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メールマガジン2019年07月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年07月 Vol.126

1.人事・総務ニュース

賃金の時効を延長へ ~厚労省検討会で議論~


 厚生労働省設置の検討会では、平成29年12月から、賃金等の消滅時効等に関する議論を行ってきましたが、現行2年から5年に延長する案が有力視されています。

 平成26年6月公布の改正民法(令和2年4月施行)では、一般債権について①権利を行使することができることを知ったとき(主観的起算点)から5年間行使しないとき、②権利を行使することができるとき(客観的起算点)から10年間行使しないときに、時効消滅すると規定しています。

 これに対し、現行労基法では、賃金(退職手当除く)等の請求権について2年の時効を定めていて、改正民法に対応した見直しが求められていました。

 検討会の議論では、改正民法(主観的起算点)と同一としないという特別な理由は提示されず、仮に消滅時効が延長されれば、賃金台帳の記録保存期間(3年)への影響等も考えられます。他方、年休請求権は、権利阻害のおそれがあるため、現行2年を維持する見通しです。



賃金債権の放棄認めず ~労組合意に効力なし~


 運送会社が労働組合と合意した賃金債権放棄について、最高裁は「組合員である労働者に効果が及ばない」という判断を示しました。

 経営不振に陥った運送会社は、当初、労組との間で「賞与を含む賃金の20%の支払いを一時的に猶予する」協約を締結しましたが、最終的に「カット分の賃金債権を放棄する」合意を取り交わしました。

 減額分の支払いを求める従業員に対し、会社は「決定権は労組に委ねられていた」と反論していました。

 最高裁は、「合意は会社と労組間のもので、賃金債権が放棄されたというためには合意の効果が労働者に帰属することを基礎づける事情が必要」と述べ、労働者側の主張に軍配を上げました。会社に元本分の支払いを命じ、遅延損害金の算定のため高裁に差し戻しています。



広がる「奨学金返済支援」 ~従業員に無利子貸与~


 人材確保などを目的に、若手社員の奨学金返済を支援する企業が増えています。

 ㈱広島銀行は、今年7月から、有利子奨学金の立替払制度を開始します。アパレル大手の㈱レナウンや小売業の㈱フジでも、4月に同趣旨の仕組みをスタートさせています。

 奨学金を利用する学生の割合は大学(昼間部)で49%に上っていて、返済義務を伴う「貸与型」の場合、給与水準の低い若手社員にとって負担は小さくありません。

 支援スキームは各社各様ですが、広島銀行は返済原資を「無利子で貸与する」スタイルを選択しました。同社広報では、その理由を「銀行員として借りたお金は返すという基本を大事にするため」と説明しています。



2.職場でありがちなトラブル事情 


 派遣は正社員応募の資格なし? ~不誠実な対応に怒り心頭~

 派遣社員Aさんは正社員登用を希望し、当初は派遣先の上司もその働きぶりを評価していました。しかし、具体的な話が進まない中、会社がハローワークに正社員募集の求人票を出すという話を耳にします。

 Aさんは上司に相談しましたが、案に相違して「派遣社員が応募しても見込みは薄い。派遣元との関係も悪化させたくないし」と冷たい返事。その後は、人間関係も気まずくなり、やる気も失せたために退職を選択しました。

 併せて、派遣先の対応に納得がいかなかったので、本社総務課に説明を求めるメールを出しました。ところが、こちらも「なしのつぶて」。思い余ったAさんが都道府県労働局の助言・指導を求めたのが本事案です。


従業員の言い分


 派遣を始めて1年が経過したころ、製造課長の方から「正社員でやりたくないか」と声をかけられました。その後、正社員と同じラインに入り、同様の作業も任されるようになりました。

 ところが、せっかく正社員募集の機会が生じたというのに、逆に製造課長からストップをかけられる形となりました。課長および本社総務課に対して、派遣社員の人事についてどのような方針・姿勢で臨んでいたのかキチンとした説明を要求します。



