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メールマガジン2019年05月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年05月 Vol.124

1.人事・総務ニュース

先行大手は1352円アップ ~2019春季賃上げ交渉~


 先行して春季賃上げ交渉に入った大手企業では、賃上げを獲得した45組合の獲得額平均(賃金カーブ維持分除く)は1352円でした。前年を下回ったものの、91.8%が定昇分とは別のベースアップ分を含む賃金改善原資を獲得しました。

 金属労協(自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線で構成、略称JCM)の髙倉議長は、「月例賃金にこだわった成果」と評価しました。

 集中回答日以降、他産業でも業界大手を含む中堅中小の回答引き出しが行われ、労働新聞社による途中集計で、92組合の平均(賃金改善分)は1215円となり、大手同様前年を200円ほど下回っている状況です。

 景気後退局面もささやかれていますが、深刻な人手不足を受け、経営者側も人材確保に向けて、相応の歩み寄りを示した形です。典型は外食等サービス業の2000円を超す賃金改善で、トライバー不足に悩む運輸業も前年比600円以上を上積みしています。



契約社員へ退職金支払い命令 ~有期の不利益取扱いで判決~


 地下鉄駅内の商品販売等を行う会社の元契約社員が、正社員との格差を不合理として訴えた裁判で、東京高裁は退職金の一部支払い等を命じる判決を下しました。

 本裁判は、労契法20条(有期契約を理由とする不合理な取扱いの禁止)が施行(平成25年4月1日)されて間もない時期に提起されたもので、世間の高い注目を集めました。しかし、1審(東京地裁)は、早出残業手当の割増率を除き、請求を棄却していました。

 一方、2審(東京高裁)では、功労報奨的な性格が含まれる退職金を、長期勤務者に一切払っていないのは不合理と判断、正社員の4分の1の支払いを命じています。

 判断が分かれた原因として、1審では契約社員の「職務内容」「人材活用の仕組み」等について広く正社員全体と比較すべきとしたのに対し、2審では売店業務に従事する正社員のみを比較対象とすべきという立場を採った点が挙げられます。



外国人材派遣会社を設立 ~特定技能スタートで~


 特定技能の創設を含む改正入管法は、年度末の3月に関連政省令・告示も整備され、4月1日から施行されています。特定技能制度の対象となる14業種のうち、農業・漁業については労働者派遣形態も認められています。

 長崎県では、農業分野に外国人材を派遣する専門会社、㈱エヌが設立され、5月のサービス開始を目指しています。

 通年受入れが難しい場合、農家がJAに作業を発注し、JAが年間を通した業務にまとめます。エヌがJAに外国人を派遣し、収穫期のみ等のスポット・ニーズに応えます。

 人材確保のため、ベトナムの大学と連携し、技能実習修了生等の来日を呼びかけます。



2.職場でありがちなトラブル事情 


 正社員をパートに降格したい ~ミス連発で引受け部署なし~

 今回は、珍しく事業主サイドが申請人となったケースです。

 従業員Aさんは製造業B社に正社員として採用され、部品組立て作業に従事していましたが、作業ミスが多いため、作業長も最後にはサジを投げる状態に至りました。B社では製造部門で配転を繰り返しましたが、いずれも上司が音を上げて、他部署への配転を上申してきます。

 その後、事務部門に異動させましたが、発注・コピーミス等が多いうえに、作業スピードも極端に遅く、用品の紛失等も続きます。

 最終的に、パートに身分変更し、清掃業務に従事させるという案が出されましたが、Aさんは頑として拒否します。万策尽きた事業主が、あっせんを申請したものです。


従業員の言い分


 どこの部署の上司からも及第点をもらえませんでしたが、いわれた仕事はまじめにやってきたつもりです。

 正社員で採用された人間が、パートで清掃業務に従事するという話は聞いたことがなく、会社の提案は不当と考えます。



事業主の言い分


 会社として、雇用を継続するため最善の努力を尽くしましたが、受け入れられる部署がないため、やむを得ず清掃業務への転換という提案をさせてもらいました。

 当社の経営状態からいって、正社員として、このまま働いてもらうことは到底できません。パートへの転換が受け入れられないというのなら、解雇するほか選択肢がありません。



指導・助言の内容

 事業主に対しては、正社員からパートへの身分変更を強制する権限が会社側にない点を説明しました。しかし、事業主は「労働条件の変更を受け入れなければ解雇する(変更解約告知)」という姿勢を崩しません。

