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メールマガジン2020年07月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2020年07月 Vol.138

1.人事・総務ニュース

総合職21.8万円に ~令和3年大卒初任給~


 労働新聞社が実施した大卒初任給調査によると、集計した4系統ともに前年結果を上回り、総合職では比較可能な企業の4割が増額しています。来年(令和3年)3月に卒業を見込む学生を対象として、インターネット上に提示されている初任給を集計したものです。

 系統別の平均は、技術系21万6035円、事務・営業系の総合職21万7811円、一般職18万9057円、営業系23万3236円となっています。

 新型コロナによる経済停滞が懸念されるなか、少なくとも来春の就職組に関しては1%超の伸びが確保された形です。

 技術職の増加幅をみると、技術者不足に悩む「建設・不動産」で4304円増がトップで、メーカーは2071円増という状況です。

 総合職では、とくにリース業が好調だった「金融・保険」で8182円増、商社で4905円増と改善が目立ちます。



労災請求は43件に ~新型コロナの罹患者~


 5月20日時点の集計によると、業務上の理由で新型コロナウイルスに感染したとする労災申請は43件で、医師・看護師・介護士などの医療従事者が32件、それ以外が11件となっています。

 このうち医療従事者2人、生活関連サービス業1人が労災給付の決定を受けました。

 新型コロナの労災認定について、厚生労働省は4月末に認定基準を公表しています(令2・4・28基補発0428第1号)。

 同基準では、医療従事者以外であり、感染経路が特定されていなくても、リスクが相対的に高い業務(顧客との近接・接触の機会が多い業務、小売業、バス・タクシーの運転、育児サービスなど)等の場合は、個別に調査し、業務起因性を判断するとしていました。



パワハラ審査の迅速化へ ~労災認定基準を改正~


 メンタルヘルス障害等の労災認定は、「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づき行われます。この基準が、令和2年6月1日付で改正されました(令2・5・29基発0529第1号)。

 労働施策総合推進法に基づくパワハラの防止措置義務の施行に合わせた対応で、厚生労働省では専門検討会で基準の見直し作業を進めていました。

 精神的ストレスに対する労災認定に際しては、過去6カ月に「業務により強い心理的負荷」がどの程度あったかを検証します。その対象となる「具体的出来事」として、新たに「パワハラ」に関する独立項目を追加しました。

 「上司等から、暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合」や「人格や人間性を否定するような精神的攻撃や他の労働者の面前での威圧的な叱責などを受けた場合」には、心理的負荷「強」と判断されます。



2.職場でありがちなトラブル事情 


退職金額が不当に低い⁉ ~出向期間を分割して計算~

 Aさんは、B株式会社の系列ホテルで35年間、勤務した後に退職しました。Cホテルで24年働いた後、Dホテルに11年間出向するという形でした。

 本人は、出向期間も含め、一貫してCホテルの従業員という認識だったので、35年分を通算した退職金が支払われるものと考えていました。

 ところが、Dホテルの担当者は、Cホテル分とDホテル分を別個に計算した後で、合算するといいます。退職金の計算は勤続期間が長期なほど有利なのが通例です。分割して計算した額は、予想の半分程度という結果でした。

 会社側の説明に納得できないAさんは、紛争調整委員会によるあっせんを申請しました。


従業員の言い分


 勤務先の変更の際には、あくまで在籍出向という説明だったので、退職届等を書いた覚えもありません。 

 勤続期間を通算したうえで、退職時の勤務先(出向先のDホテル)の規程に基づき、計算した額を支払うのが当然と考えます。



出向会社の言い分


 同じホテル勤務といっても、出向前と後でAさんの身分は異なっています。2つのホテルの退職金計算の方法もまったく違います。

 当社としては、出向元の退職金債務を引き継いだという理解で、2つの会社の勤務期間を通算すべきという主張には到底同意できません。



あっせんの内容

 Dホテルに対しては、「出向時の経緯から判断すると、Cホテルの勤務終了時に退職金の清算について合意があったとは考えられず、勤務期間を分けて考えるのはムリがある」と説明しました。

