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メールマガジン2019年12月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2019年12月 Vol.131

1.人事・総務ニュース

ハローワークで544件を不受理 ~違法企業の若年者求人~


 厚生労働省の集計によると、若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)に基づく求人申込みの不受理扱い(職業紹介の一時保留含む)件数が、544件に達していることが分かりました。

 ハローワークは、求人内容が違法な場合等を除き、すべての求人を受理するのが原則です(職安法5条の5)。しかし、最近の法改正で、「求人者が労働関係法令違反で処分・公表措置を受けたとき」も不受理とする規定が新設されています。

 その第1が、上記の若者雇用促進法の規定で、学校卒業見込者等を対象とします。施行は平成28年3月1日で、544件という数字はこの施行日から令和元年6月までの累計です。

 その第2は、職業安定法の改正で、適用範囲を一般の全求人申込みに拡大します。新卒者と同様に、労基法、最賃法、職安法、均等法、育介法等の違反企業が対象になります。

 施行は来年3月30日で、若者促進法の施行後と比較し、不受理件数は大幅に増大すると見込まれます。



ブラック企業対策を強化 ~産業別労組(JAM)が運動方針~


 中小企業の機械・金属産業で構成する産業別労組・JAMは、2020・21年度の運動方針で、ブラック企業対策の強化を決めました。

 残業代未払や過重負荷等の労働環境の悪化は、JAMの加盟組織でも報告が後を絶ちません。よくみられるのが、経営者の交代により、従来良好だった労使関係が悪化するパターンです。

 新経営者が労組活動を軽視し、「ユニオンショップ・チェックオフを廃止したい」等の要望を出してくるほか、近年では、「時代に合わない」と決めつけ、労働協約の更新を拒むケースも目立つといいます。

 JAMでは、交渉の長期化に対応できるよう積立資金の強化を呼びかけると同時に、地域協議会と連携し物心両面の支援体制を強化するとしています。



繰上げで最大84%の増額 ~年金改革で厚労省が試案~


 厚生労働省の社会保障審議会では、次期年金制度改正に向け、具体的な検討を進めています。被用者保険の適用拡大(短時間労働者への適用拡大等)や繰下げ制度の柔軟化・在職老齢年金制度の見直し等が課題として挙げられています。

 このうち、繰下げ制度について、上限年齢を70歳から75歳に引き上げる方向性が示されました(現行は70歳まで)。高齢者が自身の就労状況等に合わせ、年金受給の方法を選択できる幅を広げるのが目的です(繰上げは従来どおり、60歳まで)。

 新しい調整率として、繰上げは1カ月0.4%、繰下げは同0.7%という数字が提示されています。受給年齢を限度いっぱいの75歳まで繰り下げた場合、年金額は通常の65歳受給時と比較して、最大でプラス84%となる計算です。



2.職場でありがちなトラブル事情 


 退職金を半分に減らされた!! ~勧奨受けたのに自己都合扱い~

 ドライバーのAさんは、運送会社で20年間働いていましたが、社長や他の従業員から「高齢だし、そろそろ退職を考えたら」とアドバイスを受けるようになりました。

 自分自身、体調の衰えを感じていた時期だったので、周囲に迷惑をかけるのも申し訳ないと思い、最終的に退職を決断しました。 通例どおり「一身上の都合」と記載して退職願を提出したところ、担当者から「自己都合の場合、退職金は50%の減額となる」と告げられ、呆然としてしまいました。

 会社側の説明不足の対応に納得がいかず、紛争調整委員会のあっせんを申請しました。


従業員の言い分


 私としては勧奨に従って退職を申し出たまでで、自己都合に当たるという解釈は「こじつけ」としか思えません。  在職中は就業規則について、みたことも聞いたこともなく、当然、退職金の減額に関するルールも知りませんでした。最初から、それが分かっていたら、仕事を辞めずに続けていたはずです。



事業主の言い分


 Aさんが高齢で、体調も思わしくないことから、退職を勧奨しましたが、無理強いしたわけではなく、あくまでご本人の選択によるものです。  就業規則は、過去に他の従業員から求めがあったため、事務所に写しを備え付け、随時、閲覧できる体制は整えていました。ただし、すべての従業員がそうした状況を理解していたかというと、「じくじ」たる思いはあります。



