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メールマガジン2019年11月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年11月 Vol.130

1.人事・総務ニュース

会社パソコンで求人申込み可能に ~職安の紹介システムを一新~


 厚生労働省は、令和2年1月から、ハローワークの職業紹介システムを全面刷新します。自宅や会社のパソコンなどによる求職・求人申込みが可能となり、待ち時間の削減など、求人・求職者双方の利便性・効率性を向上させるのがねらいです。

 新システムでは、求人企業に「マイページ」を付与します。事業所のパソコンを通じてマイページを開設すれば、原則として窓口に書類を持参する必要がなくなり、採否連絡もマイページ経由となります。

 求人情報の発信時には、事業所の画像やメッセージなどPR情報を掲載することも可能となります。20年度以降の予定として、求人企業がオンラインで求職者情報(公開希望者に限定)を検索し、併せて求職者にコンタクトできる仕組みも整えます。

 求職者についてもパソコン利用(マイページ開設)による利便度を高め、ミスマッチの解消を図ります。同時に、労働市場のインフラ整備として「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」(仮称)の運用開始を急ぐとしています。



後継者試用雇用に補助金 ~世代交代を集中支援 中企庁~


 中小企業庁は、令和2年度、事業承継・世代交代集中支援事業をスタートさせます。今後10年程度の中長期スパンで、専門家派遣等の個別支援を強化するとともに、補助金制度も拡充する方針です。

 個別支援については、都道府県の「事業承継ネットワーク」による診断件数を拡大し、承継ニーズの掘り起こしを目指します。必要性が認められた企業に対しては、計画策定の支援や専門家派遣等のサービスを提供します。

 新設する承継トライアル補助金は、後継者不在の中小企業での第三者継承を促進するもので、外部から候補者を試行的に雇用する際の費用等を支援します。

 既存の事業承継補助金に関しては、新規事業に参入する際の支援を手厚くするなど、事業再編・業態転換などへの挑戦をさらに後押しする方向で見直すとしています。



資格取得届等をワンストップ化 ~労働・社会保険の手続簡素化へ~


 改正健保則等の公布により、令和2年1月1日から労働・社会保険関係の手続きが簡素化されます。

 たとえば、現行の資格得喪関連届出は、雇用保険がハローワーク、社会保険が年金事務所(日本年金機構)等と異なります。

 改正後は、協会けんぽの被保険者に限り、社会保険の届出を所轄労基署(取得時のみ)・ハローワーク(得喪どちらも可)経由で提出することも可能になります。一方、雇用保険の届出を年金事務所(得喪どちらも可)・所轄労基署(取得時のみ)経由とする選択もできます。

 新規事業場(所)の設立等に際しても、徴収法に基づく労働保険関係成立届(一元適用の継続事業に限ります)を、社会保険の「新規適用届」または雇用保険の「適用事業所設置届」と合わせて、労基署、年金事務所、ハローワークのいずれか経由で届け出ることができるようになります。



2.職場でありがちなトラブル事情 


 正社員・パート間をシャトル移動 ~会社不信で金銭補償要求~

 看護師のAさんは、正社員として病棟看護の仕事をしていました。入職から2年後に出産し、法律上の当然の権利として、産休・育休を取得しました。

 ところが、その後、復職を申し出たところ、本人には何の説明もないまま、パートに身分変更されていました。

 おかしいと感じたAさんは、都道府県労働局の雇用環境・均等部に相談に行きました。すると、再び会社から何の説明もないまま、正社員に復帰させる辞令が出ました。

 正社員に戻っても、医院への不信感は消えません。最終的に、退職と金銭補償という方向で、紛争調整委員会の調停を申請しました。


従業員の言い分


 当初、医院では「長期休業すれば、パート転換は当然」という態度だったのに、労働局から注意を受けると、手のひらを返すように、正社員復帰を認めました。

 経営層・上司への信頼感が消滅した今となっては、復職の意思はなく、以下の損害賠償を要求します。

・紛争期間中の給与(4カ月分)  : 115万円
・復帰に当たっての保育所関連費用 :  45万円



事業主の言い分


 パートへの身分変更は、育児に伴う負担を配慮して、暫定的に発令したものです。医院側としては、マタハラ行為があったかのように非難されるのは、心外です。

   