 一方、Aさんに対しては「在籍出向と主張するのであれば、Dホテル(出向先)の退職金規定を適用する理由がない」と指摘しました。



結果

 勤務期間を通算したうえで、Cホテル(出向元)の退職金規定に基づく金額(あっせん前の金額に比べ、およそ220万円の上乗せ)を支払うことで、労使が合意しました。



3.厚生労働省「平成30年度・労働者派遣事業報告書の集計結果」

 新平成30年度の派遣事業報告書の集計結果が公表されました。データ数が膨大(3万8128社)なため、調査時期(平成30年6月)から発表まで2年近くのタイムラグがありますが、派遣の内情を知る重要な資料です。

 人手不足が慢性化するなか、派遣は有力な人材ソースです。派遣料金(8時間換算)をみると、平成30年度は前年度と比べ1893円増加しています(率換算で+8.9%)。

 ただし、無期・有期に分けた平均額はそれより小幅な動きを示しています。無期は168円減(率換算▲0.7%)、有期が785円増(同+4.3%)という状況です。


 それでは、なぜ全体平均だけが大幅な上昇を示したかですが、謎解きは簡単です。相対的に単価の安い有期雇用派遣が減少し(▲13万8945人)、単価の高い無期雇用派遣にシフト(+6万739人)したからです。

 平成27年の派遣法改正で個人単位の期間制限が設けられ、同一の職場(組織単位)に継続して派遣するためには、無期転換等の措置を講じる必要が生じました(平成30年9月で改正法施行後3年が経過)。そうした影響が出ていると思われます。

 令和2年度は、同一労働同一賃金関連の法改正の施行年に当たります。令和2年度の調査結果が公表されるのは2年後ですが、どのような変化が生じるのか要注目です。



4.身近な労働法の解説 ~割増賃金計算時の労働時間の端数処理~

1.労働時間の把握の原則

 労働時間は、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する(厚労省『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』H29.1.20策定)等とされ、ICカード等の客観的な記録時刻を基に原則として1分単位で把握します。


2.割増賃金計算における労働時間の端数処理

 (割増賃金計算上の端数処理について、1カ月における「時間外労働」「休日労働」「深夜業」の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められ、法違反(労基法24条および37条)としては取り扱われません(昭63.3.14基発第150号)。

 端数処理を行う場合、切り捨てできるのは30分未満のときのみで、30分以上については1時間に切り上げなければならず、30分に切り捨てたり、切り上げずに計算したりすることはできません。

 例えば、ある月の時間外労働時間の合計が「16時間25分」だった場合、25分を切り捨て「16時間」として計算することができ、深夜業時間の合計が「2時間35分」だった場合は、35分を切り上げて「3時間」として計算します。

 なお、「時間外労働」「休日労働」「深夜業」それぞれの1カ月間の合計時間について認められている端数処理です。したがって、1日単位・1週間単位での労働時間の端数処理や「時間外労働」「休日労働」の合計時間数を端数処理することは、認められていません。


3.就業規則への記載が必要

 端数処理を行う場合は、就業規則(賃金規定)等で定めることが必要です。 ある月は切り捨て、ある月はそのまま計算するなど、恣意的な運用はできません。


4.遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理(参考)

 5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金の全額払の原則に反し、違法です。

 なお、このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として、労基法91条(一回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない)の制限内で行う場合には、労基法24条の全額払の原則には反しないとされています(昭63.3.14基発第150号)。

 割増賃金計算上の端数処理は、事務簡便を目的としたものです。 当該通達は、30年以上前に出されたものです。当時に比べ現在は、クラウド型の勤怠システムや給与計算ソフトが多数登場し安価に利用できますので、一手間かけて端数処理をするよりむしろ、1分単位で適正に把握した労働時間を用いて割増賃金を計算する方が簡便な場合があります。



5.実務に役立つQ&A


支給額が折半される? ~離婚時の年金分割~

 従業員が離婚の協議を進めているそうです。専業主婦の妻と年金を分割するとのことですが、本人の年金額を単純に半分に分けるわけではないようです。具体的には、どのように分割するのでしょうか。


 離婚時の年金分割では、配偶者の一方が厚年の被保険者で、もう一方がその被扶養者である場合などに、婚姻期間中の各月の標準報酬額を分割し、被扶養者だった人の年金額に上乗せすることができます。

 

