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メールマガジン2019年08月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年08月 Vol.127

1.人事・総務ニュース

労働関連3法が国会成立 ~施行日確認し対応を~


 第198回通常国会には、人事労務に関連の深い法案が3つ提出されていました。いずれも順調に可決・成立し、経営者・実務担当者は、施行スケジュールを踏まえつつ、対応していく必要があります。  近々に提言をまとめる予定で、その後、労働政策審議会の論議を経て法改正につなげる方針です。

【女性活躍推進法等】

 一番の注目は、パワハラ防止の措置義務化です(労働施策総合推進法の改正)。

 事業主の措置義務は、「厚生労働大臣が指針で定める」としています。セクハラ・マタハラと同様の指針が、いずれ告示される予定です。パワハラも、都道府県労働局の紛争解決援助制度の対象となります。

 施行は「公布日(6月5日)から1年以内」ですが、中小の措置義務等については3年間の猶予(努力義務)が設けられています。

 女性活躍推進法関連では、一般事業主行動計画の策定義務の対象を100人超に拡大するほか、「プラチナえるぼし」の認定制度もスタートさせます。施行は、前者が「6月5日から3年以内(一部1年以内の事項もあり)」、後者が「同1年以内」です。

 均等法関連では、セクハラ・マタハラ相談に対する不利益取扱いの禁止等がポイントで、施行は「6月5日から1年以内」です。

【健康保険法等】

 健保の被扶養者の要件として、「日本国内居住(一定範囲で例外)」を定める等の改正を実施します。施行は、令和2年4月1日です。

【障害者雇用促進法】

 短時間労働者の雇用促進策として、特定短時間労働者(週10時間以上20時間未満)を対象とする特例給付金制度を創設するほか、障害者雇用の優良事業主(300人以下)を認定する仕組み等を整備します。施行は、令和2年4月1日です。



女性管理職比率25%に ~人的ネット形成が奏功~


 薬業のMSD㈱は、管理職(課長級以上の役職を指します)に占める女性比率を25%以上とする目標について、予定(2020年)より2年早く達成したと公表しました。

 女性の管理職とその候補者を集めてネットワークを形成し、悩みごとなどに関する意見交換を実施してきたことが、早期の目標達成につながった大きな要因です。

 このほか、管理職の計画的な育成を進めるほか、役員間で進捗状況の管理を実施するなど、きめ細かな対応が功を奏したとしています。

 次のステップとして、2025年までに女性管理職比率と全社員に占める女性比率をともに40%以上とする等の新目標も掲げています。



2.職場でありがちなトラブル事情 


 「集団いじめ」に遭って孤立 ~裏で責任者が糸を引く~

 スーパーの品出し・レジ係として勤務するパートAさんは、仕事の方法をめぐって責任者と衝突したことで、いじめを受けるようになりました。

 会社はチェーン店が複数あり、労務管理は本社で一括していて、個々の店舗では人事トラブルに対応する体制が整えられていませんでした。

 責任者はAさんに対して直接つらく当たるだけでなく、同僚にも“いじめ”に加わるように強制します。誰もその横暴なやり方に逆らうことができません。

 店長に相談しても取り合ってくれないために、孤立したAさんは都道府県労働局長の助言・指導を求めました。


従業員の言い分


 些細な言い合いをきっかけとして、全従業員共通の伝達事項を教えてくれなかったり、シフトを組む際にも不利益を受けたりするようになりました。

 周りの同僚も仲裁してくれるどころか、「おまえがのろまだから、職場みんなに迷惑が掛かっている」などと、尻馬に乗って私をいじめる者さえいます。



事業主の言い分


 会社では、いじめ等のトラブルが発生した場合には、「苦情相談窓口」で処理していますが、入社後半年のAさんは窓口の存在をご存じなかったようです。

 結果として、「窓口」では現場のトラブルの発生自体を把握できず、対応が後手に回ってしまった感は否めません。



指導・助言の内容

 本社に対して相談の内容を説明し、「申出が事実であるかを確認し、問題があれば、即刻改善するように」と伝達しました。

 本社からは、「直ちに現場関係者やAさんから事情を聴くとともに、協議を行う」旨の回答がありました。



結果

 本社から「事実関係を確認した後、責任者および同僚に謝罪させるとともに、責任者の配置換えを行いました。Aさんに対しては、トラブルがあれば本社窓口に直接連絡するようにアドバイスしました」と連絡がありました。その後は、Aさんも元の職場で明るく働いているということです。



