1. 東京都千代田区・社会保険労務士法人ACROSEED
  2. メールマガジン
  3. メールマガジン2019年09月号

メールマガジン2019年09月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年09月 Vol.128

1.人事・総務ニュース

取引先のパワハラが原因 ~ストレス過労死で遺族勝訴~


 男性元従業員の遺族が、過労死は取引先からのストレス等が原因と訴えた事件で、福岡地方裁判所は国の労災不支給決定の取消しを命じました。

 今年6月には、法改正によりパワハラ防止の措置義務化が実現しましたが、その基になった建議では「取引先等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為についても、指針等で取組を明確にすることが適当」という見解が示されていました。

 元従業員は、養殖業者に動物用医薬品を営業・販売する業務に従事していましたが、業務中に営業車内で心不全により死亡しました。遺族は労災請求しましたが、最終的に再審査請求でも棄却されたため、裁判を提起したものです。

 営業先の社長は、取引業者に対し理不尽な叱責を繰り返し、出入り禁止を申し渡す等の対応を採っていました。しかし、死亡前6カ月の平均時間外労働が70時間前後だったため、労災申請が認められない状況となっていました。



労働者性拡張は見送り ~個人請負等の保護で検討会報告~


 厚生労働省は、「雇用類似の働き方」に関する検討会中間報告をとりまとめました。

 事業経営・運営方式の多様化が進み、個人業務請負、フリーランサー、自営型テレワーカーなど、労働法上の労働者ではないけれど「類似」の働き方をする人が増えている動きに対応するのが目的です。

 昨年10月に設置した検討会では、「類似ワーカー」に対して労働者性判断基準を拡張して対応するという案も示されました。しかし、中間報告では「これまでの判断基準を抜本的に再検討することとなるため、短期的に結論を出すことはできない」として、当面、拡張は見送りとしました。

 対策としては、「発注者から仕事の委託を受け、主として個人で役務を提供し、その対象として報酬を得る者」を中心として、独自の対策を講じるよう提言しています。

 ①契約条件締結等のルール明確化、②報酬の支払確保、③就業条件の整備、④紛争解決窓口の整備等の課題を解決するため、ガイドラインの策定等の具体的対策を検討していくとしています。



AI活用などで月10時間 ~残業の大幅削減目指す~


 京王電鉄㈱は、時間外の削減に向け、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)の活用に取り組んでいます。

 現在、全社平均で1人1月当たりの残業時間は20時間程度で推移していますが、本社で平均10時間を目指す等の目標を立てました。

 合計10個の作業をロボットに置き換え、同社グループの会員情報登録や電子マネーの清算業務に使用。関係グループ会社では、売上予測に基づき、販売員の効率的な勤務シフトに結び付けます。モバイルPC配布によるペーパーレス化も推進中です。

 そうした努力を基に、時間外・休日労働(36)協定の特別条項の上限時間削減も実現しました。



2.職場でありがちなトラブル事情 


 受付が医療上のアドバイス!? ~転籍させて清掃業務担当に~

 病院の受付を担当していたAさんは、ある日突然、病院から転籍出向を命じられました。転籍先は病院の清掃業務を請け負っている会社で、仕事内容も清掃です。

 Aさんは、以前、「病院の理事が懇意にしている来所者に対する応対に問題があった」として注意を受けたことはあります。しかし、それ以外には業務上の指導等の対象になったことはありません。

 しかも、病院では正社員だったのに、出向先での身分は期限1年の契約社員という話です。到底承服できないAさんは、都道府県労働局長の助言・指導を求めることにしました。


従業員の言い分


 理事の知り合いの方の一件を除き、自分では、キチンと役目を果たすよう努力してきたつもりです。

 今回の転籍の件については、自分の周囲を見回しても、同じような形で異動した人は1人もいません。仕事内容(業種)も全く異なるし、賃金をはじめとする労働条件も低下するので、なんとしても納得できません。



