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メールマガジン2019年06月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年06月 Vol.125

1.人事・総務ニュース

「医療」「情報」を分離新設へ ~労災保険で新業種区分~


 厚生労働省は、労災保険の適用区分に関する業種区分を見直し、「医療業」と「情報サービス業」を分離新設することが可能とする報告書をまとめました。

 いずれも現在は「その他の各種事業」に分類され、同一の労災保険率(現在は1000分の3)が適用されています。分離により、医療業等の災害発生率を反映した独立の保険率を設定する形となります。

 医療業には、病院、診療所のほか、保健衛生に関するサービスを行う事業、歯科技工士、動物病院等も含まれます。災害発生頻度が高いものの、重篤度は低いのが特色です。

 「情報サービス業」に該当するのは、ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット付随サービス業などです。災害発生頻度は低い一方で、精神障害等の重篤な災害が多発する傾向にあります。

 このほか「教育業」「社会福祉または介護事業」「幼稚園」「保育所」「認定こども園」も検討対象とされていましたが、今回は見送りとなっています。



鉄鋼4社が定年延長 ~65歳まで一貫処遇~


 定年延長で合意したのは、㈱神戸製鋼所、日本製鉄㈱、日鉄日新鉄鋼㈱、JFEスチール㈱の4社。2021年度に60歳へ到達する社員から適用を始めます。

 4社は、昨年の労使交渉から協議を続けてきました。定年延長により、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少に対応するほか、ベテラン層のモチベーション向上、現場力の維持・向上を目指します。

 処遇は、各社とも「65歳まで一貫した雇用形態のもとで、連続性のある給与・賞与制度を構築する」ことで合意しました。賃金カーブの修正、高齢者の役割の見直しなどについて、今後、詳細な制度設計を検討していく方針です。

 一方、働き方に多様性を持たせるという意味で、「60歳で退職金を受け取って再雇用区分へ移行する道を残すか否か」については、4社で対応が分かれそうです。



著しい短工期契約は禁止 ~建設業法改正案を上程~


 国土交通省は、建設業の「働き方改革の促進」等を目的とする建設業法等改正案を国会に提出しました。施行は一部を除き、公布から1年6カ月以内です。

 建設業で長時間労働の是正が進まない原因として、短納期発注の業界慣行が指摘されています。このため、通常必要と認められるより著しく短い工期による請負契約締結を禁止するとともに、違反発注者を対象に国交省・都道府県知事が勧告を実施し、従わない場合に企業名を公表する仕組みを整えます。

 そのほか、建設業許可の基準を見直し、社会保険への加入を要件化。現在は現場ごとに配置する監理技術者について、技士補が補佐できる制度も創設するとしています。下請けの主任技術者選任についても規制を緩和する方針です。



2.職場でありがちなトラブル事情 


 障害者だからと降格 ~業務に支障なしのはず~

 Aさんは手術を受けた後、身体障害者手帳(1級)を受けましたが、医師は業務に支障ない旨の診断書を出していました。

 しかし、会社はAさんを正社員から嘱託社員に身分変更し、雑務を担当させるといい出しました。理由は2つあります。

 第1は、手術以前の仕事が浄化槽管理業務で、体力面で心配があること。

 第2は、会社の業績が落ち込み、人件費の圧縮が求められることです。

 経営側の事情が分からなくもありませんが、「身体障害者手帳を受けた」というだけで待遇が大幅ダウンしたAさんは、納得できません。都道府県労働局のあっせんを選択しました。


従業員の言い分


 元の仕事に復帰できる点については、医者からも「お墨付き」を得ています。今回の取扱いは「障害者だ から」という先入観に基づく差別です。

 あるいは、本当の理由がリストラ推進というのであれば、もう少し誠意のある対応をしてしかるべきです。



事業主の言い分


 万が一、事故が起きたとき、「重度障害者にこのような体力仕事をさせた」と批判されるリスクを考えると、配置転換もやむを得ない処置としてご理解いただきたいところです。

 受注量減少により余剰人員が生じている現状からいっても、会社として正社員復帰を受け入れることは到底できません。



指導・助言の内容

 経営的な観点から元の労働条件に戻すことが難しいのであれば、会社として何か代替措置を講じられないかという方向で、双方の歩み寄りを促しました。

 Aさんの方で条件次第では退職に応じてもよいという意向が示されたので、金銭的な解決案を提示しました。



結果

 会社都合として退職金額を算定したうえで、解雇予告手当相当分の和解金を上乗せするという条件で、労使双方の合意が成立しました。



3.厚労省「平成30年賃金構造基本統計調査」

 いわゆる「同一労働同一賃金」の実現を求めるパート・有期雇用労働法は、令和2年4月1日施行(中小は1年の猶予)です。

 厚労省の賃金構造基本統計調査は、その名のとおり、姓別、企業規模や雇用形態により、賃金構造(賃金カーブ等)にどのような違いがあるかを明らかにするものです。

 正社員・正職員とそれ以外の賃金カーブを比べると、その差は明らかです。


 上記カーブをみると、特に男性の場合、正社員・正職員の賃金ピークが44万円なのに対して、それ以外は26万円で、格差は何と1.7倍です。

 企業規模別(ピークではなく、平均値による比較)にみると、大企業ではさらに差が広がることが分かります。




4.身近な労働法の解説


 賃金支払いの5原則(2)