3.日本生産性本部「第16回 日本的雇用・人事の変容に関する調査」

 政府は、いよいよ「70歳まで雇用」の努力義務化を図る方針です。 人手不足も追い風となり、企業サイドも「60歳以降の雇用確保」に関して、前向きな姿勢を示しています。

 現時点では、定年60歳で65歳まで再雇用制度のみで対応する企業が75.5%を占めています(図表1)。しかし、その比率は2年前(89.5%)と比較すると、14.0ポイントも低下しています。

 定年を65歳以上に設定している(引き上げた)企業も、2年前の5.3%から10.8%に倍増しました。

 定年を65歳未満に設定している企業(80.4%)を対象に、定年延長の意向を尋ねた結果は図表2のとおりです。

 「定年延長」が2.4%、「延長の方向で検討」が13.4%で、いずれも2年前より比率が高まっています。

 「予定なし」の比率は、2年前の41.9%から17.1%に急落しています。




4.身近な労働法の解説


 24協定(賃金控除に関する労使協定)

  前回まで、賃金支払いについての5原則について解説してきました。そのうち、「全額払の原則」において、例外的に賃金から控除できる場合があります。 ① 法令に別段の定めがある場合(社会保険料、税等) ② 労働者過半数代表との協定(いわゆる「24協定」)がある場合 今回は、給与天引きしたいときに締結が必要な労使協定「24協定」について解説します。


1.全額払の原則の例外(労基法24条1項ただし書き)


 労基法24条1項では、労働者に賃金を全額支払うことが定められ、その例外として同項ただし書きで、過半数代表との労使協定がある場合は「賃金の一部を控除して支払うことができる」と定めています。

 「社宅使用料」「社内預金」「親睦会費」といった福利厚生費など、社内ルール等に基づいて給与天引きしたい場合は、労使協定を締結する必要があります。 労使協定にないものは、個別の同意なく一方的に控除することはできません。



2.労使協定の内容について


 協定の書式は任意で、労使間で話し合った結果を記載します。 東京労働局の「法令・様式集」から協定書の参考書式をダウンロードできます。

(1)控除項目の記載

 「会社は、毎月○日の賃金の支払いの際、次に掲げるものを控除して支払うことができる」など、賃金支払いの際に控除して支払うことができる旨と、控除できる項目を記載(列記)します。 記載されないものは一方的に控除できません。 控除できる項目は、労働者にとって福利厚生の面でプラスに働くものなど、根拠や金額が明確(事理明白)なものについてのみとされています(昭27・9・20基発675号)。

(2)有効期間等

 有効期間を定める必要はありません。 「この協定は、令和○年○月○日から有効とする」など、協定の効力の開始日を定める場合もあります。

(3)更新条項

 有効期間を定めた場合は「有効期間満了の1カ月前までに、会社または社員代表のいずれからも異議の申し出がないときは、この協定はさらに1年間有効期間を延長する」といった更新条項を定めます。 有効期間を定めていない場合は「破棄の通告をしない限り効力を有する」など定めておきます。

(4)協定内容に変更があったとき

 新たな協定を結び直す方法があります。その際は従前の協定書を無効にするため「平成○年○月○日締結の協定書は本協定締結をもって破棄する」旨を記載することが一般的です。


3.労使協定の届出について

 労基署への届出は不要です。



5.実務に役立つQ&A


事務室内で熱中症に? ~「暑熱な場所」の定義は~

 オフィス内で作業する従業員が、熱中症を訴え、労災請求したいといいだしました。会社として協力にやぶさかでないですが、一般に熱中症が起きる「暑熱な場所」とはどう解釈するのでしょうか。


