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メールマガジン2019年04月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年04月 Vol.123

1.人事・総務ニュース

7業界へ導入マニュアル ~同一労働同一賃金の実現めざす~


 厚生労働省は、パート・有期雇用労働法の来年4月施行(中小は1年の猶予)に向け、今年3月中に「同一労働同一賃金」の業種別導入マニュアルを作成・公表する予定です。

 「同一労働同一賃金」は働き方改革の柱の一つで、昨年末には、政府の「同一労働同一賃金ガイドライン案」をベースとする「不合理な待遇の禁止等に関する指針」も告示されました。しかし、具体的にどのように均衡・均等待遇を実現するか、企業の現場では頭を悩ませているのが現状です。

 第1弾としてまとめるマニュアルは、①スーパーマーケット業、②食品製造業、③印刷業、④自動車部品製造業、⑤福祉業、⑥労働者派遣業、⑦生活衛生業の7業種を対象としています。いずれも非正規労働者の多い業種ですが、それ以外の企業の参考になる点も少なくないはずです。

 都道府県労働局に設置されている「働き方改革推進支援センター」では、コンサルティングの専門家を大幅増員して企業等のサポートを実施します。資金的な援助策としては、キャリアアップ助成金を拡充する方針です。



会計伝票16万枚ゼロに ~ICT活用で生産性向上~


 遠州鉄道は、会計伝票とグループ会社間の請求書のやり取りを電子化するなど、ICT(情報通信技術)の活用を進めています。同社は、中期経営計画の中で電子化により、事務社員の労働時間を年間5万時間減らす目標を掲げていました。

 グループ全体の出金・入金などの会計は年間合計16万枚にのぼっていて、所属長の捺印が必要とされていましたが、今後の承認手続きは会計システム上で行います。これに伴い、①伝票の印刷・保管、②請求書の伝票への添付、③伝票の部門間移動等の作業がなくなると同時に、検索スピードも高まります。

 一方で、アルバイト採用のICT化にも取り組んでいます。応募者は30秒程度の自撮り動画を提出します。採用に当たり、履歴書選考や面接は行わないので、会社・応募者双方の手間が省けます。「若い人が多そうな職場」からスタートしましたが、今後、運転者・介護労働者といった獲得困難職にも対象を広げたいとしています。



バイトへ賞与不支給は不合理 ~労契法20条で判決~


 賃金・休暇等に関する正社員との相違が労契法20条に違反するとして、薬科大学のアルバイト職員が起こした訴訟で、大阪高等裁判所は賞与や私傷病休職中の賃金等について一部不合理とする判決を下しました。

 アルバイト職員は教授のスケジュール管理や経理事務などに従事していましたが、適応障害により長期休職後に退職しています。

 正職員の賞与は「個人成績や法人業績に一切連動していない」ため、「算定期間に就業していたことそれ自体に対する対価」としての性質を有すると判断し、新卒正職員の60%を下回る場合、不合理な相違に当たるという基準を示しました。

 私傷病休職の場合、正職員には6カ月の賃金を全額保証し、その後も2割相当の休職給を支払うという優遇措置が講じられていましたが、アルバイトは無給でした。裁判所は「契約を更新し、習熟度を高めた職員は一般に代替性が高いといえず、生活保障の必要性を否定しがたい」という理由で、一部を支払うよう求めています。



2.職場でありがちなトラブル事情 


 年休消化を理由に退職金減額 ~強引な雇止めの最終1カ月~

 あっせんを申し出たAさんと会社の関係は、雇止めの半年前から、ギクシャクしていました。

 Aさんは1年の労働契約を更新し、10年間にわたり清掃業務に従事していましたが、会社は組織統合による人員削減の方針を打ち出します。

 5月末でAさんの契約期間が満了を迎えましたが、会社は更新・不更新いずれの態度も示しません。Aさんは「更新」という理解で、就労を続けていました。

 しかし、1カ月後に会社は「契約期間6カ月、更新なし」とする契約書への署名を求めてきました。契約を拒否すると、5カ月目の10月末になって「30日後に解雇」の予告を受け、Aさんは残りの期間、すべて年休の消化に当てました。