 労働局の指導に従い、遅まきながらも正社員に復帰させるのなど誠意も示しているのですから、これ以上の金銭要求には応じられません。



指導・助言の内容

 労使間の感情的確執が深く、議論がかみ合うような状況ではなかったため、金銭的解決という方向で調整を図りました。  双方とも早期解決を希望していたので、退職を前提としつつ、事案の内容に応じ、相当と考えられる和解金額を提示しました。

 最終的には和解金等の交渉に移り、あっせん委員が「紛争の経緯から賃金3カ月分の請求が妥当」などと世間相場を提示したこともあり、労使双方による歩み寄りが実現しました。



結果

 Aさんがあっせんの合意日付で退職し、医院が90万円を支払うという内容で、労使双方が合意しました。



3.厚生労働省「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)」

 来年はオリンピック・イヤーですが、企業にとって気になるのは健康増進法の全面施行(令和2年4月)です。

 厚労省は、今年7月に「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令元・7・1基発0701第1号)を公表しましたが、多数の者が利用する施設のうち、「第1種施設(学校、病院等)・喫煙目的施設以外の施設」を「第2種施設」と呼んでいます。

 一般の事務所や工場等はこの分類(第2種施設)に含まれ、屋内全面禁煙が原則とされています。

 平成30年10月の調査時点で、受動喫煙防止対策に取り組んでいる企業は88.5%、「屋外も含めた全面禁煙」と「屋内禁煙」の合計は52.5%となっています。


 受動喫煙防止は、もろもろの社内事情によって簡単でないケースがあります。困難を感じている企業は全体の37.4%で、その理由(複数回答)として「顧客にやめさせるのが困難」(30.3%)、「喫煙室を設けるスペースがない」(25.6%)などが上位に挙がっています。




4.身近な労働法の解説 ~最低賃金(2)~

 前回の最低賃金の概要に引き続き、今回は最低賃金の適用について解説します。

1.地域別最低賃金と特定最低賃金との適用関係

 特定最低賃金は、地域別最低賃金よりも高い金額水準で定められます(最賃法16条)。 地域別と特定の両方の最低賃金が同時に適用される労働者には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません(最賃法6条)。


2.地域別最低賃金の適用関係

(1)所属先の最低賃金が適用されます。居住地ではありません。


(2)派遣労働者の場合(最賃法13条)
派遣先の最低賃金が適用されます。派遣元ではありません。


(3)臨時に越境する場合
所属先(本拠地)から臨時に越境して応援勤務する場合は、所属先の最低賃金が適用されます。


(4)勤務先が小規模等で独立性のない事業場の場合
事業場としての独立した機能がなく、指揮命令等の管理が本社等で行われているような場合は、所属先(本拠地)は本社等にあるものとし、所属先の最低賃金が適用されます。



3.最低賃金の減額の特例許可制度(最賃法7条)

 一般の労働者より著しく労働能力が低いなど、特定の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。


4.周知義務(最賃法8条)

 最低賃金の適用を受ける労働者の範囲およびこれらの労働者に係る最低賃金額、算入しない賃金ならびに効力発生年月日を常時作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法により周知する必要があります(罰則あり)。



5.実務に役立つQ&A


遺族年金に上乗せあるか? ~夫の死亡後に出産した~

 厚生年金の被保険者である夫が亡くなり、20歳代の妻が遺されると、遺族厚生年金は有期になることがあるといいます。夫の死亡当時、胎児がいるとどうなりますか。子が生まれると年金額は増えますか。


 遺族厚生年金の受給権を取得した当時30歳未満の妻が、「遺族基礎年金の受給権を取得しないとき」は、遺族厚生年金の受給権は5年を経過したときに消滅します(厚年法63条)。配偶者が遺族基礎年金を受給するには、被保険者の死亡の当時その者に生計を維持され、かつ、配偶者と生計を同じくする子がいることが条件です(国年法37条の2第1項)。

 

 死亡の当時胎児であった子が生まれたときは、将来に向かって、その子は被保険者の死亡の当時生計を維持されていた子とみなします(同条2項)。この場合には、5年を超えて受給することが可能になります。

 

 遺族基礎年金の権利を得た場合、本体の年金に「子の加算額」も上乗せされます。1、2人目は各22万4500円、3人目は7万4800円です。一方、遺族厚生年金には子の加算額はありません。配偶者の遺族厚生年金の額は、遺族が増えても表面的には変わりません。