 従業員側もプライドが高く、両者の歩み寄りは困難に思えましたが、あっせんの途中で、Aさんの方から「半年後に結婚するので、その時点で自己都合退職という形にしたい」という申し出があったので、その方向で会社と合意点を探りました。



結果

 会社とAさんの間で、「今後も正社員の身分は変更せず、半年後の平成〇年〇月〇日に自己都合退職する」という内容の和解契約が結ばれました。



3.中企庁「長時間労働につながる商慣行に関するWEB調査」

 長時間労働の抑制は「働き方改革」の課題の一つです。時間外をうまく削減できれば、人件費の圧縮にもつながります。

 しかし、繁忙期に突入すれば、あるいは短納期の仕事を受注すれば、業務の完遂が至上課題で、時間外の問題は棚上げになってしまいます。

 業種別にみると、繁忙期の発生率が高いのが建設業と小売業、短納期受注に泣かされているのが建設業と製造業です。


 繁忙期になると、1カ月の時間外が法定上限(特別条項発動時)の100時間を超える企業も少なくありません。建設業は当面経過措置がありますが、それ以外の業種では、この難問にどのように対応するのか、実に悩ましい限りです。




4.身近な労働法の解説


 賃金支払いの5原則(1)

 4月入社の新入社員は、いよいよ初めての給料日を迎えます。毎月の給与明細は、さまざまな情報が載っている賃金の支給と控除の計算書です。

 賃金の支払いの原則について、3回にわたり解説します。


1. 給与明細の主な記載項目


・「2019年4月給与」などの表示、氏名、社員番号、所属などの属性
・勤怠内容(出勤日数、労働時間数、時間外労働時間数など)
・支給項目(基本給、通勤手当など)
・控除項目(社会保険料、税など)
・差引支給額、銀行振込額、支給控除累計など

 その他、年次有給休暇の残日数や社長からのメッセージを載せる会社もあります。給与明細は近年、電子化・Web化が進んでいます。


2. 給与明細を作成する根拠

 控除額の通知に関しては、健康保険法(167条3項)および厚生年金保険法(84条3項)において、「事業主は(中略)保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない」とあります。労働保険徴収法(32条)や所得税法(231条)にも類似の条文があります。

 また、給与を口座振込等する場合には、個々の労働者に対し、所定の賃金支払日に、次の①〜③の金額等を記載した賃金の支払に関する計算書を交付することとされています。(平成10.9.10基発530号)

①基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
②源泉徴収税額、労働者が負担すべき社会保険料等賃金から控除した金額がある場合には、事項ごとにその金額
③口座振込み等を行った金額

 計算書としての機能を活用し、出張等の経費精算を併せて行う会社もあります。


3.賃金支払いの5原則

労働者の経済生活を支える大切な賃金ですので、支払いについての原則が5つ定められています。(労基法24条)

(1) 通貨払いの原則
(2) 直接払いの原則
(3) 全額払いの原則
(4) 毎月1回以上払いの原則
(5) 一定期日払いの原則



5.実務に役立つQ&A


育休中に兼業は? ~給付金がストップするか~

 育休中の副業・兼業は、育休の終了事由でしょうか。そうでなくても、本業のほか他社で働いたときに育児休業給付金はどうなるのでしょうか。


 会社からみれば、休業を取得した従業員が他社で働くのは、腹立たしい限りです。

 「無許可の他社就労について本人に問責はできます」(平28・8・2雇児発0802第3号)が、育休の直接的な終了事由とはされていません。

 休業取得者が一時的に働くとき、①就業日が月10日を超え、かつ、就業時間が80時間を超えるときには休業と認められません。この範囲内でも、②育休中に賃金が支払われれば、給付金が減額される場合(賃金と給付金の合計が賃金の8割以上の場合)があります。