 これに対し、会社は「引継ぎを怠った」という理由で退職金を減額するといい出しました。「泣き面に蜂」の仕打ちに、Aさんは紛争調整員会によるあっせんを申請しました。


従業員の言い分


 契約更新時期から1カ月が過ぎるまで放置していれば、誰でも契約が更新されたものと信じるでしょう。

 今回のトラブルは、すべて会社の手続き上のミスにより生じたものです。解雇による経済的損害・精神的苦痛に対する補償として、2カ月分の和解金支払いを求めます。

 また、解雇予告後に年休を消化したのは、正当な権利の行使であり、退職金の減額には納得がいきません。



事業主の言い分


 最後の契約更新時に、会社の方針変更等の説明ができなかった点については、まことに心苦しく思っています。

 しかし、予告の翌日から解雇までの全労働日について有給休暇を取得したため、正常な引継ぎができず、会社の業務に多大な支障を与えた等の事情があるので、和解金の上乗せには到底応じることができません。



指導・助言の内容

 解雇に至るまで、会社側の取扱いに種々の問題があった点については、労使双方の認識に差異はありません。

 会社側が「退職金は100%支払うがそれ以上の支払いはムリ」、従業員側が「これ以上の紛争の長期化は望まない」と折れ合う姿勢をみせたので、それを受ける形であっせん案を提示しました。



結果

 Aさんは和解金の支払いを請求せず、会社が退職金規定どおりの退職金を支払うというあっせん案を、紛争当事者双方とも受諾しました。



3.経団連「2018年人事労務に関するトップ・マネジメント調査」

 政府・厚生労働省は、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を制定するなど、マルチジョブホルダー(複数事業場就労者)への支援を強化しています。副業は、働く側にとっては「本業の所得を生かして、やりたいことに挑戦できる」、企業にとっても「社外から新たな知識・情報・人脈を入れることができる」等のメリットがあります。

 大手を中心として大々的に制度整備をアピールする動きも広がっていますが、経団連の調査結果から現状をみてみましょう。

 現在、副業等を認めている企業は21.9%で、「懸念事項が解消されれば検討」が31.9%となっています。


 企業にとってネックとなっているのは、どういう問題でしょうか。「副業・兼業を認めない理由」を複数回答方式で尋ねたところ、1位から4位までが長時間労働・過重労働に関連するものでした。このため、先行企業では、副業を認める条件として「通算労働時間を制限」する会社もあるようです。




4.身近な労働法の解説


 いよいよ始まる働き方改革

 企業における働き方改革が本格的に始まります。法改正対応は企業コンプライアンスとして確実に実行しつつ、労使で認識を共有し、働き方改革に取り組む姿勢を全従業員に伝えることが大切です。

 自社における働き方改革の目的を見失わないよう、社会的背景や趣旨について、労政審建議等の資料から再確認しながら、簡単なポイントを▶印で示します。(2019.4.1施行分を掲載)


1. 長時間労働の是正


○時間外労働の上限規制の導入(※中小企業は2020.4.1〜、一部事業で例外あり)

週労働時間60時間以上の者の割合は7.7%、平成27年度の労災支給決定件数は、脳・心臓疾患251件、精神疾患472件という状況で、長時間労働の是正は喫緊の課題となっています。

▶協定は、上限時間だけではなく、健康確保、仕事と生活の調和に配慮した内容を労使で話し合いましょう。

○年5日の年次有給休暇の確実な取得

いわゆる正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得しておらず、また、ほとんど取得していない従業員については長時間労働の比率が高い実態があります。

▶企業全体や部署単位での取得状況のほか、個々人の取得状況について、過去の実績から問題点や課題を洗い出し、取得しやすい環境整備など今後の対応策を検討すると良いでしょう。