事業主の言い分


 Aさんは、普段から「専門資格等もないのに、いろいろと医療のことで患者に口出しする」ということで、苦情が寄せられていました。

   

 今回の転籍のキッカケも、Aさんが「医師の判断を得るべき医療上の内容」を患者に話したことです。当初は、病院の信用にもかかわるので、解雇も検討したところです。

 

 就業規則に出向の規定はありませんが、解雇に代わる処分として今回の転籍命令は重すぎるものではないと考えています。



指導・助言の内容

 まず、病院の設立以来、これまで出向させた実績はなく、就業規則にもそれを根拠づける規定が設けられていない点を確認しました。そのうえで、本人の同意を得ない出向命令は無効となるおそれがある旨を、病院に対し説明し、対処を促しました。



結果

 病院は出向命令を撤回し、Aさんは受付業務を継続することになりました。一方、Aさんの方も、病院に対し、本件を契機として業務態度を改める旨約束しました。



3.日本産業カウンセラー協会「2018年度・全国相談室・働く人の悩みホットライン」

 産業カウンセラーは、心理学的手法を用いて働く人たちが抱える問題を自らの力で解決できるよう援助します。日本産業カウンセラー協会の利用状況をみると、「働く人」がどのような問題に悩んでいるか、その傾向を知ることができます。

 2018年度に協会の相談室を訪れたのは5313人で、そのうち30.5%を中堅層の40歳代が占めました。

 「職場の問題」関連(複数回答)では、「仕事そのもの」に関する相談がトップで、男性の比率が女性をやや上回っています(およそ男性6に対し女性4)。第2位は「人間関係」ですが、こちらの悩みは女性の方が多くなっています(およそ男性4に対し女性6)。


 メンタル不調・病気関連をみると、「うつ」に悩む相談者は男性が84%を占める一方で、「パニック障害」は女性が85%の高率となっています。




4.身近な労働法の解説


 賃金計算時の賃金額の端数処理

  賃金計算の実務において、賃金額の端数処理を誤った認識で取り扱うと、労基法24条(賃金の支払)に違反するおそれがあります。今回は、賃金計算時における賃金額の端数の取り扱いについて解説します。


1.割増賃金計算における賃金額の端数処理


 時間外労働(法定労働時間を延長した労働)、休日労働(法定休日労働)、深夜業(午後10時から午前5時または午後11時から午前6時の労働)について、政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないとされています(労基法37条)。 割増賃金計算における賃金額の端数処理については、行政通達で次のような取扱いを認め、労基法24条および37条違反にはならないと解釈しています(昭63.3.14基発第150号)。

 ・1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げ(以下、四捨五入)ること
・1カ月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、四捨五入すること



2.平均賃金の端数処理

 計算した金額の銭未満の端数を切り捨てることは差し支えありません(昭22.11.5基発第232号)。※円未満ではありませんので、銭まで算出します。


3.その他の賃金額の端数処理

 通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律3条において、債務の弁済を現金の支払により行う場合の支払金の端数計算について、円未満を四捨五入することが定められています。 また、同条ただし書きにおいて、特約があるときは特約にしたがうとされていますので、就業規則や労働契約により取扱いを定めることもできます。 例えば、上記2の平均賃金を基にして休業手当等を計算する場合は、就業規則等に端数処理の特約があればその方法で、特約がなければ円未満を四捨五入します。

 雇用保険料や社会保険料を源泉控除する場合、控除後の賃金を支払う時点で同条による四捨五入を行うため、結果として控除額の端数処理は50銭以下の場合は切り捨て、50銭1厘以上の場合は切り上げとなります(五捨五超入)。被保険者から現金徴収する場合は、弁済がその時点であるため、同条により四捨五入できます。※特約があればその方法によることができます。


4.1カ月の賃金支払額における端数処理

 就業規則に定めることにより、次の取り扱いが認められています(昭63.3.14基発第150号)。

 ・1カ月の賃金額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に100円未満の端数が生じた場合は50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うこと ・1カ月の賃金額に1,000円未満の端数がある場合は、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと

 賃金計算の実務においては、法令や就業規則等に基づき労基法24条の全額払いの原則に反しない端数処理を給与ソフトに設定しておきますが、イレギュラーな計算の際には、留意が必要です。 また、行政通達(昭63.3.14基発第150号)では、賃金計算時における労働時間の端数の取扱いについても解釈がされていますので、確認しておくとよいでしょう。



5.実務に役立つQ&A


失業として処理されるか ~解雇に不満な労働者が求職~

 解雇された本人が、「不当な処分」として承服しない場合があります。それでもハローワークに行って、失業給付の手続きをすると解雇を認めたことになるのでしょうか。


 離職後に基本手当を受給するためには、ハローワークに出頭し、求職の申込みをしますが、その際、離職票等を提出します(雇保則19条)。従業員が会社から離職票を受け取ったからといって、解雇を認めたことにはなりません。

 

 解雇の効力等について争いがあるときは、「条件付給付」を受けることができます(雇用保険業務取扱要領)。「単なる効力の争い、解雇不服、争議上の事実上の争いがある場合には認められない」とされていて、給付手続きの際には、実際に争っていることが分かる添付資料が必要とされています。

 

 離職票の欄外に、解雇不当を申し立て、提訴、申告中であるが、手当の支給を受けたいので、資格喪失の確認を請求する旨記載(および押印・署名)して、基本手当(傷病手当含む)を受けます。



6.助成金情報

 人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)

 人材確保等支援助成金のうちの新コースです。働き方改革に取り組む中小企業で、人材を確保することが必要な事業主が、新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を図る場合に助成します。

 働き方改革に取り組む中小企業とは、時間外労働改善助成金(時間外労働上限設定コース、勤務間インターバル導入コース、職場意識改善コース)の支給を受けた中小事業主のことです。

 残業時間を減らすためや、有給休暇の取得をしやすくするために、従業員の採用を計画している事業主に向いています。



1.助成金の概要

 助成を受けるためには、新たに労働者を雇い入れることや雇用管理改善の取組(人材配置の変更、労働者の負担軽減等)に係る雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。認定された雇用管理改善計画に1年間取り組んだ後、各種要件を満たせば「計画達成助成」が支給されます。計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たせば「目標達成助成」が支給されます。


 ※ 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者

2.雇用管理改善の内容

人材の配置の変更、労働者の負担軽減等による雇用管理の改善の取組みについて、雇用管理改善計画に盛り込み、実際に実施する必要があります。例えば、以下のような取組みが考えられます。




7.コラム  ~留学生の就職と外国人雇用~

 最近は外国人雇用について各地でセミナーを依頼されることが多くなりました。特に地方では人手不足が深刻化しており、地元企業のお話をお伺いすると外国人留学生を正社員として受入れたいという切実な状況を実感します。

 しかも、ほとんどの企業が地元では名が通った優良企業であり、「現状では何とかなるが、今後10年先を考えたら外国人材を今から採用していかないと立ち行かなくなる」との思いから、各社ともに必死に努力されています。

 

 一方、やはりお仕事で東京の大学や専門学校などにお伺いするのですが、そこで必ず言われるのが、「ACROSEEDさんの知り合いで学生の就職先になりそうなところありませんか?」です。

 やはり日本人と比べると外国人留学生の方が就職率が悪く、何とか卒業後の勤務先を見つけてあげたいとのこと。理由としては企業が求める日本語レベルが高すぎたり、最終選考まで残っても日本人学生との競争になると負けてしまうことが多いようです。

 

 地方の優良企業が外国人材を欲しいと切実に望んでおり、もう一方では学生が日本企業に入りたいが就職先が見つからないと嘆いているこの状況。これだけ政府も民間も外国人材の活用に力を注いでいるにも関わらず、なぜうまくマッチングしないのか?

 日本社会のグローバル化に貢献するACROSEEDとして、何かお役に立てることがないか模索しています。