指導・助言の内容

 事業主に対して、退職勧奨を行う場合、自己都合より優遇された条件を提示するのが一般的という事情を説明し、その点を考慮した対応を求めました。  その後は、退職金の上積み額に関する調整を図り、労使間の合意を促しました。



結果

 自己都合計算による退職金額(150万円)とは別に、80万円(上積み60万円プラス補償金20万円)を追加で支払うことで、合意文書が作成されました。



3.経団連「2019年労働時間等実態調査」

 国と企業が一体となって長時間労働の削減に取り組んでいますが、業務の効率化という観点からみて、思いのほか重要なのが「商慣行の是正」です。

 顧客ニーズを優先するあまり、契約内容以上のサービス・情報の提供、不要不急の時間外・休日対応等が日常茶飯事となり、労働時間の長期化を招いています。顧客側も、それを当たり前と感じ、取引相手に対して過剰な要求を押し付けがちです。

 経団連の実施した調査では、商慣行に関する問題点として回答企業が一番に挙げたのは「営業時間外の対応」(149社、回答企業276社の半数以上)でした。以下、「非効率な作業」(91社)、「不十分な納期設定」(69社)と続きます。


 是正のために何をなすべきかに関しては、上記の裏返しになりますが、「作業の効率化」(162社)、「営業時間外の対応を控える」(90社)等の対策が上位に挙げられています。




4.身近な労働法の解説 ~労基法26条の休業手当~

 会社の都合により従業員を休業させることがあったときに、使用者の責に帰すべき事由による場合は、労基法に定める休業手当の支払いが必要です。

1.休業手当とは

 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならないとされています(労基法26条)。 この規定は、労働者の最低生活保障を趣旨としています。


2.使用者の責に帰すべき事由について

材料不足や資金難など、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含みます。例えば、輸出不振や不況等で減産するために一時帰休や自宅待機させた場合などです。 民法536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」よりも広いとされています。



3.休業手当の性質

 休業手当は、労基法上の賃金ですので、次のように取り扱います。
・計算および支払の方法を就業規則に記載します。
・賃金支払いの5原則※が適用されます。
※通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則、毎月1回以上の原則、一定期日払いの原則


4.実務の例

・通常の賃金と同様、所定の賃金支払日に支払います。
・就業規則や労働契約により休日と定められている日については、支払い義務はありません。
・就業規則において、休業手当についての記載がない、あるいは労基法よりも労働者に不利な記載をしたとしても、休業手当は強行規定ですので、使用者の責に帰すべき事由による休業に対しては、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければなりません。
・遅刻早退で賃金の一部が発生しているときや所定労働時間が短い日などで、その日の賃金が平均賃金の60%に満たない場合には、平均賃金の60%に相当する額と実際に働いた時間に対する賃金の差額を休業手当として支払う必要があります。
・派遣労働者についての使用者の責めに帰すべき事由の判断は、派遣元の使用者についてなされます。
・天災事変等の不可抗力は、使用者の責めに帰すべき事由に該当せず、休業手当の支払い義務はありません。不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす場合です。例えば、地震や台風などの天災により、施設・設備が直接的に被害を受けた場合などです。しかし、事業場の施設・設備が直接的な被害を受けていない場合でも、休業について、①および②の要件に該当する場合には、例外的に使用者の責に帰すべき事由には該当しないと考えられます。
・労働安全衛生法に基づき、労働者の健康を考慮して休業させた場合は、使用者の責に帰すべき事由に該当しません。

5.罰則等

 休業手当を支払わない場合には、罰則として30万円以下の罰金、また、裁判所から付加金の支払いが命じられる場合があります(労基法120条、114条)。



5.実務に役立つQ&A


車内トラブルは通災か ~通勤経路の途上だが~

 電車内や駅構内で「見知らぬ他人」とトラブルになり、ケガを負ったというニュースを見聞きします。ケンカのようなケースでも、通勤災害の請求ができるのでしょうか。


 通勤途上、労働者が負傷、疾病、障害または死亡したときは、労災保険給付が支給されます。負傷や疾病が、通勤と相当因果関係があること、つまり通勤に通常伴う危険が具体化したと認められることが必要です(平18・3・31基発0331042号)。

 

