA社では、売上げ不振から事業を閉鎖することになりましたが、収支を計算したところ10万円程度の不足金が発生しました。このため、社長は金銭管理を担当していたBさんに全額の補填を要求しました。

 Bさんはそもそも調理が主業務で、出納管理は専門ではありません。毎日の収支勘定にズサンな面があったことは認めましたが、もちろん、売上げをごまかすようなことは行っていません。  あまりに過酷な処分に、思い余ったAさんは都道府県労働局の助言・相談を受けることにしました。

 「会社側の要求は正当なのか」と都道府県労働局長の助言・指導を求めました。


従業員の言い分


 飲食店で働いていた数年間、売上金の収納・費用の支払い等の事務を行っていたのは事実です。売上金はその日のうちに夜間金庫に預けていましたが、長い期間の間に、細かいミスが累積された可能性は否定できません。

 しかし、日頃、社長は出納簿をみることもなく、ノーチェックの状態が続いていました。そうしたなかで、不足金が発生した責任を全部、私に被せるのはどうかと思います。



事業主の言い分


 Bさんが不正を行ったと疑うわけではありません。しかし、店舗閉鎖にあたって10万円の不足金が出た以上、うやむやに済ますわけには行きません。

 金銭管理については全面的にBさん1人に任せてきたのだから、差額を支払わせるのは当然の理屈ではないでしょうか。



指導・助言の内容

 従業員であっても、職務権限の範囲内で民事上の責任を負うという基本的な考え方は間違っていないけれど、会社(事業主)の管理責任も問う必要があります。

 事業主に対して、会社として適切なチェック体制の整備を怠りながら、全額の賠償を従業員に求めるのは適当ではないので、再考するよう求めました。



結果

 助言を受け、社長は自分の管理上の落ち度を認め、損害賠償の要求を全面撤回しました。



3.東京商工会議所「働き方改革関連法への準備状況に関する調査」

 働き方改革関連法は「労基法制定以来の大改正」ともいわれますが、実務現場への浸透度はどの程度なのでしょうか。

 改正法のうち、もっとも関心が高いのは「年休の確実な取得(使用者による5日の時季指定)」でしょう。罰則付きの規定のうえに、中小への猶予措置も設けられていないからです(平成31年4月1日以降の年休付与日から適用)。

 日本・東京商工会議所が昨年10月22日~12月3日に実施した調査によると、「内容まで理解している」割合は50人以下で65.6%です。


 年休制度の改正について、「対応済み・対応の目途が付いている」と回答した企業の割合は44.0%にとどまっています。厚労省もパンフ等を整備し、周知に努めています。未対応企業は、社内体制の整備に向け、最後の追込みの時期に来ています。




4.身近な労働法の解説


 年5日の年休の確実な取得

2019年4月から、全ての企業において、年次有給休暇(以下、年休)の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。


1. 対象者


 法定の年休が10日以上付与される労働者(管理監督者、比例付与のパート労働者等を含む)です。 前年度から繰り越した年休の日数は含まず、当年度に付与される法定の年休の日数が10日以上である労働者が義務の対象です。


2. 年5日の時季指定義務

 使用者は、労働者ごとに、年休を付与した日から1年以内に5日について、取得時季を指定して年休を取得させなければなりません(改正労基法39条7項)。

 2019年4月1日以後、最初に年10日以上の年休を付与する日から、確実に取得させる必要があります。※前倒し付与の場合の取扱については解説を省略します。


3. 時季指定の方法


 使用者による時季指定にあたっては、労働者の意見を聴取しなければなりません(面談、年休取得計画表、メール、システムを利用した意見聴取等、任意の方法による)。

 また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません(改正労基則24条の6)。


4. 時季指定を要しない場合


「使用者による時季指定」、「労働者自らの請求・取得」、「計画年休」のいずれかの方法で年5日以上の年休を取得させれば足りますので、これらいずれかの方法で合計5日に達した時点で、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできません(改正労基法39条8項)。

なお、繰越し分の年休を取得した場合にはその日数分を時季指定すべき年5日の年休から控除できます。


5. 就業規則への規定、年休管理簿


 使用者による時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲および時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません(労基法89条)。

 労働者ごとに、時季、日数および基準日を明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、3年間保存しなければなりません(改正労基則24条の7)。なお、労働者名簿または賃金台帳とあわせて調製することができます。


6. 時季指定を要しない場合


「使用者による時季指定」、「労働者自らの請求・取得」、「計画年休」のいずれかの方法で年5日以上の年休を取得させれば足りますので、これらいずれかの方法で合計5日に達した時点で、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできません(改正労基法39条8項)。