事業主の言い分


 メールによる問い合わせについては、派遣元会社や当社責任者とも協議し、事実関係等の確認も行いました。

 Aさんと電話でやり取りしたところ、正社員登用の経緯について誤解があったので、必要な説明を行い、当社としては既に責任を果たしたと認識しています。



指導・助言の内容

 電話による回答の有無については、双方のいい分に食い違いがあるため、会社に対して再度、文書により回答を行うように助言しました。

 仮に会社側が「派遣元との関係を考慮し、採用を見送った」のであれば、それは採用に関する権利侵害(および派遣法の趣旨にも抵触)となる点も指摘しました。



結果

 会社側が「Aさんの人事に関する一連の動きは製造課長の個人の判断によるもので、本社としてその内容を把握していなかった。今後は、雇用管理の改善に努める」と謝罪する回答文を提出し、Aさんも「既に別会社に勤務していて、復帰は求めない」という意向を表明し、決着しました。。



3.厚労省「平成30年職場における熱中症による死傷災害の発生状況」

 平成30年は記憶に残る猛暑の年でしたが、業務中に発生した熱中症のデータにもその影響が表れています。

 休業4日以上の業務上疾病者の数は1178人で、例年の2倍を超える水準でした。死亡者数も28人で、過去10年の平均を上回っています。

 厚労省は「STOP! 熱中症 クールワークキャンペーン」を実施していますが(7月は重点取組期間)、WBGT(暑さ指数)が基準値を大きく超える場合の作業短縮や、水分・塩分摂取の徹底が課題となります。


 熱中症が一番多く発生するのは、暑さがピークに達する午後3時台ですが、作業終了後に帰宅してから体調が悪化して病院へ搬送されるパターン(午後6時台以降)も少なくない点には留意が必要です。




4.身近な労働法の解説


 賃金支払いの5原則(3)

  賃金支払いについての原則5つ(労基法24条)のうち、今号では、前号の「1.通貨払いの原則」「2.直接払いの原則」に続き、残る3つの原則について触れます。


3.全額払の原則


賃金の一部を控除して支払うことを禁止する趣旨です。労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図るということです。

例外的に控除できるのは次の場合です。

(1)法令に別段の定めがある場合(社会保険料、税等)
(2)労働者過半数代表との協定(いわゆる「24協定」)がある場合(社宅使用料、社内預金、労働組合費など事理明白なものについてのみ)

なお、遅刻・早退等の欠勤分の控除は、ノーワークノーペイの原則により労働者に賃金請求権がない場合、全額払いの原則の問題にはなりません。

 また、賃金計算ミスなど過払い分の賃金を相殺して調整することは、予告をする、多額ではないなど、経済生活の安定が害されるおそれがない場合に、全額払いの原則に違反しません。

4.毎月1回以上払の原則

賃金は少なくとも月に1回以上支払わなければならない趣旨です。賃金支払期の間隔が開き過ぎることによる労働者の生活上の不安を除くことを目的としています。

 毎月とは、暦日で毎月1日から末日までです。年俸制であっても、分割して毎月支払わなければなりません。なお、毎月一定額である必要はありません。


5.一定の期日払の原則

 日を特定して賃金を支払わなければならない趣旨です。 支払日が不安定で間隔が一定しないことによる労働者の計画的生活の困難を防ぐことを目的としています。

特定とは、「毎月25日」などの暦日や、月給制の「月の末日」、週給制の「金曜日」などでも差し支えありません。

 ただし、「毎月第2土曜日」など、月7日の範囲で変動するような期日は定められません。 なお、所定支払日が休日にあたる場合は、支払日を繰り上げまたは繰り下げて支払うことが認められています。

なお、毎月1回以上払の原則、一定の期日払の原則については、以下3種の賃金について例外が認められています。

・臨時に支払われる賃金(退職手当、私傷病見舞金等)
・賞与(定期的に支給されかつ支給額が確定しているものは該当しません)
・その他上記に準ずるもので労働基準法施行規則第8条に掲げる算定期間が1カ月を超える精勤手当、勤続手当、 能率手当等



5.実務に役立つQ&A


養育期間の申出したい ~短時間勤務後も制度を失念~

 女性従業員が、産休から復帰後、短時間勤務を選択しました。会社の説明が不十分だったこともあり、3歳未満の子を養育する被保険者を対象とする「養育期間特例」の申出をしていませんでした。「今からさかのぼって」申出できるのでしょうか。