 通勤途上における他人の故意に基づく暴行は、「私的怨恨に基づくもの、自招行為によるものを除き、通勤によるものと推定する」(平21・7・23基発0723第12号)としています。

 

 通勤中に飲料水の自販機の順番待ちを巡りトラブルになり、相手に殴られ頭部外傷などの傷病を負った事案について、労基署は通災とは認めず不支給処分としたものの、審査請求により「暴力を誘因する過失」は認められなかったとして、原処分を取り消した例があります。



6.助成金情報

 65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)

 「65歳超雇用推進助成金」の中で、昨年度末で受付を終了した「高年齢者雇用環境整備支援コース」に代わって、平成31年4月1日に新設されたコースです。 新たに高年齢者向けの雇用管理制度(評価制度や賃金など処遇の見直し、能力開発制度、希望に応じた柔軟な労働時間制度、法定以上の健康診断等)の整備等に係る措置を実施した事業主に対して、整備にかかった費用の一部を支給するものです。



1.支給までの流れ



2.高年齢者雇用管理整備措置

 55歳以上の高年齢者を対象として、労働協約または就業規則に規定をすることが必要です。下記の5種類の中から実施します。

 ・高年齢者の職業能力を評価する仕組みを活用した賃金・人事処遇制度の導入・改善 ・労働時間制度の導入・改善 :希望に応じた短時間勤務,隔日勤務等 ・在宅勤務制度の導入・改善 :高年齢者の負担軽減のために行うもの ・研修制度の導入・改善 :高年齢者が意欲と能力を発揮して働くための知識の付与 ・専門職制度の導入・改善 :高年齢者の意欲と能力を活かす、適切な役割を付与 ・健康管理制度の導入 :法定の健康診断の他に高年齢者向けに実施する人間ドック、生活習慣病予防検診など ・その他の雇用管理制度の導入・改善 :高年齢者の雇用の機会増大に必要なもの

以下のものは該当しないので注意が必要です。 ※法令で事業主に義務付けられた制度の導入・改善 ※労働協約・就業規則に定めない制度の導入・改善 ※高年齢者以外の者にも適用され、高年齢者への拡充が認められないもの



3.支給対象となる必要経費と助成率

 制度の導入にあたり、外部の専門家等へ委託や相談などのため支払った経費 ★初回のみ30万円とみなされる。2回目以降は30万円を上限として実費。 上記の必要経費額に、以下の助成率を乗じた額を支給


※生産性要件について 助成金の支給にかかわる事業所において、助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」がその3年度前に比べて6%以上伸びている場合に、助成の割増が行われる。ただし生産性要件の対象となった期間中に、事業主都合による離職者を発生させていないことが必要。 「生産性」の計算式 生産性=付加価値/雇用保険被保険者数




7.コラム  ~「特定技能」の途中経過~

 昨年末より鳴り物入りで開始された新しい在留資格「特定技能」ですが、スタートから約1年が経過した現在の途中経過が発表されました。出入国在留管理庁によると、11月8日現在で申請の受付は2837人(国内1271人、海外1566人)、うち895人に許可がおりたという事です。その大半は技能実習生からの変更や、かつて技能実習生として滞在歴がある人とのことです。

 当初5年間で35万人近くの受入れを予定していましたが、初年度でこの人数では成功とは言い難いようです。出入国在留管理庁の見解では、「特定技能」の取得に必要となる試験がまだ多く実施されていないからとのことですが、現実的には、実質的にほとんどの産業分野で5年間しか日本に滞在できないことが大きな課題となっていると思われます。(建設と造船の2分野に限っては特定技能2号に移行でき、その後も滞在が可能です)

 制度の創設時には、70年近くにわたり保持されてきた「高度人材は積極的に受け入れるが、単純労働者は受け入れない」との日本政府の外国人受入方針が変わったと騒がれていましたが、現状ではほとんど変わっていません。その反面、外国人に日本に来てもらうためにはどうしたらよいかという議論がなされており、「利益は得たいが代償は支払いたくない」との思惑が浮き出ているように感じられます。

 海外から「特定技能」で渡航する外国人の多くは、真剣に渡航先国を選んで家族の生活のために一生をかけてやってきます。空港の送迎サービスなどを義務化するよりも、外国人を日本社会のメンバーとして迎え入れるような、日本社会の本気の受入れ姿勢が問われていることを実感しています。