6.助成金情報

 障害者職場復帰支援助成金

 事故や難病等のために長期の休職をした労働者に対して、職場復帰のために必要な職場適応の措置をとり、雇用を継続した事業主に対して助成されるもので、中途障害者などの雇用継続の促進を目的としています。対象となる「中途障害」には身体障害や難病のほか、うつ病など精神障害や高次脳機能障害も含まれています。従来は多くの場合退職するしかなかったこれらの休職からの復帰および雇用継続を、事業主が積極的に支援することにより達成した場合に事業主に支給されます。



1.対象労働者とは

① 職場復帰の日(※1)に、次の[1]~[4]のいずれかに該当する者
[1]身体障害者
[2]精神障害者(発達障害のみの方を除く)
[3]難治性疾患のある方(※厚生労働省HP詳細情報に病名列記あり)
[4]高次脳機能障害のある方
※職場復帰の日とは、出勤簿などにおいて確認できる、療養のための休職に引き続く連続した休職期間後の最初の出勤日をいいます。

② 指定の医師の意見書で、①の障害に関連して3カ月以上の療養のための休職が必要とされた方

③ 障害者総合支援法に基づく就労継続支援事業(A型)の利用者として雇用されていない方

④ 国、地方公共団体、行政執行法人および特定地方独立行政法人の委託事業費から人件費が支払われている者でないこと


2.職場復帰の要件

 事業主が雇用していた雇用保険被保険者について、雇用保険被保険者として職場復帰させ、継続して雇用することが確実であること



3.支給額・受給手続きの概要

 起算日(職場復帰日または職場適応措置終了日直後の賃金締切日の翌日など)から起算した下表の「助成対象期間」に示す期間を対象として助成が行われます。


※ただし、支給対象期ごとの支給額は、支給対象期において対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額を上限とします。 起算日から3カ月以内に「受給資格認定申請書」に必要な書類を添えて管轄の労働局に認定申請を行います。 認定後、支給対象期ごとに、各支給対象期末日の翌日から2カ月以内に支給申請を行います。


4.職場適応の措置とは

 次の(1)~(3)いずれかの措置をとることが必要です。ただし対象労働者の障害がそううつ病(そう病、うつ病含む)の場合は、それに加えて(4)の措置をとらなければなりません。



5.その他事業主の要件とされること

◆「職場適応の措置」に要する経費や指定の医師の意見書、その他この助成金の申請に要する経費を、事業主が全額負担すること
◆対象労働者に対し、休職期間中または職場復帰の日から3カ月以内に職場適応の措置を開始し、雇用保険被保険者としての雇用を継続すること
◆支給対象期における対象労働者の労働に対する賃金を、支払期日までに支払っていること
◆対象期間の起算日前4年間に、同一の対象労働者について、同一の障害と認められるものを理由として、本助成金の支給を受けたことがないこと



7.コラム  ~製造業での外国人材の長期活用~

 外国人雇用に関するセミナーを行う際、特に地方で切実に感じるのは、製造業での外国人材の長期活用の必要性です。大都市圏では事務・管理系で外国人を採用し長期的な視点で育成しているところも多くありますが、地方に行くと外国人雇用といってもその大多数が人手不足解消のための短期的な労働力確保の手段となっています。そのため、話題として求められるのは技能実習、外国人留学生のアルバイト、特定技能の3つです。

 しかし、いずれもある時期が来れば帰国や転職をしなければならず、目の前の仕事を動かすための延命措置にしかすぎません(現状では特定技能で長期滞在可能なのは、建設と造船業のみです)。地方の多くの製造業は薄利多売の時代遅れのビジネスに浸かっており、本来であれば外国人材の新しい物の見方を通じて業務オペレーションを見直し、ビジネスそのものを国際化して取引先を海外に広げていく、このようなビジネスのグローバル化を図っていかなければなりません。しかし、前述したとおり、技能実習等で外国人を雇用しても国際的な競争力を身に着けるという企業の根本的な問題解決にはつながりません。

 国籍には関係なく実力ある人たちが切磋琢磨して働いている海外と比べてしまうと、日本社会がその発展においてどんどん遅れをとっているのを感じます。唯一の救いは、「特定技能」での受け入れが中小企業の間でやっと動き始めたのを感じられることです。滞在期限や対象業種などの問題はまだまだありますが、日本の重い腰がやっと地面から浮かび上がったかのようです。今後は製造業においても外国人が長期的に活躍し、モノづくり大国としての新しい日本が活躍することを期待しています。