○労働時間の状況の把握の実効性確保

長時間労働に対する健康確保に関し、医師の面接指導の適切な実施を図るため、裁量労働制の適用者・管理監督者を含むすべての労働者を把握の対象とします。

▶管理監督者には自身の出退勤時間を意識させるとともに、一般従業員の労働時間削減のしわ寄せが管理監督者にのみ及ばないよう、全体で仕事の仕方を見直すと良いでしょう。

2. 多様で柔軟な働き方の実現

○最大3カ月のフレックスタイム制

子育てや介護、自己啓発など様々な生活上のニーズと仕事との調和を図りつつ、メリハリのある働き方を一層可能にします。

▶自己管理能力の高い従業員でも、会社が業務の進捗状況等を適宜確認するしくみづくりが大切です。

○特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設

時間ではなく成果で評価される働き方を希望する“労働者のニーズ“に応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするための制度です。


○勤務間インターバル制度(努力義務)

終業時刻と始業時刻の間に一定時間の休息を確保し、十分な生活時間や睡眠時間を確保し、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることを可能にする制度です。

▶健康確保に資する制度ですが、徐々に始業時刻が後ろ倒しになり、かえって生活リズムが乱れることのないよう、日々の労働時間に留意することが大切です。



5.実務に役立つQ&A


派遣元へ直行で通災? ~普段と行先違うが問題あるか~

 業務の報告のため、派遣労働者にいったん当社(派遣元)へ来てもらいます。通常は派遣先に直行していますが、当社に来る途中であっても、事故に遭えば通勤災害になるのでしょうか。当社立ち寄り後、派遣先に向かう途中でケガをした場合はどうでしょうか。


 労災法では、通勤を(1)住居と就業場所間の移動、(2)就業場所間の移動、(3)単身赴任者の住居間等の移動の3種類に分けて定義しています(7条)。

 派遣労働者の就業場所は通常「派遣先」ですが、通災の認定に当たって①派遣元または派遣先事業主の指揮命令により業務を開始し、または終了する場所を「就労の場所」として扱います(昭61・6・30基発383号)。派遣元で業務を開始・終了したと判断されれば、自宅との間の往復行為は「通勤」に当たります。

 ②派遣元と派遣先事業場との間の移動については、それが派遣元または派遣先事業主の業務命令によるものであれば一般に業務遂行性が認められます。ですから、こちらは「業務上災害」となります。

 いずれも、派遣元の保険関係で処理することに違いはありません。



6.助成金情報

 人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)

 生産性向上のための人事評価制度と賃金制度の整備を通して、生産性の向上、賃金アップおよび離職率の低下に取り組む事業主に対して助成するものです。

 人事評価制度と賃金制度を整備・実施し、賃金アップを図ることで従業員の職場定着を図り、人材不足を解消しましょう。


助成金支給までの流れ



7.コラム  ~外国人労働者の受け入れ体制~

 あと数日後の4月1日から新しい在留資格「特定技能」での外国人労働者の受入れがスタートします。

 昨年の秋ごろからバタバタとスタートしてあっという間に始まる気がしますが、肝心な日本社会での受け入れ態勢が整っていないことが心配です。日本経済新聞が22日に実施した世論調査によると、「経済に好影響がある」と回答した人は44%(悪影響は30%)であったのに対して、「外国人労働者の増加に不安を感じる」と回答した人は62%となりました。経済の活性化のためには外国人を必要とするが、同じコミュニティの一員としては距離を置きたい、そんな本音が透けて見える感じがします。

 そもそも、「何のために外国人を受け入れるのか?」、「日本社会はどのような将来に向かっていくのか?」そのような大枠のビジョンが示されないまま、対処療法的に人が少ない現場に外国人を送りこみ急場をしのごうとするように見えてしまいます。例えば、「特定技能」での受入れにあたっては、生活ガイダンス、日本語教育、住居の確保、空港への送迎などを含む受入れサービスを入国在留管理庁に登録した民間企業が実施することになっていますが、根本的な国民とのコンセンサスが取れていない状況では“単に法的に求められている最低限のサービスを提供しただけ”となり、その成果も表面的なものになりかねません。

 外国人が日本で安心して仕事に励み家族と平和に暮らすことにより、国籍の差はあったとしても日本社会のことを気に入ってくれ、その発展のために貢献していく、そのようなプラスの循環を生むことが重要だと考えます。今後、ACROSEEDでも多くの在日外国人向けのサービスを提供していきますが、この根本的な考えを具体化し、来日した外国人と日本社会の両者に貢献できるサービス体制を築いていきたいと思います。