 兼業の場合、①就業日数(時間)の算定は、自己申告に基づき、他社分も含め上記上限を超えると給付の対象となりません。②の賃金については、雇保の被保険者となっていない事業所から支払われた賃金は含まないと解されています(厚労省「育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について」)。



6.助成金情報

 人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

 先月号に引き続き「人材確保等支援助成金」をご紹介します。「人材確保等支援助成金」は従来の「職場定着支援助成金」に新設の「設備改善等支援コース」を加えながら整理統合されたものです。

 今回はそのうち「雇用管理制度助成コース」について解説します。

 事業主が、新たに雇用管理制度(評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度(保育事業主のみ))の導入・実施を行い、雇用管理制度の適切な運用を経て従業員の離職率の低下が図られた場合に目標達成助成(57万円(生産性要件を満たした場合は72万円))を支給するものです。


・従業員の処遇改善のために、評価・処遇制度を導入したい
・新入社員研修、5年目フォローアップ研修、管理職研修など、社員の段階に応じた階層別研修制度を整備したい
・法令に定める定期健康診断とは別に、社員の健康維持のために健康づくり制度を導入したい
・早期離職防止のために、先輩社員がよき相談者となってくれるよう、メンター制度を導入したい


雇用管理制度助成制度の助成金支給までの流れ

1.雇用管理制度整備計画の作成・提出
2.認定を受けた雇用管理制度整備計画に基づく雇用管理制度の導入
3.雇用管理制度の実施
4.目標達成助成の支給申請(算定期間(計画期間終了後12カ月間)終了後2カ月以内)
5.助成金の支給〈目標達成助成〉57万円(生産性要件を満たした場合72万円)


目標達成助成の基本的考え方

 計画書の作成、提出から遡った12カ月間と雇用管理制度整備計画期間から12カ月間の離職率を比較して離職率を目標値以上に低下させること

 参考:離職率の算出方法の基本的考え方


 「所定期間」は算出する離職率(計画時離職率・評価時離職率があります)により異なります。


低下させる離職率ポイント(目標値)


支給額は目標達成助成が定額で以下の金額

57万円(生産性要件を満たした場合72万円)


生産性要件とは

助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が
・その3年度前に比べて6%以上伸びていることまたは、
・その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること(※)
※金融機関から一定の「事業性評価」を得ていること。



7.コラム  ~外国人の増加と犯罪率~

 現在、外国人の単純労働での受け入れをめぐってその是非が問われていますが、その際に必ず出てくる課題の一つに“犯罪の増加“があります。既に日本には223万人以上の外国人が居住しており、外国人犯罪に関しては、警視庁刑事局組織犯罪対策部が「来日外国人犯罪の検挙状況」(平成28年3月)という資料にまとめています。それによると平成17年に約48,000件の検挙があった時がピークで、その後は減少し、平成24年以降は14,000件程度で横ばいとなっています。在留外国人の人数が確実に増加している状況で検挙率が横ばいということは、実質的には犯罪が減っていることが想定されます。

 それでは日本人と外国人の検挙の割合はどうなっているのでしょうか?これについては以下のようなデータがあります。


 これをみても平成17年がピークとなり、平成22年ごろからは横ばいとなっています。過去5年程度では外国人犯罪の検挙割合は2.6%程度が続いており、日本全体の検挙数が100件とすると、そのうちの2~3件が外国人による犯罪ということになります。

 これを多いと捉えるか、少ないと捉えるかは人により異なりますが、今後は日本に住む外国人数が増加することは確実です。その中で外国人による犯罪を減らすためには、就労へのスムーズな移行、地域社会との交流、教育制度や福祉インフラの整備などが求められ、外国人が日本社会で問題なく生活できる環境づくりが重要となってきます。