 業務上の疾病の範囲は、労基則で定められています。「暑熱な場所における業務による熱中症」(労基則別表1の2台2号8項)とは、一般的に体温調節機能が阻害されるような温度の高い場所における夏季の屋外活動、炉前作業等が該当します(昭53・3・30基発186号)。

 

 ご質問に近いケースとして、事業場内で作業中に熱中症にり患したとして、労働保険審査会が再審査した裁決例があります。結果は、棄却(業務外)という判断でした。

 

 裁決では、当時の室温は28度程度と推定し、暑熱な場所ではないとしています。事務所衛生基準規則5条3項は努力義務ですが、適切な温度範囲を「17度以上28度以下」と定めています。軽作業であり、服装も通気性が悪いとは認められないことも考慮要素とされました。



6.助成金情報

 人材確保等支援助成金(設備改善等支援コース)

 人材確保等支援助成金のうちの新コースです。生産性向上に資する設備等への投資を通じて生産性向上、雇用管理改善(賃金アップ等)を図る事業主に対して費用の一部等を助成します。

 助成を受けるためには、雇用管理改善計画(生産性向上に資する設備等を導入すること、雇用管理改善に取り組むこと等)を作成し、都道府県労働局の認定を受け、計画に基づく設備等の導入、賃金アップ等の実施が必要です。

 事業所が新設備を導入することで生産性が向上し雇用管理改善が進めば助成金を支給するとするものです。事業主が主にハード面を強化することで生産性を向上させることを目的としています。

 今よりも高性能な設備に更新し生産性を高めてその分労働者の負担を軽減したい事業主等にお勧めです。



1.支給対象となる設備等

各種機器やシステム、ソフトウェア等の生産性向上に資する設備等を導入すること(設置工事等を含むことができます)。

2.助成金の支給の対象から除くもの

・パソコン(タブレット端末・スマートフォンおよび周辺機器)
・生産性向上に資する特殊用途自動車以外の自動車
・福利厚生のための設備等
・労働者の自宅等に設置する設備等(テレワーク用通信機器等)

3.申請手続きの流れ等

 雇用管理改善計画期間のタイプ、申請期間等の詳細は厚生労働省HP「人材確保等支援助成金(設備改善等支援コース)」等を参照してください。


4.計画期間のタイプ、設備導入費用の額により一定額を助成




7.コラム  ~永住権取得の要件、厳格化!~

 2019年5月31日に「永住許可に関するガイドライン」が改正されました。主な点は以下のとおりです。 1.「特定技能1号」、「技能実習」による滞在期間は、永住申請に求められる10年在留には含まない。 2.「高度専門職」70点以上の人は3年の滞在で10年在留を満たすものとする。 3.「高度専門職」80点以上の人は1年の滞在で10年在留を満たすものとする。

 上記はご存知の方も多いかと思いますが、この変更を踏まえてか、1月ほど前から出入国在留管理庁の永住申請の必要書類が何の告知もなく、さりげなく変更されています。従来、「社会保険の加入は雇用企業の問題であり、そこで勤務する外国人従業員は無関係」という対応でしたが、今後は正当な理由なく社会保険に加入していない場合には永住申請できないことが明確になりました。近い将来にはコンプライアンス対応が不十分な企業は、外国人からの応募もなくなることになります。

【技術・人文知識・国際業務の方が永住申請する場合】(主な変更点)

1.従来:直近3年分の所得・納税状況を証明する資料
  ⇒改正:直近5年分の所得・納税状況を証明する資料
2.従来:記載なし
  ⇒改正:過去2年間の公的年金・医療保険の納付状況を証明する資料


 現在、「特定技能」等で外国人雇用をお考えの企業が増えていますが、「外国人だから安く使える」、「外国人だから3Kでも我慢してくれる」…もはやそんな考えは通用しません。ビジネスで収益を出し、ワークライフバランスがとれる適正な労働環境を提供する、当たり前のことですがこれができない企業は日本人はもちろん、外国人の働き手もいなくなります。年々高まるコンプライアンス意識の高揚に伴い、淘汰される企業が増えそうです。