 賃金は、労働者の経済生活を支える大切な基盤ですので、支払いについての原則が5つ定められています(労基法24条)。

 今号では、そのうち2つの原則について触れます。


1. 通貨払いの原則


現物給与を禁止している趣旨です。

(1)通貨とは

 日本で強制通用力を持つ貨幣および日本銀行が発行する銀行券をいいます(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律2条3項)。 外国通貨や小切手は、通貨に該当しないとされています。

(2)現物支給について

 定期券などの現物支給は、労働組合法でいう労働協約に別段の定めがあれば、労働協約の適用を受ける労働者に限り可能です。労働者の過半数代表者との協定では、現物支給はできません。

(3)口座振込

 銀行口座への振込については、労働者の同意を得た場合は、「労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金または貯金への振込」を認めています。また、要件を満たす証券総合口座への払込みも可能です(労基法施行規則7条の2第1項)。

(4)退職手当の支払いについて

 退職手当は、銀行その他の金融機関によって振り出された当該銀行その他の金融機関を支払人とする小切手を当該労働者に交付することで支払うことが可能です(労基法施行規則7条の2第2項)。


2. 直接払いの原則

 本人以外の者に賃金を支払うことを禁止する趣旨です。

(1)代理人への支払いは無効

 労働者の親権者その他法定代理人、委任を受けた任意代理人に賃金を支払うことは労基法違反となり、その支払いは無効です。したがって、未成年者であっても、代わりに親などに支払うことはできません。

(2)例外

 賃金の「代理人」への支払いは不可ですが、「使者」への支払いは差支えありません。労働者が病気欠勤中などで賃金を受け取れない場合に、家族などがその「使者」として賃金を受けることができます。 「代理人」と「使者」の区別は困難な場合が多いですが、社会通念上、本人に支払うのと同一の効果を生ずるような者(使者)であるか否かによって判断することとなります。

 最近では、資金移動業者の口座への支払いも解禁することで、キャッシュレス社会の推進や金融機関口座の開設が難しい外国人材の受入基盤整備に貢献するため、デジタルマネー等へのチャージを可能とする規制緩和についても議論が始まっています(国家戦略特区諮問会議)。



5.実務に役立つQ&A


被扶養者も届出が必要に? ~自転車の衝突でケガ~

 当社のパート社員が、休日に自転車とぶつかり、ケガをしました。労災には第三者行為災害の手続きがありますが、健保はどのような扱いでしょうか。パートは自分自身が被保険者ではなく、被扶養者です。


 第三者行為によりケガをした場合、加害者が治療費を負担するのが原則です。しかし、業務上や通勤災害でなければ、健保を使うこともできます。この場合、加害者が支払うべき治療費を健保が立て替える形になります。

 健保の保険者は、第三者行為により保険給付を行ったときは、その価額の限度で、被害者が第三者(加害者)に対して有する損害賠償権を取得します(健保法57条)。

 被保険者が保険給付を受けた場合、保険者に対して「第三者行為による傷病届」を提出する必要があります(健保則65条)が、被扶養者についてもその規定を準用する(同90条)とあります。ケガをした場合、書類上は過失の大小とは関係なく、被害者として記入する形になります(協会けんぽHP)。



6.助成金情報

 キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長コース・選択的適用拡大導入時処遇改善コース)

 労働者のみなさまの手取り収入の減少を防ぐと同時に、将来の年金等の受給額が増額されます。事業主のみなさまにとっても人手不足や人材確保の対策となります。



1.短時間労働者労働時間延長コース

有期契約労働者等の週所定労働時間を延長し、社会保険を新たに適用した場合に助成

【拡充その1】1人当たり支給額を増額:( )内は生産性要件を満たした場合の額


【拡充その2】支給申請上限人数を15人から45人に拡充


2.選択的適用拡大導入時処遇改善コース

 労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を実施する事業主が、雇用する有期契約労働者等について、 当該措置により新たに被保険者とし、当該有期契約労働者等の基本給を増額した場合(選択的適用拡大の導 入)に助成

 1人当たり支給額を増額:( )内は生産性要件を満たした場合の額


 生産性要件とは助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が ・その3年度前に比べて6%以上伸びていることまたは、 ・その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること



7.コラム  ~増える外国人起業家~

 日本に滞在する外国人数の増加に伴い、日本で新しいビジネスを開始する外国人起業家の数も増加しています。

 法務省発表「平成28年末現在における在留外国人数について」によると、2012年から2016年までの間に「経営・管理」という在留資格で日本に滞在している外国人は毎年2~3000人の割合で増加し、5年間の間におよそ2倍の1万人近くの増加となっています。

 政府が考える外国人起業家への期待は、なんといっても雇用の拡大ではないでしょうか。日本でビジネスを拡大し、税金を払ってもらい、なるべく多くの日本人を雇用してもらう、これこそが理想的な姿だといえます。

 そのため、海外在住者が日本での起業をやりやすくする「スタートアップビザ」を創設するなど、政府も努力していますが、現状ではあまり効果的とは言えないようです。アメリカのシリコンバレーのように世界中の起業家が押し寄せるような一大市場を創るためには、まだまだ道のりは遠そうです。

 しかし、新しい在留資格「特定技能」の創設などで日本に定住する外国人が増加すれば、日本企業で働いた経験を生かして自分でビジネスを始める人も増えるはずです。近い将来には、外国人社長の会社に日本人が雇用されることも珍しくなくなるかもしれません。当然、採用時のライバル企業が国際化された労働環境を備えている可能性が高くなります。

 日本企業が生き残るには、日本独自の年功序列、低賃金、低い労働生産性などの課題を今のうちから克服し、国際的な競争力を身に着けていくことが求められています。