なお、繰越し分の年休を取得した場合にはその日数分を時季指定すべき年5日の年休から控除できます。



5.実務に役立つQ&A


老齢年金を繰上げ請求したら? ~寡婦年金受給中のパート~

 短時間パートの女性から、仕事の合間に相談を受けました。夫と死別し、現在は寡婦年金を受給中ということです。「自分の老齢年金を前倒しで請求することも可能と聞きました。手続した方がよいでしょうか」というのですが、両方受け取れるのでしょうか。


 寡婦年金は、第1号被保険者期間(任意加入被保険者を含む)としての保険料納付済期間・保険料免除期間が10年以上ある夫(老齢基礎年金の受給歴なし等の要件もあり)が死亡した場合、夫と生計維持関係にあり、婚姻関係が10年以上ある妻に支給されます(国年法49条)。支給期間は、夫の死亡月と妻の60歳到達月のどちらか遅い月の翌月から65歳到達月までです。

 一方、老齢基礎年金には繰上げ・繰下げという仕組みがあります。繰上げ(65歳前の受給)を選択すると、請求月の翌月から老齢基礎年金が支給されますが、「繰上げ月数×0.5%」分だけ年金額が少なくなります。

 お尋ねの方は、金額が減っても寡婦年金と老齢基礎年金の両方を受けるのなら、その方がよいとお考えなのでしょう。しかし、繰上げにより「老齢基礎年金の受給権を取得したときは、寡婦年金の権利は消滅」し(国年法附則9条の2第5号)、併給はできません。



6.助成金情報

 キャリアアップ助成金(正社員化コース)

 「非正規雇用労働者の処遇改善」はいわゆる労働契約法の無期転換権の発生等を受けて、人事労務管理の分野で話題にならない日はありません。そこで、改めて、キャリアアップ助成金の正社員化コースの要件を確認します。


キャリアアップ計画の作成・提出

有期契約労働者等のキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるため、大まかなイメージ(対象者、目標、期間、目標を達成するために事業主が行う取り組み)をあらかじめ記載します。

※ 転換後6カ月間の賃金を、転換前6カ月間の賃金より5%以上増額させていること。
※ 転換の手続、要件、転換または採用時期を必ず規定する必要がある。

 就業規則規定例
第●条 勤続2年以上の者で、本人が希望する場合は、無期雇用に転換させることができる。
2 転換時期は、毎年6月1日とする。
3 部門長の推薦を経て、面接および筆記試験を課し、一定以上の基準点を満たし合格した者について転換する。


支給申請

●転換または直接雇用した対象労働者に対し、正規雇用労働者、無期雇用労働者としての賃金を6カ月分支給した日の翌日から起算して2カ月以内に申請すること
●支給申請書に添付が必要な書類を申請案内に従って添付すること

支給額


※ ①~③を合わせて、1年度1事業所あたりの支給申請上限人数20人まで
※( )の額は、助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」がその3年度前に比べて6%以上伸びていることなど、各助成金共通の生産性要件を満たした場合に適用。
※中小企業とは、原則として次の表の(1)または(2)いずれかを満たす企業が該当します。



7.コラム  ~外国人雇用とコンプライアンス~

 最近、「外国人社員の採用後にはどんな教育が必要か」という質問を多く頂きます。研修というと日本語や業務研修などいろいろありますが、多くのお客様を見てきた経験からするとコンプライアンス教育の重要性が高いと感じています。

 外国人を雇用するということは、生まれや文化、習慣、道徳観なども違う人々が一緒になって協力して企業の成果を求めていくことを意味します。もちろん、日本人同士であってもこれらの価値観がすべて一致する訳ではありませんが、国内だけでなく海外含めて考えた場合には、当然にその価値観の違いはより大きなものとなります。

 外国人雇用においては、雇用企業として全社員に共通するルールや倫理観などを明確に示した上で基準を統一し、その上でそれが守られているかどうかを継続的にチェックして改善していく姿勢が必要となります。仮にこの社員全員が守るべき基準が明確でない場合には、各従業員が自分達の生まれ育った環境での倫理観やルールに従って行動するため、様々な場面で食い違いが生じます。これが社内の小さなトラブルであるうちはまだよいのですが、これが積み重なっていくに従い不正を誘発したり、すれ違いの重なりが外国人社員のストレスとなり離職の原因となるケースも見られます。

 外国人雇用におけるコンプライアンス教育は、雇用企業の社会的リスクを回避し、個々の従業員を不正から守り、結果として全員が働きやすい環境を作り出すという点で最終的には従業員にもメリットをもたらすものです。外国人社員の研修においては、ぜひコンプライアンス教育も重視して継続して取り組んでみてはいかがでしょうか。