 被扶養者側が国年の第3号被保険者の場合、平成20年度以降は被扶養者に標準報酬の額の2分の1が分割され(同法78条の14)、それに基づき老齢厚生年金の額が計算されます。平成19年度までの標準報酬は協議等で按分割合が決まります(厚年法78条の2)。 

 

 婚姻期間中の標準報酬を分割すると、厚年に加入していなかった被扶養者についても分割の対象となった期間は「離婚時みなし被保険者期間」となります。この期間が240月以上になると、振替加算が行われない点には注意が必要です。

 

 老齢基礎年金は分割の対象ではないため、年金額が単純に折半されるわけではありません。



6.助成金情報 ~心の健康づくり計画助成金~

 事業主の方がメンタルヘルス対策促進員の助言・支援を受けて、心の健康づくり計画を作成し、メンタルヘルス対策を実施した場合に受けることができる助成金です。 申請は企業単位であるため、本社機能をもつ事業場での計画策定、対策実施等を行うことが要件となります。


対象となる事業主

 下記のいずれにも該当する事業主
・労働保険の適用事業場
・登記上の本店または本社機能を有する事業場

  ※メンタルヘルス対策促進員とは
 各都道府県にある産業保健総合支援センターが委嘱して、中小規模事業場を訪問してメンタルヘルス対策に関する支援を専門的に行う者。

  ※メンタルヘルス対策とは
 具体的には「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に沿って各社ごとに採用する対策(教育研修、情報提供、ストレス対策等)。なお、50人以上の事業場はストレスチェックの実施が義務付けられているため、ストレスチェックの実施計画だけでは認められない。


助成金の要件

・メンタルヘルス対策促進員の訪問(訪問は3回まで)を受けて「心の健康づくり計画」を作成していること
・令和元年度以降、新たに「心の健康づくり計画」を作成していること
・作成した「心の健康づくり計画」を労働者に周知していること
・作成した「心の健康づくり計画」に基づいて、具体的なメンタルヘルス対策を実施していること
・メンタルヘルス対策の実施について、メンタルヘルス対策促進員の確認を受けていること


助成金額

 10万円(1企業または1個人事業主当たり将来にわたり1回限り)


手続きの流れ

① メンタルヘルス対策促進員による助言・支援
※事業場訪問は3回まで
② 心の健康づくり計画の作成
③ 心の健康づくり計画の労働者への周知
④ 具体的なメンタルヘルス対策の実施
⑤ メンタルヘルス対策促進員による確認
⑥ 心の健康づくり計画助成金支給申請


申請期間

 令和2年5月29日~令和3年6月30日



7.コラム  ~最近の外国人のお客様の動き~

 現在、新型コロナウイルスの影響により、海外からの入国拒否が継続されています。ACROSEEDでは外国人のビザ申請等も扱っていますが、最近になりようやく外国人のお客様に動きがみられるようになってきました。

 法人のお客様からのご要望は、海外から人を呼び寄せたいという内容が圧倒的ですが、現在は世界中のほとんどの国からの日本への入国が禁止されています。出入国在留管理庁では海外から日本に呼び寄せる新規申請は受け付けていますが、入国拒否期間中は審査を行わずに結果を出さないという状況が続いています。そのため、4月から出入国在留管理庁への申請済みの案件はどんどん増加していますが、1件も結果が出ていません。海外からの入国が一斉に許可されたらどうなるのかと考えると恐ろしくなります。

 一方、国内在住の個人のお客様からの相談ではビジネススタートや高度専門職の取得が大半を占めており、コロナ回復後にはすぐにビジネスを始めたい、永住権を取得したいというポジティブな意見がここ最近で増加しており嬉しい限りです。

 海外在住者からのオンライン相談でもはやりビジネススタートの話が多いのですが、香港、台湾からの相談が日に日に増えています。話をきいてみると純粋に日本でビジネスを始めたいというよりも、母国から近く安全な日本で長期滞在するための手段の1つとして考えている人が多いと感じられます。やはり政治的な問題が影響しているかと思うと複雑な心境になり、万が一の場合には、日本も難民の受け入れを覚悟しなければならないと強く思わざるを得ません。

 もちろん、法律的な縛りがあるため、できること、できないこと、はありますが、しっかりとルールを守った上でお客様の希望をかなえられるように努力していきたいと思います。