 養育期間特例(厚年法26条)とは、子が3歳までの間、勤務時間短縮等の影響で標準報酬月額が低下した場合、子供が生まれる前の標準報酬月額に基づき年金額を計算する仕組みです。実際より高いみなし標準報酬月額を用いるので、年金計算上有利となります。

 申出ができるのは、法律の条文上、「3歳に満たない子を養育し、または養育していた被保険者または被保険者であった者」となっています。

 たとえば、育児休業期間中の保険料免除については、申出は「休業中に行わなければならない」とされています(年金機構HP)。

 しかし、養育期間特例は養育期間終了後や、被保険者資格喪失後も可能です。ただし、その効果は「申出が行われた月の前月までの2年間」に限られる点には注意が必要で、早めの手続きを心がけるべきでしょう。



6.助成金情報

 受動喫煙防止対策助成金(2020年4月からの健康増進法改正にむけて)

 健康増進法が改正され、2020年4月から原則屋内禁煙が義務化されます。2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに段階的に施行するとされています。

 基本的考え方は①「望まない受動喫煙」をなくす、②受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者等に特に配慮する、③施設の類型・場所ごとに対策を実施するということです。国および地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めるとされています。そのため、喫煙専用室等の設置に係る予算・税制上の措置をとることとされ、飲食店等における、受動喫煙防止対策として一定の基準を満たす喫煙専用室等を整備する際、その費用について助成を行います。

 職場での受動喫煙防止対策を行う際には、費用の一部を支援する「受動喫煙防止対策助成金」をぜひご活用ください。



1.対象事業主

1 労働者災害補償保険法の適用事業主であること
2 一定の要件を満たす中小企業事業主であること※
※中小企業とは、原則として次の表のAまたはBいずれかを満たす企業が該当します。


2.助成対象となる措置

1 喫煙専用室の設置・改修
2 加熱式たばこ専用喫煙室・シガーバーなどの設置・改修
3 屋外喫煙所(閉鎖系)の設置・改修
4 換気装置などの設置・改修(既存特定飲食提供施設のみ)

上記1から4の措置にかかる工費、設備費、備品費、機械装置費など

3.助成率・上限額

助成率:2分の1(飲食店を営んでいる事業場は3分の2)


4.留意事項

 この助成金の受給にあたっては、喫煙専用室の設置などの事業計画の内容が技術的および経済的な観点から妥当であることが必要です。そのため、特に経済的な観点の目安として、単位面積当たりの助成対象経費の上限額が定められています。例えば、喫煙専用室の設置・改修では60万円/㎡とされています。

 その他、必要書類、実績報告の方法、申請手続きの流れ等についての制度の詳細は厚生労働省HP「受動喫煙防止対策助成金・職場の受動喫煙防止対策に関する各種支援事業(財政的支援)」等を参照してください。



7.コラム  ~外国人留学生のサービス業、製造業での就労~

 2019年5月30日、法務省告示(※)が改正され、外国人留学生が就職時に、飲食店や小売店での一般的なサービス業務や製造業務に就くことも、一定の要件を満たせば可能となりました。この制度は、日本の大学卒業者が日本国内にある企業において、日本の大学等において修得した広い知識、応用的能力等のほか、留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として、幅広い業務に従事する活動を認めるものです。従来の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格においては、一般的なサービス業務や製造業務などがメインとなる職務は認められませんが、この制度においては一定の要件を満たせば、次のような活動も可能となります。

 【参考例】

 小売店で、日本人に対する接客販売業務を行うことを含み、仕入れや商品企画等とあわせて通訳を兼ねた外国人客に対する接客販売業務を行うもの。
(商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事する業務は該当しません)


 ただし、業務独占資格が必要となる法律上、資格を有する方が行うこととされている業務及び風俗関係業務に従事することは認められません。また、職務内容としては、「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」であることが求められます。「翻訳・通訳」の要素のある業務や、自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ、他者との双方向のコミュニケーションを要する業務が該当します。単に雇用主等からの作業指示を理解し、自らの作業を行うだけの受動的な業務は該当しません。

 日本の4年生の大学の卒業者、日本語試験N1以上などの条件はありますが、今後は製造業、サービス業、飲食業、宿泊業などでも幅広く外国人が雇用されていくことになります。